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野中郁次郎氏が語る、未来を経営する作法~美徳のイノベーション~

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

更新日 : 2010年09月30日 (木)

第4章 賢慮型リーダーシップの6つの能力

野中郁次郎氏

野中郁次郎: いかなる価値を生み出すか——直感や洞察をベースに顧客と組織の関係性を構築していくとなると、ビジネスモデルはリーダーシップと深くかかわってきます。「価値命題」を生み出し実現するためには、リーダーシップが必要なのです。では、どんなリーダーシップが必要なのでしょうか。

我々が最終的にたどりついたのは、アリストテレスが提唱した「フロネシス」です。フロネシスには賢人の思慮分別「Prudence」と、実践的知恵「Practical Wisdom」の2つの意味があります。2つを合わせて「実践知」としていいでしょう。これは価値・倫理の思慮分別を持ちながら、個別具体の状況や文脈のただ中で、最善の判断・行為ができる能力です。

我々は、この実践知を持つ「賢慮型リーダーシップ」は6つの能力で構成されると考えました。

【1つ目】は、「善い」目的をつくる能力です。未来を予測することは不可能ですが、少なくとも善い目的というベクトルを持たないと、未来を切り開いていくことはできません。
【2つ目】は、そういう知を生み出す場づくりができる、しかもタイムリーに場をつくれる能力です。
【3つ目】は、先ほどのラタン・タタのように現実を直感する能力です。
【4つ目】は、背後にある本質を言語化する能力です。
【5つ目】は、それを実行・実現する政治力です。
【6つ目】は、個人の実践知を組織の実践知にする能力です。1人のフロネシスではなく、組織のフロネシスにするということです。

それぞれの能力について、簡単に説明いたします。1つ目の能力「『善い』目的をつくる能力』については、何がgoodかは難しい問題です。アリストテレスであれば性善説でしょう。実践的な立場であれば、「絶えず卓越性、excellenceを追求する、そのプロセス自体がgoodである」となるでしょうか。

ハイデガーの存在論で考えると、今をよりよく生きるために、あるいは過去の知をもっと豊かにするために、「未来」に軸足を置くべきだという考え方になるでしょう。軸足を未来に置くことで、過去の知が新しく生まれ変わり、未来と過去を総合してよりよい今を生きる、そういう発想です。

最近は、企業が未来の予見を持ちながら社会をリードしていくThought Leadershipという発想が強くなりました。IBMの「Smarter Planet」、GEの「Ecomagination」、ホンダの「人間尊重・三つの喜び」、エーザイの「human health care」、ユニクロの「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」などのように、こういう未来に向かうため、我々はある理念・思想を実現して社会に貢献するという発想です。
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第1回 美徳のイノベーション 未来を経営する作法
野中郁次郎 (一橋大学 名誉教授)

野中 郁次郎(一橋大学 名誉教授)
2007年の『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌で「The most influential business thinkers(最も影響力のあるビジネス思索家トップ20)」に選出された野中郁次郎氏のご講演です。


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