記事・レポート
今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える
~『白洲次郎 占領を背負った男』著者北康利、竹中平蔵が白洲次郎を語る~
更新日 : 2009年11月05日
(木)
第5章 戦争で焼け野原と化した日本。最後の希望は“日本人”だった
竹中平蔵: 北さんは作家としての志について、「みんなを元気にしたい」とお話しくださいました。実はその言葉自身に、私たちを元気にするメッセージが入っていると思うのです。
私は最近、人を通してものを考えることは、勉強法として非常に優れているんじゃないかと思うようになりました。例えば小学生に経済の話をするとき、GDPや金利と言ってもわかりません。そこで、ある人の話をするのです。例えば、私と同郷の和歌山県出身の松下幸之助の人生を通して話すと、小・中学生にも経済や経営が見えてくるのです。
人を通していろいろなことを学ぶというのはとても重要な手法で、ひとつのイノベーションではないかと思います。それを実践した最先端の一人が北さんだと思うのです。
北さんは、本で取り上げる人物を選ぶ基準をどこに置いていらっしゃるのでしょうか。
北康利: 基準は「元気を与える人」です。松下幸之助といえば、この間、『同行二人 松下幸之助と歩む旅』(PHP研究所/2008年刊)を出版しました。今だからこそ経営の神様、松下幸之助に学ぶべきときではないかと考えたのです。これまでの人物選びは、その時々の社会状況を見て「この人に学ぶべき時ではないか」とピックアップしてきたつもりです。
白洲次郎、坂本龍馬には元気とプリンシプルを、福沢諭吉には、まさにタイトル通り『国を支えて国を頼らず』を。これは『瘠我慢の説』で福沢諭吉先生がおっしゃった「立国は私なり、公に非ざるなり」という言葉の翻訳です。
「政治家や官僚が国のことをやるのは当たり前で、民間が国のことを考える。それでやっと国は成り立つんだ。自分の収益ばかりではなく、国を思う、社会を思う、これが国の底支えになるわけで一番重要なことだ」という意味です。
こういう本はなかなか売れません。でも資料を集めるのはものすごく大変で、お金もかかるので、どうせやるのだったら社会に貢献できるものを選んでいます。社会が必要とする処方箋を書いているつもりです。
竹中平蔵: 本の中で、白洲次郎らしいシーンがいくつかありました。私は、サンフランシスコ講和条約のときに、彼が演説草稿を差し替えたところにドラマを感じますし、彼の“プリンシプル”が凝縮されていると思うのですが。
北康利: 「戦争には負けたかもしれないけれど、奴隷になったわけではない」。これを読んだときに鳥肌が立ちました。私が感動したのは、通産省創設のところです。この国は焦土になり、上野の西郷さんの銅像辺りから海が見えたというのです。西郷さんの銅像は尋ね人の伝言板になっていて、ペタペタと張り紙だらけだったと。
こういう中で、吉田茂と白洲次郎は何を思ったか。「何もなくなってしまった。しかし日本人がいる」。国を復興させるには加工貿易というモデルが最も近道である。その前提には、教育水準が高く、真面目にコツコツでき、逆境にも強い日本人がいる。まさにパンドラの箱の最後の希望が日本人だった。そう言えたところに、私は感動したのです。
通産省創設の裏には、まず、すごいファンダメンタルズを持った日本人がいたことがありました。そしてもうひとつ、民の知恵を活かすということがあったのです。日本というソースで、何をやれば海外からたくさんお金を引き出せるかと考えたとき、それは貿易だということを知っていたわけです。
竹中平蔵: このセミナーをもう1度、経済産業省に行ってやりましょうか(笑)。ここ5年ぐらいで霞ヶ関は官僚化して、ひどい役所になってしまった。本当に志がなくなってしまいました。
私は最近、人を通してものを考えることは、勉強法として非常に優れているんじゃないかと思うようになりました。例えば小学生に経済の話をするとき、GDPや金利と言ってもわかりません。そこで、ある人の話をするのです。例えば、私と同郷の和歌山県出身の松下幸之助の人生を通して話すと、小・中学生にも経済や経営が見えてくるのです。
人を通していろいろなことを学ぶというのはとても重要な手法で、ひとつのイノベーションではないかと思います。それを実践した最先端の一人が北さんだと思うのです。
北さんは、本で取り上げる人物を選ぶ基準をどこに置いていらっしゃるのでしょうか。
北康利: 基準は「元気を与える人」です。松下幸之助といえば、この間、『同行二人 松下幸之助と歩む旅』(PHP研究所/2008年刊)を出版しました。今だからこそ経営の神様、松下幸之助に学ぶべきときではないかと考えたのです。これまでの人物選びは、その時々の社会状況を見て「この人に学ぶべき時ではないか」とピックアップしてきたつもりです。
白洲次郎、坂本龍馬には元気とプリンシプルを、福沢諭吉には、まさにタイトル通り『国を支えて国を頼らず』を。これは『瘠我慢の説』で福沢諭吉先生がおっしゃった「立国は私なり、公に非ざるなり」という言葉の翻訳です。
「政治家や官僚が国のことをやるのは当たり前で、民間が国のことを考える。それでやっと国は成り立つんだ。自分の収益ばかりではなく、国を思う、社会を思う、これが国の底支えになるわけで一番重要なことだ」という意味です。
こういう本はなかなか売れません。でも資料を集めるのはものすごく大変で、お金もかかるので、どうせやるのだったら社会に貢献できるものを選んでいます。社会が必要とする処方箋を書いているつもりです。
竹中平蔵: 本の中で、白洲次郎らしいシーンがいくつかありました。私は、サンフランシスコ講和条約のときに、彼が演説草稿を差し替えたところにドラマを感じますし、彼の“プリンシプル”が凝縮されていると思うのですが。
北康利: 「戦争には負けたかもしれないけれど、奴隷になったわけではない」。これを読んだときに鳥肌が立ちました。私が感動したのは、通産省創設のところです。この国は焦土になり、上野の西郷さんの銅像辺りから海が見えたというのです。西郷さんの銅像は尋ね人の伝言板になっていて、ペタペタと張り紙だらけだったと。
こういう中で、吉田茂と白洲次郎は何を思ったか。「何もなくなってしまった。しかし日本人がいる」。国を復興させるには加工貿易というモデルが最も近道である。その前提には、教育水準が高く、真面目にコツコツでき、逆境にも強い日本人がいる。まさにパンドラの箱の最後の希望が日本人だった。そう言えたところに、私は感動したのです。
通産省創設の裏には、まず、すごいファンダメンタルズを持った日本人がいたことがありました。そしてもうひとつ、民の知恵を活かすということがあったのです。日本というソースで、何をやれば海外からたくさんお金を引き出せるかと考えたとき、それは貿易だということを知っていたわけです。
竹中平蔵: このセミナーをもう1度、経済産業省に行ってやりましょうか(笑)。ここ5年ぐらいで霞ヶ関は官僚化して、ひどい役所になってしまった。本当に志がなくなってしまいました。
関連書籍
白洲次郎 占領を背負った男
北 康利講談社
イベント・レポート
北康利氏が、過去にアカデミーヒルズに登壇した際のイベント・レポート
今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える インデックス
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第1章 若者に元気を与えたい。だから本を書く
2009年09月16日 (水)
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第2章 白洲次郎に備わっていたプリンシプルと危機管理能力
2009年10月02日 (金)
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第3章 自分の頭で考えるために「イーグル・アイ」を持て
2009年10月15日 (木)
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第4章 白洲次郎は一私企業のエゴより、国全体の利益を考えた
2009年10月23日 (金)
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第5章 戦争で焼け野原と化した日本。最後の希望は“日本人”だった
2009年11月05日 (木)
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第6章 プリンシプル=生きる上での美学。では、美学とは何か?
2009年11月16日 (月)
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第7章 「プリンシプルのない日本」と言われないために
2009年11月26日 (木)
-
第8章 「誰かがやってくれる」から「俺がやらねば誰がやる」へ
2009年12月07日 (月)
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第9章 白洲次郎の人格は、どのように形成されたのか
2009年12月16日 (水)
該当講座
今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える
~『白洲次郎 占領を背負った男』著者北康利、竹中平蔵が白洲次郎を語る~
戦後の激動の時代に、日本に誇りを持ち、日本のために自分の役割を誠実に全うした白洲次郎の「生き方」から、我々は多いに学ぶことができるのではないでしょうか。
今回は北康利氏と竹中平蔵アカデミーヒルズ理事長が「今の日本人に求められる“プリンシプル”とは何か」を、白洲次郎の生き方から議論します。
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