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VISIONARY INSTITUTE
「地球食」の未来を読み解く

地球と人類との“共進化”に向けて:竹村真一

BIZセミナー教養文化
更新日 : 2015年03月18日 (水)

第1章 なぜ、世界初のデジタル地球儀「触れる地球」は生まれたのか?

資源枯渇や温暖化が深刻さを増す中、世界の人口は増加の一途を辿っています。人口90億人に達する2050年、宇宙船地球号の食=「地球食」はどうなっているのでしょうか? 気鋭の文化人類学者・竹村真一氏は、地球価値創造(CPV/Creating Planetary Value)が、その問題を解くカギになると言います。竹村氏が生み出した世界初のインタラクティブなデジタル地球儀「触(さわ)れる地球」を使ったトークから、地球食の未来が浮かびあがってきました。

ゲスト講師:竹村真一(京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)
モデレーター:薄羽美江(株式会社エムシープランニング代表取締役 / 一般社団法人三世代生活文化研究所理事)

竹村真一(京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)
竹村真一(京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)

 
16世紀の地図と21世紀の子ども

竹村真一: 皆さんの前に置かれた地球儀には、リアルタイムの地球の姿が映し出されています。暗い場所は夜、明るい場所は昼間で、雲の流れもインターネット経由でほぼリアルタイムに更新されています。日本列島には、もうすぐ夜のとばりが下りようとしています。地球儀を回せば、ブラジルには朝が訪れようとしています。もうすぐ夏至を迎える頃ですから、北極は太陽が沈まない白夜、南極は太陽が昇らない極夜となります。

この「触(さわ)れる地球」という不思議な地球儀は、人間と同じように“生きている”地球の過去・現在・未来の姿を映し出すことができます。

なぜ、この地球儀をつくったのですか? セミナーや講演を行うと、よく質問を受けます。皆さんは日の出ならぬ、「地球の出」という写真をご存じでしょうか? 1968年、月を周回するアポロ8号から撮影された写真です。人類史上初めて、宇宙からのまなざしでとらえた地球の姿。月の水平線上にぽっかりと浮かぶ青く丸い地球は、私たちに大きな驚きと感動をもたらしました。

それから半世紀が経ったいま、科学技術は飛躍的な進歩を遂げ、私たちは地球規模のつながりの中で生活しています。そして、次代を担う小学生以下の世代は、21世紀生まれです。しかし、彼らが地理や歴史、環境問題を学ぶ時に使っているのは、16世紀、信長の時代に生まれたメルカトル図法の地図です。地球の姿を宇宙から眺められる時代に、二次元の動かない地図を使い、グローバルな人材を育てようとしている。おかしいと思いませんか?

私たちはいま、地球の“体調”に関する情報を見える化する技術をもっています。それらの情報をつなぎ合わせれば、生きた地球を再現する新しい地図、新しい地球儀がつくり出せるはずだと思いました。「おかしいぞ!」と叫んでいるだけでは、何も変わりません。私は研究者や技術者、デザイナーとチームを結成し、10年ほどかけて「21世紀の地球儀」をつくり育ててきました。

リアルタイムに更新される世界の気象情報、GPSで追尾した動物や船舶の動き、大陸移動の歴史、都市人口の変化、温暖化による未来シミュレーションなど、地球のさまざまな側面を可視化することができます。過去と現在、未来の地球の姿を映し出し、かつ実際に触れて動かすことのできる、世界初のインタラクティブなデジタル地球儀です。



地球視点で思考する人を育てたい

竹村真一: 本日は直径80cmの中型地球儀を使っていますが、最初に制作したのは直径128cmの大きな地球儀でした。約12,800kmある地球の直径を、1,000万分の1に縮小したわけです。私たちが暮らす空気のある層(対流圏)は、地上から10kmの範囲です。地球儀のサイズでは、わずか1mmほど。非常に薄い層の中に、これほど美しく、多様性に満ちた世界が広がっている。

スペースシャトルやISS(国際宇宙ステーション)は、地球儀の表面から3、4cm上空を周回しています。月は地球から38万km離れていますが、この地球儀のスケールではたった38mです。1億5,000万km離れた太陽は15kmになりますから、六本木ヒルズを基点とすれば、羽田空港や東京ディズニーランドのあたり。このように説明すると、地球や宇宙がとても身近なものに感じられると思います。

数値や理論を学ぶことも大切ですが、地球時代・宇宙時代を生きる子どもたちには、地球や宇宙とのつながりを、五感を通じてリアルに体感してほしい。そのために、等身大サイズの地球儀をつくり、直接触れられるようにしました。この地球儀から、地球の呼吸や体温を感じとり、さまざまなことを地球視点で思考する「地球人」へと育ってほしい。そのような思いを胸に、現在は全国の小学校への普及を目指し、活動しています。

さて、地球儀の中の日本は、だいぶ日が暮れてきました。このセミナーが終わる頃には、夜のとばりが完全に日本を覆い、インドにまで夕暮れが迫っていることでしょう。刻々と変化する地球を見ながら、お話を進めたいと思います。



該当講座

2014年 第2回 未来の地球の「食」を読み解く
竹村真一 (京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)
薄羽美江 (株式会社エムシープランニング代表取締役 / 一般社団法人三世代生活文化研究所理事)

ゲスト講師:竹村真一(文化人類学者/京都造形芸術大学教授)。6月15日(日)まで東京ミッドタウン21_21 DESIGN SIGHT で開催されている『コメ』展を、グラフィックデザイナー・佐藤卓氏とともにディレクションされた文化人類学者・竹村真一氏(京都造形芸術大学教授)を迎え『触れる地球ミュージアム』に込める想い、そして地球の「食」の未来についてお話いただきます。


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