記事・レポート
中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」
アートって、こういうことだったのか!
更新日 : 2012年05月18日
(金)
第8章 1つひとつ丁寧に&信じることをやり続ける

会場からの質問: REVALUE NIPPON PROJECTでは工芸家さんにスポットが当たっていますが、道具や素材をつくる方など、アートとはなかなかコラボレーションできない方が地方にはたくさんいらっしゃると思います。このプロジェクトを通して、そういう地場産業や地域の方が元気になるような計画があれば、教えていただけますか。
中田英寿: おっしゃる通り、伝統工芸が衰退していくと、その道具をつくる人がいなくなっていくんです。道具ができなくなると、さらに衰退していって、いいものは当然つくれなくなります。これはよくあることなので、そこまでやっていきたいと思うのですが、このプロジェクトで僕がやろうとしているのは「和紙っておもしろいな」と思ってもらえるきっかけをつくったり、このプロジェクトに参加してもらうことで、その作家さんたちがメディアで取り上げられたりして、その伝統工芸の業界におけるスターをつくることなんです。これはスポーツでもそうですが、そういう人が出てこないと、その業界に注目が集まらないので。まずはそこを大事にしています。
その先には財団で一般向けの商品をつくり業界に需要をもたらしたり、または道具をつくったりする人のところまで商売が成り立つことをやっていきたいという目標もありますが、無駄に急いでもいいものができないので、1つずつゆっくり、きちんとやっていきたいんです。
このプロジェクトは1回で終わらせるのではなく、これをきっかけに知り合い、別のプロジェクトや仕事を相談していくことも視野に入れているので、長いスパンで考えています。
南條史生: そろそろ締めの時間ですが、ちょうど活動のまとめのようなお答えをいただきました。栗林さん、こうした活動について、あるいは自分が今後取り組みたい課題などについて、最後に何かひと言。
栗林隆: お2人がおっしゃっていることはよくわかるので、僕ができることはいくらでも手を貸します。ただ、僕は自分がとんがっている部分というか、意識している部分である「境界」をテーマにずっとアートをやってきているので、これを追及して自分のものをつくっていけば、つながっていけるんじゃないかと思っています。
中田君がヨーロッパに行っていたとき、ちょうど僕はドイツにいたので、ペルージャの試合を観に行っていました。そのときは、まさかこうして一緒に作品をつくることになるとは思ってもいませんでした。でも今回のようなことが起きるのは、自分の信じることをやってきたからだと思うんです。それはわがままを通すということじゃなくて、いろいろな人と関係を持たせていただいて、僕は自分の好きなものをつくらせてもらえていると。
だから、これからもいろいろな人に感謝しながら、自分のできることをやっていけば、また中田君や南條さんに声を掛けてもらえるんじゃないかと思っています……ちょっと優等生な答え(笑)。
南條史生: アーティストの鑑みたいな感じの答えだね。アーティストって、自分が信じていることしかやらないですよね。だからお金を積んでもやってくれない。普通の価値観とは違うものを信じて生きている、その部分がアーティストらしさなので、それを貫くというのはいいと思います。中田さん、何か最後につけ加えることはありませんか?
中田英寿: 大丈夫です。
南條史生: 今日は実例をあげながら、中田さん栗林さん、お2人がやっていらっしゃることをご紹介しました。これからの日本にとって大事なことですので、皆さんにはぜひ、中田さんのプロジェクトの深さと広がりをお考えいただきたいと思います。そしてこれからも中田さんと、栗林さん、それに森美術館にエールを送ってください。ありがとうございました。(終)
中田英寿: おっしゃる通り、伝統工芸が衰退していくと、その道具をつくる人がいなくなっていくんです。道具ができなくなると、さらに衰退していって、いいものは当然つくれなくなります。これはよくあることなので、そこまでやっていきたいと思うのですが、このプロジェクトで僕がやろうとしているのは「和紙っておもしろいな」と思ってもらえるきっかけをつくったり、このプロジェクトに参加してもらうことで、その作家さんたちがメディアで取り上げられたりして、その伝統工芸の業界におけるスターをつくることなんです。これはスポーツでもそうですが、そういう人が出てこないと、その業界に注目が集まらないので。まずはそこを大事にしています。
その先には財団で一般向けの商品をつくり業界に需要をもたらしたり、または道具をつくったりする人のところまで商売が成り立つことをやっていきたいという目標もありますが、無駄に急いでもいいものができないので、1つずつゆっくり、きちんとやっていきたいんです。
このプロジェクトは1回で終わらせるのではなく、これをきっかけに知り合い、別のプロジェクトや仕事を相談していくことも視野に入れているので、長いスパンで考えています。
南條史生: そろそろ締めの時間ですが、ちょうど活動のまとめのようなお答えをいただきました。栗林さん、こうした活動について、あるいは自分が今後取り組みたい課題などについて、最後に何かひと言。
栗林隆: お2人がおっしゃっていることはよくわかるので、僕ができることはいくらでも手を貸します。ただ、僕は自分がとんがっている部分というか、意識している部分である「境界」をテーマにずっとアートをやってきているので、これを追及して自分のものをつくっていけば、つながっていけるんじゃないかと思っています。
中田君がヨーロッパに行っていたとき、ちょうど僕はドイツにいたので、ペルージャの試合を観に行っていました。そのときは、まさかこうして一緒に作品をつくることになるとは思ってもいませんでした。でも今回のようなことが起きるのは、自分の信じることをやってきたからだと思うんです。それはわがままを通すということじゃなくて、いろいろな人と関係を持たせていただいて、僕は自分の好きなものをつくらせてもらえていると。
だから、これからもいろいろな人に感謝しながら、自分のできることをやっていけば、また中田君や南條さんに声を掛けてもらえるんじゃないかと思っています……ちょっと優等生な答え(笑)。
南條史生: アーティストの鑑みたいな感じの答えだね。アーティストって、自分が信じていることしかやらないですよね。だからお金を積んでもやってくれない。普通の価値観とは違うものを信じて生きている、その部分がアーティストらしさなので、それを貫くというのはいいと思います。中田さん、何か最後につけ加えることはありませんか?
中田英寿: 大丈夫です。
南條史生: 今日は実例をあげながら、中田さん栗林さん、お2人がやっていらっしゃることをご紹介しました。これからの日本にとって大事なことですので、皆さんにはぜひ、中田さんのプロジェクトの深さと広がりをお考えいただきたいと思います。そしてこれからも中田さんと、栗林さん、それに森美術館にエールを送ってください。ありがとうございました。(終)

「なにかできること、ひとつ。」をテーマに様々な活動を続ける「TAKE ACTION」を通して、積極的に新しい価値発信を続ける中田氏。そのプロジェクトのひとつとして始まった「REVALUE NIPPON PROJECT」は日本の伝統・文化をより多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、伝統文化の継承・発展を促すことを目的として、気鋭の工芸作家とアーティストやクリエイターのコラボレーションで作品を作っています。今回、「REVALUE NIPPON PROJECT」2011年メンバーとして参加しているアーティスト栗林隆氏、森美術館館長南條史生氏、そして中田氏が、現在進行形のプロジェクトについて、さらに世界を知る三人から、これからの日本がつないでいくべき伝統・文化、そして新しい価値創造について語ります。
中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」 インデックス
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第1章 伝統工芸に新たな価値を加えてプロデュース
2012年05月07日 (月)
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第2章 和紙の地球《Erde(エルデ)》誕生秘話
2012年05月08日 (火)
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第3章 境界へのこだわり、挑戦、困難
2012年05月10日 (木)
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第4章 “新しさ”のない伝統工芸は“伝統”として生き残れない
2012年05月11日 (金)
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第5章 一番大事なのは「自分が楽しめるかどうか」
2012年05月14日 (月)
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第6章 自分の作品を目の前でオークションにかけられる気持ちは…
2012年05月15日 (火)
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第7章 重厚長大産業からソフト産業へ ~日本の新たなブランド力~
2012年05月17日 (木)
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第8章 1つひとつ丁寧に&信じることをやり続ける
2012年05月18日 (金)
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