記事・レポート

みうらじゅんの物集め紀行

それでも、やっぱり、これが好き♡

更新日 : 2013年11月15日 (金)

第4章 レジに運ぶ、葛藤を乗り越えて

写真:みうらじゅん(イラストレーターなど)

 
ヘンヌキ:変な栓抜き

みうらじゅん:  こちらは「ヘンヌキ」、変すぎる栓抜きです。これは毛利元就の肖像画をモチーフにしていて、ちょうど股の部分をくり抜いています。

想像してみてください。誰かの家に招かれた際、「ちょっとビール出して」「あっ、栓抜き、栓抜き」という流れから、毛利元就のヘンヌキが出てくる。「なぜ、この家は毛利なんだろう?」という気持ちになりますよね。家人が陽気に話すかたわらで、客人は目の前に置かれた毛利元就のヘンヌキがずーっと気になる。「なぜ、毛利を買ったのか?」と、悶々とするわけです。

毛利があれば当然、奈良の大仏もあります。こちらは「西郷どん」の口で栓を抜く。しかも西郷どんの顔が、漫画チックになっている。このあたりも、すごくイヤでした。だから買う時は、心の中で「わーっ」と叫びながらレジに運びます。僕もそれなりに汗水たらして働いて、お金を稼いでいるので、「こんなモノに金を落としたくはない!」と、僕の脳も言いたくなるのでしょう。

みうらじゅんのスカウトキャラバン

みうらじゅん:  これは「栓抜き野球少年」と箱に書いてありました。大概、こうしたものはデッドストックです。それが目の前に10個並んでいたら、「わーっ」と思いながら、10個をレジに持っていくしかない。自分の家に野球少年を移籍させるのです。

僕としては、地方でタレントのスカウトキャラバンをやっている気持ちです。ダイヤの原石を見つけたらスカウトし、売り出していく。そして、「在庫ないですか?」と言われたら、僕としては常に「ありますよ」と言いたい。だから、置いてある分は全部買う。

エマニエル坊や。一時期、日本では社会現象になった人です。以前、どこかの温泉郷に行った時、「エマニエル坊やのベルト」と書かれたものが15本、みやげ物屋に並んでいました。使えたらいいなあと思い、腰に回してみましたが、子ども用で長さが全然足りなかった。「わーっ」と思いながら、全部買いました。

あと100年もすれば、100年後の柳田國男氏のような人が現れて、「これは民俗学的に見て、とても貴重だ」と言ってくれる。それを前提にして、僕はいまも「いやげ物」を買い続けています。