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僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった

東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり

建築・デザイン不動産オンラインビジネス
更新日 : 2014年08月26日 (火)

第9章 多くの人を巻き込むコツとは?


 
変化は小さな点から始まる

馬場正尊: 秘馬さんのプロジェクトを拝見すると、知らぬ間に多くの人を巻き込んでいる事例が多いように感じます。コツのようなものがあるのでしょうか?

古田秘馬: 1つは、誰にとっても分かりやすいこと。「丸の内朝大学」のコンセプトは、少し早起きして自分の学びたいことを学ぶ、というもの。とても単純ですから、「これなら参加できそう」という気も起こりやすい。誰もが気軽に参加できる広い入口をつくるわけです。

もう1つは、「これって私のことだ!」と共感してもらうこと。「D30」を始めたときも、全国の太った方から感激・激励のメールがたくさん届きました(笑)。また、「人には言えないけれど、私はこれが好き」というように、マイノリティだと自認する人たちが集まると、強い一体感が生まれやすい。

さらに、必ず小さなハードルを設けること。「丸の内朝大学」は、いつもより少し早起きしなければ参加できません。しかし、乗り越えたときに、小さな達成感が生まれる。そうした人たちが集まれば、同じハードルを乗り越えて集まった仲間、という一体感も生まれます。

馬場正尊: 場の状況を上手にデザインすることで、参加する人々のなかに“熱い何か”が生まれやすくなるわけですね。

古田秘馬: 世の中が変わるときは、いきなり大きな変化は起こりません。最初に小さな点が生まれ、それを見た周囲の人々が「面白そうだ」と言い始め、次第に社会に広がり、大きな変化になっていくのです。日本における資本主義も、坂本龍馬が亀山社中をつくり、「これからはカンパニーぜよ!」と言ったことで始まりました。当時は誰も理解できませんでしたが、150年経った現在は当たり前になっている。ソーシャルデザインも、小さな点を打つことから始まるのです。


 
馬場正尊: 僕は2003年から、CET(Central East Tokyo)というイベントを行っています。神田・日本橋エリアの空き物件を利用し、街全体をギャラリーに見立てたアートイベントです。空き物件のオーナーには「期間限定のギャラリーを開きたいので、2週間だけタダで貸してください。今回はタダで借りますが、これを機に借りたいという人が現れるかもしれませんよ」とお願いしました。アーティストには「タダで作品を発表できる場所があるよ」と言って参加してもらいました。すると彼らは、それぞれの感性を活かして、簡単なリノベーションを施してくれました。

お客さんは地図を見ながら、アートを見て歩き、街も見て歩き、ついでにリノベーションされた物件も見て回る。関係する人すべてに小さなメリットが生まれる形にしたわけです。すると、参加者のなかから空き物件に入居する人が現れるようになりました。10年ほどイベントを続けた結果、新しいカフェやアトリエ、ギャラリー、ヘアサロンなどが100軒ほど誕生しました。

このイベントを通して、小さな点が線や面になっていく感覚をリアルに感じることができました。さらに「アクティブな点はつながりやすい」とも感じました。渋谷や六本木の家賃は払えないという人が、家賃も保証金も安い神田や日本橋の裏通りに小さなお店を出す。必死に経営していると、同じエリアの似たもの同士が集まるようになり、次のアクションが生まれていく。小さな点が少しずつ増え、線や面になり、やがて街そのものがダイナミックに再編集されていく。そのような現象も目の当たりにしました。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“気持ちいい空間を再構築する —東京R不動産の先に”
馬場正尊 (建築家/Open A ltd.代表取締役 東京R不動産ディレクター/東北芸術工科大学准教授 )
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。


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