記事・レポート

VISIONARY INSTITUTE
「地球食」の未来を読み解く

地球と人類との“共進化”に向けて:竹村真一

BIZセミナー教養文化
更新日 : 2015年04月01日 (水)

第7章 地球価値創造〜Creating Planetary Value〜


 
人間は天地をつなぐコーディネーター

薄羽美江: 2000年頃から、日本では「CSR」という言葉が盛んに使われるようになりました。しかし、2011年にマイケル・ポーター氏とマーク・クラマー氏が「CSV」(Creating Shared Value)を提唱したことで、現在はこの新しい概念が広がりを見せています。

竹村真一: 端的に表現すれば、CSRは企業が本業で得た利益を使って社会貢献を行うものですが、CSVは本業そのものを通じて社会に役に立つ価値を創造する、という考え方です。しかし、CSVで価値をシェアする範囲は、人間社会に限られています。私は、価値をシェアする範囲を地球全体にまで広げた、地球価値創造(CPV/Creating Planetary Value)という概念を提唱しています。理想論のように思われるかもしれませんが、実はこれこそ、日本人が数百年にわたって実践してきたことなのです。

日本は火山列島であるため、急峻な地形が多く、大量の雨が降っても瞬く間に海へと流れ去ってしまいます。昔の日本は、洪水と渇水を繰り返す非常に厄介な土地であり、作物を育てる人間はもちろん、動植物にとっても厳しい環境にありました。たとえば、川や湖に棲む魚やカエルは、卵を産んでもあっという間に流されてしまうため、繁殖が難しかったのです。

しかし、人間が水田という人工自然のダムをつくることで、水がスローに流れる環境を整えた。人間は安定的な食料生産システムを手に入れ、同時に洪水や渇水も防げるようになった。魚やカエルも安心して繁殖できるようになり、虫や鳥など、水田周辺の生物多様性も豊かになっていったのです。

「日本は生物多様性の国」と言われますが、それは初めから与えられた自然条件ではなく、私たちの祖先の力もあった。彼らは、クリエイティビティを発揮しながら変化し続ける環境に適応し、自然とコラボレーションすることで、他の生物種も含めて地球に貢献する価値をつくり出していたのだと思います。

「人工」という言葉は、一般的にはあまり良い印象をもたれませんが、日本人がつくり出してきた人工自然は、少々意味が異なります。「工」は、天と地をつなぐ人の営み、という字形です。自然は支配するものという考え方では、自然をひたすら消費し、やがて破壊してしまうでしょう。しかし、人間は天地をつなぎ、自然を豊かにする優れたコーディネーターにもなれることを、私たちのご先祖は証明していたのです。

現代の日本人に課せられた使命は、70〜90億人が暮らす地球上で、天地をつなぐコーディネーターとして先頭を切って行動していくことです。幸いにして、日本には先人が残してくれた知恵とともに、節水や省エネなど優れた環境技術、さまざまな災害に対応できる技術があります。

私もさまざまなパートナーと手を携えながら、Creating Planetary Value——地球価値創造の実現に向けて活動していきたいと考えています。


該当講座

2014年 第2回 未来の地球の「食」を読み解く
竹村真一 (京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)
薄羽美江 (株式会社エムシープランニング代表取締役 / 一般社団法人三世代生活文化研究所理事)

ゲスト講師:竹村真一(文化人類学者/京都造形芸術大学教授)。6月15日(日)まで東京ミッドタウン21_21 DESIGN SIGHT で開催されている『コメ』展を、グラフィックデザイナー・佐藤卓氏とともにディレクションされた文化人類学者・竹村真一氏(京都造形芸術大学教授)を迎え『触れる地球ミュージアム』に込める想い、そして地球の「食」の未来についてお話いただきます。


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