記事・レポート
中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」
アートって、こういうことだったのか!
更新日 : 2012年05月07日
(月)
第1章 伝統工芸に新たな価値を加えてプロデュース
世界に誇る日本文化でありながら、継承の危機に瀕している伝統工芸。それを目にした中田氏は、伝統文化の継承と発展を促すREVALUE NIPPON PROJECTを立ち上げました。その未来の切り拓き方とは? この活動に参加したアーティストの栗林氏と森美術館館長の南條氏と共に語ります。深く楽しい、日本再発見トークです。
講師:中田英寿(一般財団法人 TAKE ACTION FOUNDATION代表理事)
講師:栗林隆(アーティスト)
モデレーター:南條史生(森美術館館長)

南條史生: 六本木アートカレッジのクロージングセッションに、中田英寿さんと栗林隆さんにお越しいただきました。お2人をお呼びした経緯を簡単にご紹介すると、あるとき中田さんが私のところにいらして「日本の伝統工芸とクリエイションを結びつけるREVALUE NIPPON PROJECTという活動をしています。今年(2011年)のテーマは紙なので、誰か紙にまつわるクリエイターを紹介してください」とおっしゃったんです。それで私は、森美術館の「ネイチャー・センス展」でギャラリーを紙で埋め尽くしたことのある栗林さんを紹介したというわけです。
今日はこのプロジェクトのお話を中心に、伝統工芸とアート、そしてこれからの日本という話をいたします。まずは中田さんから、REVALUE NIPPON PROJECTをはじめた理由や意図からお話しいただいてもいいですか。
中田英寿: 2006年に現役を引退したあと世界中を旅している内に「日本のことを知らない自分」にきづいて、2009年の春ぐらいから日本全国47都道府県全部を回る旅を始めました。それぞれ各地で伝統文化や農業、寺社仏閣などを見てきたのですが、中でも伝統工芸に驚いたんです。
こんなにおもしろくて素晴らしいものがあるということを、僕は知りませんでした。知らないから、当然それまでは興味ももっていませんでした。「僕みたいな人ってたくさんいるんじゃないかな、こんなにかっこいいものがあること自体を知らない人って……」と考え、ちょうど同時期に設立した一般財団法人TAKE ACTION FOUNDATIONの活動の1つとして、この伝統工芸を多くの人に伝えるためのプロジェクトを始めたんです。アートとつなげた理由は、伝統工芸は技術も素材も素晴らしいのですが、より現代に合うアイディアがちょっと足りないことが多いと思ったからです。
ただ、僕は工芸もアートも詳しくないので、プロジェクトにはアドバイザリーとしてさまざまな分野の専門家に入ってもらっています。その方たちに今年のテーマに合った工芸家とアーティストやデザイナー、あるいは建築家といったコラボレ-ターを選んでもらい、作品をつくってもらうわけです。作品のテーマは毎年変えていて、去年(2010年)は「陶磁器」、今年(2011年)は「和紙」でした。
今回、南條さんにはアドバイザリーになっていただき、栗林さんをアーティストとしてご紹介いただきました。飛び込みでお願いに行ったにもかかわらず、本当に快くOKしてくれました。作品に関しては、テーマと予算を渡して、あとは基本的に丸投げです。だから僕もどんな作品ができるのか最後までわからないのですが、毎回本当におもしろいものができてきます。
南條史生: 今年は全部で5組のコラボレーション・チームがあって、中田さんも1つチームを率いていましたよね?
中田英寿: 僕のチームは2m×1.5mぐらいの大きな和紙に、日本でもトップと思われる5人の写真家が撮った写真を和紙の風合いを活かしながらモノクロでプリントしました。でも今日はせっかくですから、栗林さんの作品をご本人からいろいろ紹介してもらいましょう。
南條史生: では栗林さん、どういうふうに作品をつくっていったのかをお話ししてもらっていいですか。
栗林隆: その前に、中田君が南條さんに丸投げして、それを南條さんが僕に丸投げするという、恐ろしい展開があったこともお話ししておきます。(笑)
今日はこのプロジェクトのお話を中心に、伝統工芸とアート、そしてこれからの日本という話をいたします。まずは中田さんから、REVALUE NIPPON PROJECTをはじめた理由や意図からお話しいただいてもいいですか。
中田英寿: 2006年に現役を引退したあと世界中を旅している内に「日本のことを知らない自分」にきづいて、2009年の春ぐらいから日本全国47都道府県全部を回る旅を始めました。それぞれ各地で伝統文化や農業、寺社仏閣などを見てきたのですが、中でも伝統工芸に驚いたんです。
こんなにおもしろくて素晴らしいものがあるということを、僕は知りませんでした。知らないから、当然それまでは興味ももっていませんでした。「僕みたいな人ってたくさんいるんじゃないかな、こんなにかっこいいものがあること自体を知らない人って……」と考え、ちょうど同時期に設立した一般財団法人TAKE ACTION FOUNDATIONの活動の1つとして、この伝統工芸を多くの人に伝えるためのプロジェクトを始めたんです。アートとつなげた理由は、伝統工芸は技術も素材も素晴らしいのですが、より現代に合うアイディアがちょっと足りないことが多いと思ったからです。
ただ、僕は工芸もアートも詳しくないので、プロジェクトにはアドバイザリーとしてさまざまな分野の専門家に入ってもらっています。その方たちに今年のテーマに合った工芸家とアーティストやデザイナー、あるいは建築家といったコラボレ-ターを選んでもらい、作品をつくってもらうわけです。作品のテーマは毎年変えていて、去年(2010年)は「陶磁器」、今年(2011年)は「和紙」でした。
今回、南條さんにはアドバイザリーになっていただき、栗林さんをアーティストとしてご紹介いただきました。飛び込みでお願いに行ったにもかかわらず、本当に快くOKしてくれました。作品に関しては、テーマと予算を渡して、あとは基本的に丸投げです。だから僕もどんな作品ができるのか最後までわからないのですが、毎回本当におもしろいものができてきます。
南條史生: 今年は全部で5組のコラボレーション・チームがあって、中田さんも1つチームを率いていましたよね?
中田英寿: 僕のチームは2m×1.5mぐらいの大きな和紙に、日本でもトップと思われる5人の写真家が撮った写真を和紙の風合いを活かしながらモノクロでプリントしました。でも今日はせっかくですから、栗林さんの作品をご本人からいろいろ紹介してもらいましょう。
南條史生: では栗林さん、どういうふうに作品をつくっていったのかをお話ししてもらっていいですか。
栗林隆: その前に、中田君が南條さんに丸投げして、それを南條さんが僕に丸投げするという、恐ろしい展開があったこともお話ししておきます。(笑)

「なにかできること、ひとつ。」をテーマに様々な活動を続ける「TAKE ACTION」を通して、積極的に新しい価値発信を続ける中田氏。そのプロジェクトのひとつとして始まった「REVALUE NIPPON PROJECT」は日本の伝統・文化をより多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、伝統文化の継承・発展を促すことを目的として、気鋭の工芸作家とアーティストやクリエイターのコラボレーションで作品を作っています。今回、「REVALUE NIPPON PROJECT」2011年メンバーとして参加しているアーティスト栗林隆氏、森美術館館長南條史生氏、そして中田氏が、現在進行形のプロジェクトについて、さらに世界を知る三人から、これからの日本がつないでいくべき伝統・文化、そして新しい価値創造について語ります。
中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」 インデックス
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第1章 伝統工芸に新たな価値を加えてプロデュース
2012年05月07日 (月)
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第2章 和紙の地球《Erde(エルデ)》誕生秘話
2012年05月08日 (火)
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第3章 境界へのこだわり、挑戦、困難
2012年05月10日 (木)
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第4章 “新しさ”のない伝統工芸は“伝統”として生き残れない
2012年05月11日 (金)
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第5章 一番大事なのは「自分が楽しめるかどうか」
2012年05月14日 (月)
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第6章 自分の作品を目の前でオークションにかけられる気持ちは…
2012年05月15日 (火)
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第7章 重厚長大産業からソフト産業へ ~日本の新たなブランド力~
2012年05月17日 (木)
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第8章 1つひとつ丁寧に&信じることをやり続ける
2012年05月18日 (金)
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