記事・レポート

みうらじゅんの物集め紀行

それでも、やっぱり、これが好き♡

更新日 : 2013年11月11日 (月)

第1章 欲しいモノは見た瞬間にゲット!!

常に人々の意表をつくモノに光を当て続けているみうらじゅん氏は、誰が買うのだろうと思ってしまうような、ムダなモノを集め続ける理由について、「それがスーベニール・ゴッド(みやげ物の神)の使命だから」と語ります。圧倒的にムダな努力と、ムダな量で、いつしか人を感動させる“物集め界”のトップリーダー、みうら氏。数々の失敗、後悔、落胆……の先に垣間見えた独特の世界観をご堪能ください。

スピーカー:みうらじゅん(イラストレーターなど)

写真:みうらじゅん(イラストレーターなど)
写真:みうらじゅん(イラストレーターなど)

 
両親は僕の熱烈なファン

みうらじゅん: いま、モノを整理したり、捨てたりすることが流行っていますよね。でも僕は、どうしたらモノを捨てずにすむのか、小学生の頃からそればかりを考えて生きてきました。

一人っ子だった僕は、両親の愛情を一身に受け、色々なモノを買ってもらいました。小さい頃、マグマ大使ガムを買うと、応募券がついていました。それを送ると、マグマ大使と怪獣が戦うおもちゃが抽選で当たる。すごく欲しかった。でも、なかなか当たらない。その姿をウチの親父が盗み見ていたようで、ある日、大量のマグマ大使ガムが家にやってきました。いまで言う「箱買い」ですよね。

先回りする親だったので、僕が軽々しく発言すると、すぐに買ってきてくれる。こちらとしても気をつけないといかんな、と思っていました。ウチの親父とお袋は、僕の熱烈なファンだったと思います。だから、モノを捨てようかという時も、「じゅん、どうすんねん?」と、必ず2回は聞かれました。最後に聞く時、いまで言うファイナルアンサーですよね、その時にいらないと言うと、捨てる。実際にいくつか捨てたこともありますが、捨てたモノを覚えているので、ほとんど捨てていないということです。

「スクラッパー」としての使命

みうらじゅん: そうした両親のおかげで、小学生の頃は『少年マガジン』や『少年サンデー』など4誌のマンガを定期購読していました。本屋から届くと、マンガは読まずに、すぐにハサミを入れます。好きな怪獣の写真をスクラップブック、コクヨのラ-40に移し替える「スクラッパー」という仕事を、小学校1年から始めました。「スクラッパー」が手がけたコクヨのラ-40は、僕というフィルターを通過して再編集された怪獣の雑誌になりました。

友達が遊びに来た時に意味もなく見せたり、学校に持っていったりして、頼まれもしないのに壁新聞まで作っていました。そこでは剥がされる、破られる、不幸な目にもたくさん遭いましたが、とにかく、「スクラップに移し替えると、モノは残る」ことを理解していきました。

ウチでは新聞を2誌とっていました。その頃は怪獣ブームで、怪獣の記事や映画の宣伝写真がたくさん載っていました。そうした記事や写真は、ウチの親父が会社から帰ってくる前に切り取られ、親父が帰宅した時には新聞がボロボロになっていました。「オレが読んでから切れ」と言われました。

でも、読んでから切っているようでは、もう遅い。気がついた時にすぐに切り取り、貼らないと、「スクラッパー」の命は死んでしまいます。何かを考える前にすぐ、見た瞬間にゲットしないとダメなのです。もう50も半ばになりましたが、いまもそうしたことをメインでやっております。