記事・レポート

中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」

アートって、こういうことだったのか!

更新日 : 2012年05月11日 (金)

第4章 “新しさ”のない伝統工芸は“伝統”として生き残れない

南條史生(左)中田英寿氏(中央)栗林隆氏(右)

南條史生: 栗林さんはアーティストだから、今まであったようなものはつくらないんですよね。誰も考えたことがないような、クリエイティブものをつくろうとする。たとえリスクが高くてもそれに挑戦する。だから栗林さんがつくるものには、いつも驚きがあるわけです。

森美術館の「ネイチャー・センス展」での作品《ヴァルト・アウス・ヴァルト(林による林)》は、真っ白な紙でつくった大地の上に木が立っている作品でしたが、これも観客は最初は何だかわからないんです。というのは、まずは大地の下に入っちゃうので。その大地に所々穴が開いていて、そこから顔を出すと、初めて林が見えるという仕掛けでした。 今回の作品《Erde(エルデ)》も同じような仕掛けですね。頭を地球の中に突っ込むと、初めてやろうとしていることがわかるという。

栗林隆: そうですね。最初はものすごく大きいのをつくろうとしていたんです。でも会場の都合で大きさは1,600cmまでという条件だったのでそれに合わせました。

中田英寿: 和紙というと、皆さん「薄っぺらい平面のもの」を想像すると思うのですが、そのイメージを裏切ろうとするチームが多くて、大きくて立体的な作品が多かったですね。僕としては「頭に“伝統”と付く工芸というものに新しいアイディアを入れることで、新しい使い方を提案できれば」という意図だったので、皆さんが和紙の枠を超えた素晴らしいものをつくってくれたのでよかったと思っています。

南條史生: 伝統工芸は非常に大事ですが、それを維持するだけでは、つくっているものが時代のライフスタイルにだんだん合わなくなっていくので、やがて売れなくなります。そうなると伝統工芸自体が衰退してしまいます。だから伝統工芸とはいえ、新しいアイディアで違う製品をどんどんつくっていかないと、伝統工芸も生き残れないと思うんです。中田さんがやっていることは、そのポイントを突いていると思います。

中田英寿: 僕はこの活動を始めたときから「伝統工芸とアートの境界線はどこだろう?」という疑問みたいなものを感じてきました。栗林さんの《Erde(エルデ)》はアートなのか、それとも和紙でつくっているから伝統工芸品なのか——。僕のイメージでは「伝統工芸品は基本的に素材がありきでつくる生活用品」で、「アートはアイディアがあって素材を選んでつくるもの」なのですが、これについてはどうお考えですか?

栗林隆: 僕は伝統工芸というものから一番離れたところにいる人間なんです。じゃあ、伝統工芸を重んじていないのかというと、そうではなく、僕は日本人としてとても大事なものだと思っています。

この2つを誰が発信するか、というのが結構大きい気がします。伝統工芸に新しさを取り入れている人はいないわけじゃないんですけど、そこにスポットを当てて、世界に発信して宣伝できる人は少ないわけです。「中田英寿」という人間は、それができる希有な人なんです。会場のみなさんも「中田君が何をしゃべるんだろう?」と期待して来ていると思うんです。そういう人間は限られているので、そういう人がどんどん発信していけばいいと。

じゃあ僕は何をするのかといえば、伝統工芸と一緒に何かをやって云々ということじゃなくて、自分がやることをやる。僕は僕が考えていることをやる。南條さんは南條さんで、中田君は中田君で、それぞれやればいいんじゃないかと思っています。

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  六本木アートカレッジ「伝統が開く日本の未来」

「なにかできること、ひとつ。」をテーマに様々な活動を続ける「TAKE ACTION」を通して、積極的に新しい価値発信を続ける中田氏。そのプロジェクトのひとつとして始まった「REVALUE NIPPON PROJECT」は日本の伝統・文化をより多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、伝統文化の継承・発展を促すことを目的として、気鋭の工芸作家とアーティストやクリエイターのコラボレーションで作品を作っています。今回、「REVALUE NIPPON PROJECT」2011年メンバーとして参加しているアーティスト栗林隆氏、森美術館館長南條史生氏、そして中田氏が、現在進行形のプロジェクトについて、さらに世界を知る三人から、これからの日本がつないでいくべき伝統・文化、そして新しい価値創造について語ります。


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