記事・レポート
			
			
			
					僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
				
				東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり
				建築・デザイン不動産オンラインビジネス
			
		
			
			更新日 : 2014年08月12日
				
				
				(火)
				
				
			
		
		
		
		第5章 僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった〜東京R不動産の誕生
				
				
					
					
					
				
				裏通りで始まったリノベーション・プロジェクト
馬場正尊: 米国から帰国後、小さくてもいいからリノベーションの事例をつくろうと考えました。ちょうど設計事務所を立ち上げた時期で、新たな拠点として東京の東、古い佇まいが残る神田・日本橋エリアに注目していました。
地元の不動産屋に行き、「改造できる物件を探している」と言うと、怪訝な顔をされました。賃貸物件には、原状回復義務があるからです。大抵は門前払いを受けましたが、なかには「こんなのどう?」と紹介してくれる不動産屋もいました。しかし、どれもピンとこない。「あの裏通りにシブい空き家があるのですが」と言うと、「あんなボロボロの物件が良いの?」と驚かれました。僕と不動産屋の間には、埋めがたいほど大きな感性のギャップがありました。
ある日、日本橋の裏通りで、空き家となっていた2階建ての駐車場兼倉庫を見つけました。都心にもかかわらず家賃は格安でした。さっそくオーナーと交渉し、白いペンキで壁を塗り尽くし、2階に大きな窓ガラスをはめ込みました。たったそれだけで、オーナーが仰天したほど建物の雰囲気は変わりました。(untitled/http://www.open-a.co.jp/portfolio.php?p=1130)
この小さな事例が、結果的にリノベーションの手軽さ・身近さを示す格好のモデルとなりました。同時に、この物件探しが東京R不動産のアイディアを生み出すきっかけとなったのです。
				建物の価値を再生させる感性情報
馬場正尊: 事務所の候補物件を探すかたわら、「空き物件から眺める東京」という考現学のようなブログを書き、ユニークな建物を紹介していました。すると、「借りることはできないのか?」といった問い合わせがたくさん来るようになりました。最初は戸惑いましたが、冷静に考えてみると、それがニーズであると気づきました。「僕が欲しいと思うものは、実はみんなも欲しいものだったのだ」と。
ちょうど2000年代前半、インターネットが社会に浸透してきた時期でした。ウェブにも不動産仲介にも明るくない僕はその知識をもつ4人の仲間を集め、10万円ずつ資金を出し合い、「東京R不動産」というウェブサイトを立ち上げました。
僕が最も大切にしたのは、感性情報です。一般的な不動産情報サイトは「駅から○分、広さは○平米、バス・トイレ付き」といった性能情報ばかり並んでいます。東京R不動産では「改装OK」「レトロな味わい」「天井高い」「水辺/緑」「倉庫っぽい」など、感性情報を前面に押し出しています。
建築を学んだ僕にとって、建物を感性的に捉えるのは当たり前のことでしたが、不動産業界や一般の方々にとっては新鮮な視点だったようです。たとえば「築年数が古いボロボロの物件」を別の視点から捉えると、「レトロな味わいのある物件」となり、価値(観)の逆転が起こります。
表現をひとつ変えるだけで、建物の価値さえも再生されるわけです。
東京R不動産のウェブサイトを立ち上げたことにより、僕たちの考え方に共感する人、僕たちの情報を必要とする人が少なからずいることを知りました。なぜ、多くの人がウェブサイトを見てくれるようになったのか? 建築デザイン・メディア・不動産の3つを統合したことが、ポイントだったと考えています。20世紀の合理性や効率性重視の流れのなかで、社会ではさまざまな役割が細分化されていきました。そのなかで、土地の上に建物がある、建物にデザインが加えられる、その魅力をメディアで伝えるという、本来は1つのストーリーとして語れるはずのものが、バラバラになってしまった。僕たちは自分たちが欲しいものを得るために、細分化されたものを再び統合していたのだと思います。
現在は、南は鹿児島、北は山形まで、団地やオフィスなどを加えれば、R不動産と名のつくコンテンツは10あります。すべて合わせると、月間ページビューは500万ほど。さらにR不動産から派生したものとして、内装ツールの通販サイトなども手掛けています。しかし、僕たちは最初から「事業を広げていこう」という欲望は一切持っていません。「都市に眠っている魅力的な空間を再発見し、欲しいと思う人に届けよう」という素直な発想で動いた結果、自然に広がっていったと感じています。
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
 インデックス
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						第1章 メディアと都市計画 〜臨海副都心で考えたこと
						2014年07月30日 (水)
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						第2章 メディアはプロジェクトを動かすためのドライバーになる
						2014年07月31日 (木)
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						第3章 場の記憶の継承による都市の再生
						2014年08月05日 (火)
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						第4章 住空間はもっと自由でいいのだ
						2014年08月07日 (木)
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						第5章 僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった〜東京R不動産の誕生
						2014年08月12日 (火)
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						第6章 リノベーションがイノベーションを生んだ
						2014年08月14日 (木)
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						第7章 公共空間のリノベーション
						2014年08月19日 (火)
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						第8章 Let’sで始めるソーシャルデザイン
						2014年08月21日 (木)
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						第9章 多くの人を巻き込むコツとは?
						2014年08月26日 (火)
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						第10章 馬場正尊、古田秘馬が描く未来の東京
						2014年08月28日 (木)
 
該当講座
						馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。
						
						
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