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美術館館長と経済学者が熱く語る「アートの新たな可能性」

南條史生×竹中平蔵 in 六本木アートカレッジ

更新日 : 2012年04月23日 (月)

第4章 アートで街おこし。日本と欧米では発想が違う

南條史生

竹中平蔵: アートを通じて地域を再生させた事例や、新たなアートを生み出す社会の力について、世界のアートシーンを観てこられた南條さんがお感じになられたことを、ぜひ教えていただけますか。

南條史生: 日本ではアートが地域活性化の1つの手段になっていますが、これは世界の中ではかなり特殊な状況だと思います。冒頭でご紹介した六本木、別府、十和田市だけでなく、最近はビエンナーレやトリエンナーレと名のつく大きな国際展も国内で行われています。その多くが美術館の中ではなく、街の中で行われています。越後妻有アートトリエンナーレも、あいちトリアンナーレも、瀬戸内国際芸術祭もそうです。

街でやることで人が楽しそうに集まり、結果的に街の雰囲気が変わっていくわけです。だからちょっと荒れているような地域が、文化的な装いのある街に変わるきっかけをつくる都市開発の手段として、アートを活用するようにもなってきたんですね。その発端になったのは、ニューヨークのソーホーだと思います。もともとは倉庫と工場の街だったのが、いつの間にかアーティストが住み着くようになり、後からいろんな人が来るようになって、高級なギャラリーやブティックがどんどんできていったんです。ただ、いまや地価が上がってしまって、アーティストは出て行ってしまっていますが……。

このように荒れていた街がアートによって文化的な街に変わっていくことを、英語でジェントリフィケーションと呼んでいます。日本では、多くの地方都市で「過疎化した街の中心部を、アートで活性化する」という手段に変化して、定着している。

ヨーロッパでは、また事情が違います。アートの国際展は、今、世界で300以上あると言われていますが、特に冷戦後に増えました。ヨーロッパではソ連が崩壊して、ベルリンの壁がなくなり、国家間の緊張が緩和したために、国境の意味が弱まり、各都市が存在を主張するようになったのではないかと私は見ています。そのときツールとなったのが「文化」だったのではないでしょうか。そのため、ヨーロッパでは大型の国際展の創設と美術館の建設が進行しました。この試みは流行として日本、韓国はもとより、中国、中東にもひろがり、結果として、あちこちに多数の美術館が建ち、国際展が花盛りになったのです。

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  六本木アートカレッジ「アートの新たな可能性」

今求められているのは、経済的な豊かさ以上に心の豊かさ。それは個人レベルだけではなく国家レベルでも同じではないでしょうか。だからこそ、ソフトパワー(文化や政治的価値観、政策の魅力など)が注目されています。
その中心的役割を担うのがアート。社会、政治、経済と密接な関係にあるアートが、未来の社会でどのような可能性を持つのでしょうか。森美術館の南條館長とアカデミーヒルズの竹中理事長に対談していただき、アートがいかに社会と深く関わっているか、そして、ソフト・パワーがいかに国策として
重要になっていくかの議論を通じて、アートと社会の関係性について考えてみたいと思います。

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