記事・レポート

僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった

東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり

建築・デザイン不動産オンラインビジネス
更新日 : 2014年07月31日 (木)

第2章 メディアはプロジェクトを動かすためのドライバーになる


 
宮崎駿氏にインタビュー

馬場正尊: 雑誌『A』は毎回、「都市と○○」というテーマを掲げていました。「都市と衣服」という号では、「建物を衣服と捉えた場合、最も軽い建物は何だろう?」と考え、テントが浮かびました。それを最も上手に使いこなすのは? 自衛隊だと。取材できるのかどうか不安でしたが、依頼すると思いのほか喜んでいただき、あらゆる種類のテントを広げて見せていただきました(笑)。

「都市と野生」という号では、宮崎駿氏にラブレターを送りました。「あなたの映画には、都市に対する独自の世界観・価値観を感じる。映画ではなく、ぜひ都市について話を聞かせてほしい」。宮崎氏はインタビュー嫌いとして有名でしたが、「それならば喜んで」という返事が届き、非常に驚きました。取材では挨拶が終わるやいなや、ものすごい勢いで話が始まり、それから1時間半、一度も口を挟むことができませんでした。

ようやく最後に、「東京は将来、どうなりますか?」と尋ねることができました。それまでインタビューした建築家は、一様に30年後や50年後を見据えて答えてくれました。しかし、宮崎氏はしばし黙り込み、「海になると思う」と言いました。この人は都市への根本的な視座が違う、千年や一万年単位で都市を考えているのだなと思いました。やはり、宮崎氏はただ者ではありませんでした。

『A』の一連の制作を通して、「メディアは魔法のじゅうたんのようだ」と感じました。雑誌というメディアが、普通なら行けないような場所に自分を連れていってくれるわけですから。


都知事時代の石原慎太郎氏へプレゼン

馬場正尊: 時代の転換期にあたる2000年には、「東京計画2000」という号をつくりました。東京計画ですから、当然話を聞くのは東京のトップです。僕は当時の都知事・石原慎太郎氏にラブレターを書きました。石原氏は小説家でもあります。そこで「あなたは政治という手段を用いて、都民をあなたの壮大な物語に取り込もうとしているのではないですか?」などと挑発的なことを書き連ねました。すると「それなら受けようじゃないか」と言ってくれました(笑)。

僕は密かにインタビューではなく、都市計画のプレゼンに行こうと考えていました。都知事に直接プレゼンできる機会など滅多にありません。テーマは「残地再生計画」です。道路拡幅により余った土地、未使用の高架下といった隙間のような空間を発見し、ゲリラ的に面白い用途を与えていく。妄想に近いアイディアをたくさん盛り込みました。結局、インタビュー当日の朝に三宅島で噴火が起こり、プレゼンは中止となりました。しかし、このときに「メディアはプロジェクトを動かすためのドライバーになる」と気がつきました。

現在はSNSなどがドライバーとなり、個人のネットワークから新たなプロジェクトを生み出すことができます。さらに、それが行政や企業が企てるプロジェクトよりも大きな共感を集めることもあります。そうしたツールがない時代、僕にとって『A』という雑誌は、従来の都市のあり方や街づくりの進め方に疑問を投げかけ、それらを問い直し、世の中に対して別の視点や方法を提案するための“企画書”となりました。

雑誌を通じて情報を発信していると、発信した以上の量の情報が集まってくるようになりました。さらに、さまざまな分野の方々から相談や仕事の依頼が舞い込むなど、人のつながりも広がっていきました。世の中に対して企画書を提示することで、火の無いところに煙を立てる。それがドライバーとなり、人や情報が集まり始め、実際のプロジェクトが動き出していく。『A』というメディアを通じて、僕はそのようなイメージを強くもつようになったのです。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“気持ちいい空間を再構築する —東京R不動産の先に”
馬場正尊 (建築家/Open A ltd.代表取締役 東京R不動産ディレクター/東北芸術工科大学准教授 )
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。


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