記事・レポート
日本型ビジネス文化の特徴とグローバルコミュニケーションスキル
世界で活躍するために必須のノウハウを解説:ロッシェル・カップ
BIZセミナーグローバル文化ビジネススキル
更新日 : 2014年07月14日
(月)
第3章 直接的/間接的なコミュニケーション・スタイル

対立を好むか、回避するか
ロッシェル・カップ: コミュニケーションに関する2つのチャートを解説します。1つ目は「直接的・間接的なコミュニケーション・スタイル」です。

出典:http://www.alc.co.jp/eng/global/gmkouza/003.html
【直接的コミュニケーション・スタイルの特徴】
チャートの左側に向かうほど、オープンで対立をいとわない直接的なコミュニケーションを好みます。自分の考えをストレートに発言しても構わない、問題を解決するためにはオープンに話し合ったほうが良いと考える傾向があります。思っていることを素直に表現し、他人とは正反対の意見でも構わず口にしがちです。つまり、ディベートやディスカッションを好む傾向と言えるでしょう。
【間接的コミュニケーション・スタイルの特徴】
チャートの右側に向かうほど、間接的なコミュニケーションを好みます。何よりも和を大切にするため、人間関係にひびが入ることを心配し、自分の率直な意見を伝えることに抵抗感をもっています。また、相手があまり聞きたくないであろうことは、あえて口にはしません。どうしても言わなければならない場合は、オブラートに包んだ表現を使います。面目・体裁・世間体など、いわゆる「面子」を気にすることも1つの特徴と言えます。
一般的なイメージでは、日本は右端、アメリカは左端に位置すると思われるかもしれません。しかし、世界という広い視点で見ると、日本やアメリカよりもさらに両極に近い国があります。たとえば、東南アジアやアフリカ諸国の人にとっては、日本人のコミュニケーション・スタイルでさえ直接的だと感じられることもあるのです。
きしむ車輪は油を差される ⇔ 出る杭は打たれる
ロッシェル・カップ: 日本人から「早口で外国語をまくし立てる相手に対して、ゆっくり話してほしいけれど、それが言い出せない」ということをよく聞きます。間接的な文化の典型的な特徴です。しかし、直接的な文化の人は、「相手が何も言わなければOKなのだ」と捉える傾向があります。直接的なコミュニケーションを好む人には“Please, slow down.”“I can’t keep up with you.”などとはっきり伝えたほうが良いのです。
“The squeaky wheel gets the grease.”という米国のことわざがあります。直訳すれば、「きしむ車輪は油を差される」。そこから転じて「はっきりと主張すれば、求めるものが得られる」という意味で使われています。「出る杭は打たれる」とは対照的な考え方だと思います。日本をはじめ間接的なコミュニケーションを好む文化では、はっきり主張しなくても、相手が察してくれる、悟ってくれるだろうという意識があります。しかし、直接的なコミュニケーションを好む文化の人は、気がついてはくれません。基本として、日本人と同様の反応は期待しないほうが良いと思います。
日本型ビジネスのコミュニケーション・スタイルには、次のような特徴があります。まず、臭いものにフタをしようとする傾向があること。たとえば、人間関係がこじれてしまったときに、会話を避けるようになります。対話を通じて問題を解決するよりも、距離を置き、相手が気づくまで待とうとするからです。しかし、直接的なコミュニケーションを好む文化では、わざわざフタを開け、問題のすべてをテーブルに並べ、どれほど面倒でも徹底的に討論しようとする傾向があります。
和を優先し、面子を大切にする文化では、個人的な主張はできるだけ控え、周囲にもそれを期待します。また、相手やグループがどのように考えているかにも注意を払います。そして何より、意見を調整するように努力します。一方、欧米でよく使われる表現に“devil’s advocate”がありますが、議論を活発にするために、あえて周囲とは反対の意見を投げかけることさえあるのです。日本ではあまり好まれないことではないでしょうか。
日本型ビジネス文化の特徴とグローバルコミュニケーションスキル
インデックス
-
第1章 日本型ビジネス文化は、海外からどう見られている?
2014年07月02日 (水)
-
第2章 異文化コミュニケーションの基本的な考え方
2014年07月07日 (月)
-
第3章 直接的/間接的なコミュニケーション・スタイル
2014年07月14日 (月)
-
第4章 ビジネスコミュニケーションにおける言葉への依存度
2014年07月16日 (水)
-
第5章 異文化コミュニケーションに役立つ「フィードバック」
2014年07月18日 (金)
-
第6章 ネガティブ・フィードバック〜相手の行動に不満をもったとき
2014年07月23日 (水)
-
第7章 ネガティブ・フィードバックの3つのステップ
2014年07月25日 (金)
-
第8章 ポジティブ・フィードバック〜相手の望ましい行動を評価する
2014年07月28日 (月)
-
第9章 異文化コミュニケーションQ&A
2014年08月01日 (金)
該当講座
Rochelle Kopp (ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長)
Rochelle Kopp(ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長)
本セミナーでは来日するカップ氏をお招きして、グローバルにビジネスを展開する際に日本型文化が海外でどう見られており、コミュニケーションで気をつける点はどこにあるのか、ワークショップを交えながらお話いただきます。
BIZセミナー
グローバル 文化 ビジネススキル

注目の記事
-
09月28日 (木) 更新
もっとも書物らしい書物—西洋中世写本の魅力に触れる書籍案内
今回は「もっとも書物らしい書物—西洋中世写本の魅力に触れる書籍案内」と題し、手書きから印刷、そしてデジタルへと変遷してきた「書物」の歴史を辿....
-
09月26日 (火) 更新
六本木アートカレッジ
2022-2023年の六本木アートカレッジ <未来を拡張するゲームチェンジャー>」では、新しい価値を生み出す5名のゲストを招き、トークイベン....
<未来を拡張するゲームチェンジャー>イベントレポート
-
06月08日 (木) 更新
アークヒルズライブラリーのご利用、ありがとうございました
2023年6月30日に閉館するアークヒルズライブラリー。懐かしいイベントや周年パーティー、メンバーの皆さんからの声などをご紹介します。10年....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 10月31日 (火) 19:00~20:30
第2回:日本の政治が目指すべき方向は?
今年で18年目を迎える「カーティス教授の政治シリーズ」。9月に内閣改造を実施した岸田内閣の課題や政策について、1年後に迫ったアメリカ大統領選....
-
開催日 : 10月12日 (木) 18:30~20:00
World Report 第5回 地中海発 by 村山祐介
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくるものを参加者の皆....
「欧州を再び揺さぶる移民・難民問題」
-
開催日 : 10月11日 (水) 19:00~20:30
身体の不思議~『ブラック・ジャック』が問いかけたこと~
東京シティビューで開催する「手塚治虫 ブラック・ジャック展」東京会場の公式ファシリテーターを務める宮田裕章氏(慶応義塾大学教授)と全2回のト....