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美術館館長と経済学者が熱く語る「アートの新たな可能性」

南條史生×竹中平蔵 in 六本木アートカレッジ

更新日 : 2012年04月26日 (木)

第6章 アートは「隙間産業」です

南條史生(左)竹中平蔵氏(右)

会場にいた森稔会長からの質問: お話を伺っていて、少し物足りないと思ったのは、時代の変わり目とアートの関連についてです。今、どんどん時代が変わっていますよね。テクノロジーが発展して、情報化社会が進んだ結果、これまで得られなかったものがどんどん得られるようになってきました。人々は便利さや快適さではなく、もうちょっと何か次元の違うものを究極的に求めるようになってきているのではないかと思うのです。このとき、アートはどう変わっていくのでしょうか。そういうニーズにどう対応するか、私は街づくりの立場からいつも考えているので、それに対して何か示唆をいただければ。

竹中平蔵: 森会長から「物足りない」と言われましたので、ここはやはり南條さん、何か言わないと(笑)。

南條史生: アートがどうなるか、これを予言できたら、私も本当に楽なんですけど(笑)。1つ言えるのは、アートは溶け始めているというか、ビジネスもアート化しつつあると思います。いまやデザインやパッケージでアーティスティックな表現を無視した製品は売れませんし、コマーシャルには非常に先進的な表現が出てきています。経済もアーティスティックな方向に向かっていると私は思っているんです。

これまでの「大量生産、廉価販売」はモダニズム的な経済の1つの進化としてあったわけですが、今はコンピュータのおかげで、顧客のニーズに合わせて1つずつ違うものを簡単につくれるようになりました。細分断化されたニーズに合わせて、物が変わってきているわけです。物だけでなく、エネルギー消費をコンピュータで細かくコントロールして全体の消費量を抑えていくスマートシティもそうですし、1台の車を時間毎に区切ってみんなで使うカーシェアリングもそうです。こういうふうに、すべての使い方が新しい方向に向かっているような気がします。ですから、街づくりもアートです。

また、経済的な価値の生産だけでなく、社会的な価値というか、他の人々との関係の結び方が重要になってきているのではないかと。絆とは言いたくないんですが、他の人々との関係をどう規定し、紡ぎ出すのかということが重要になってきている。だからアートもコミュニティーをベースにした物、他者との関係を結ぶ表現が増加している。リレーショナル・エステティックなどと言う言葉も生まれています。これをかつてとは違う形で、精神的な価値を求めている、心の充足を求めている、のだということもできるようにも思います。つまりアートは人の生き方の変化に対応しています。

表現の形態を見ると「これはデザインだ」「これはファッションだ」「これは建築だ」ということは言いやすいのですが、アートは単純なジャンルではないわけです。アートと呼ばれているものの中にはパフォーマンスも音楽もある。ワークショップも増えていますが、これも実はアートの表現だと言えるかもしれない。あらゆる表現方法がアートの中に入っています。結局アートは何かというと「定義できないものの領域」全部なんです。デザインとかファッションとか建築というふうな定義できているものが確固として存在していて、そのジャンルの隙間に入り込んでいるもの、どっちとも言えないようなものが全部アートと呼ばれている。だから私は「アートは隙間産業だ」とも言っているのです。

アートというのは、ものの考え方をベースにした新しい視点への取り組みであり、そういうスピリットを持っているのがアーティストであり、表現はもう絵画や彫刻だけに限られないという方向に向かうと思います。それは人の生き方の変化をいち早く表象するでしょう。

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  六本木アートカレッジ「アートの新たな可能性」

今求められているのは、経済的な豊かさ以上に心の豊かさ。それは個人レベルだけではなく国家レベルでも同じではないでしょうか。だからこそ、ソフトパワー(文化や政治的価値観、政策の魅力など)が注目されています。
その中心的役割を担うのがアート。社会、政治、経済と密接な関係にあるアートが、未来の社会でどのような可能性を持つのでしょうか。森美術館の南條館長とアカデミーヒルズの竹中理事長に対談していただき、アートがいかに社会と深く関わっているか、そして、ソフト・パワーがいかに国策として
重要になっていくかの議論を通じて、アートと社会の関係性について考えてみたいと思います。

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