記事・レポート

天文学と占星術の不思議な関係

渡部潤一氏×鏡リュウジ氏

更新日 : 2010年08月13日 (金)

第5章 天文学と占星術の分かれ道

渡部潤一氏(左)鏡リュウジ氏(右)

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鏡リュウジ: 実は僕は、夜空の星座を見ても、今もそんなに詳しくないんです。例えばキャンプなどで女の子に「あの星座、何?」って聞かれても「わかんないよ」みたいな(笑)。

渡部潤一: 星座を知らないという意味では、実は天文学者もそうなんです。もちろん星が好きで好きでたまらなくて天文学の道に入ったという人も半分ぐらいはいます。ところが残りの半分は、まともに星を見たことも、望遠鏡を覗いたこともないんです。

そんな人がなぜ天文学の道に入ったかというと、数式の美しさに惹かれてです。例えば、「e=mc2(二乗)」というアインシュタインの有名な公式がありますが、「こんなシンプルな式で全てが説明できるのか」と感動して選んだ人が結構いるんです。

鏡リュウジ: シンプルな数式で熱くなるという感覚。これが西洋の占星術や天文学、あるいは自然学を突き動かしたモチベーションだったと思います。渡部先生も何度かおっしゃっていますが、どこを分水嶺にするかということはそれぞれの考え方によって違います。ただ少なくともルネサンスまでは占星術と天文学というのが同じ営み、同じアートの2つの側面であったということ、これは間違いないと思います。

なぜ分かれたのかと考えると、西洋人には、「宇宙は、この世界は、完璧なはずだ」という考え方があったからではないでしょうか。これは日本人が考える完璧さとは違いますよね。私たちは桜のはかなさや、季節の移ろいなど、いろいろなことが変化するという自然のすごさに美を感じる。一方、ヨーロッパの人たちの感性は「完璧なものは単純で永遠のはずだ」というところにある。

それが天文学、あるいは占星術を発達させていく大きなモチベーションになっていたのだと思います。自然現象の中で最もシンプルに見えるものは何かというと、やはり天体の運行だったのではないでしょうか。

近代科学が立ち上がって、科学とオカルトが分かれていく、その大きな契機になったのは、実は天文学です。コペルニクスが、「宇宙の中心は地球じゃない」と宣言したとき、天と地がひっくり返るような衝撃が起きた。そういう科学革命がどうやって起きたのかというと、惑星の動きを発見したから起きたのです。

さらには、宇宙を動かしている力と地球を動かしている力が同じものだとがわかってきて、先生の最初の言葉を借りれば「自分の世界は特別なものではなくて、ありふれたものだ」と知っていく。人類が大人になっていくプロセスを踏んでいくようになったのです。

そのプロセスの中で、占星術と天文学が分かれていった。「シンプルな法則でこの宇宙というのが理解できるはずだ」という思いが、天文学の歴史を動かしてきたのではないかと僕は考えています。

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鏡リュウジ (占星術研究家/翻訳家)
渡部潤一 (国立天文台上席教授)

鏡リュウジ(占星術研究家/翻訳家)
渡部潤一(天文学者/自然科学研究機構国立天文台天文情報センター長・アーカイブ室長・総合研究大学院大学准教授)
科学の発展とともに別々の道を歩むこととなった天文学と占星術の不思議な関係についてお話いただきます。


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