記事・レポート
安藤忠雄「組織の条件、リーダーの条件」
更新日 : 2009年05月08日
(金)
第3章 直島で見た福武のリーダーシップ
安藤がチームづくりの達人として挙げるのが、瀬戸内海の「直島プロジェクト」を発案し、推進している福武總一郎である。安藤が直島プロジェクトと関わったのは、20年ほど前。当時の直島ははげ山で、お世辞にも「美しいニッポン」とはほど遠い状態だったという。しかし、当時ベネッセコーポレーションの社長だった福武は、「ここに世界中の人々を呼びたい」と目を輝かせて夢を語り、協力を求めた。安藤は、福武の情熱と創造力に賭けた。以来20年の付き合いになるが、「福武さんは自然とも村人ともチームをつくることができる。企業や芸術家や我々建築家ともチームをつくる。チームをつくるには愛情と忍耐力がいるが、福武さんは愛情も忍耐力も面白味もあるリーダーだ」と語る。
今では、人口約3,500人の直島に国内外から年間22万人が訪れる。世界で活躍するアーティストもたくさん訪れ、作品とエピソードを残している。直島のやり方は作品を買うのではなく、アーティストを直島に招いて作品を描いてもらうというもの。そのようにして作品を残したアーティストのひとり、リチャード・ロングは泊まった部屋にまでトレードマークの「丸」をたくさん描いて帰ったという。「たぶん、心のチームができたからだろう」と安藤はいう。
今では、人口約3,500人の直島に国内外から年間22万人が訪れる。世界で活躍するアーティストもたくさん訪れ、作品とエピソードを残している。直島のやり方は作品を買うのではなく、アーティストを直島に招いて作品を描いてもらうというもの。そのようにして作品を残したアーティストのひとり、リチャード・ロングは泊まった部屋にまでトレードマークの「丸」をたくさん描いて帰ったという。「たぶん、心のチームができたからだろう」と安藤はいう。
福武は新しいものをつくるだけでなく、直島の歴史や村の歴史との対話を考え、廃屋をアートの展示空間とする「家プロジェクト」をスタートさせた。安藤が設計を担当した南寺の「木の美術館」もそのひとつである。安藤はアーティストのジェームズ•タレルと対話し、直島の歴史とも対話を重ねながら美術館をつくり上げていった。周辺にも「一緒にやりませんか」と声をかけているが、家プロジェクトは相手のあるものだから実現までには時間がかかる。「なにかを創造するには、現実とも、時間とも、技術ともチームワークをとらなければならない」と、安藤は語る。
また、「人と人が対話することによって新しい世界が切り開かれる」ともいう。例えば、パリに集まった彫刻家のアレクサンダー•カルダーや画家のピエト•モンドリアンらは、全盛期のパブロ•ピカソに出会い、痛烈な批評や刺激に満ちた対話に発奮して新しい世界を切り開いていったという。前出の直島の人々も、島を訪れる人々との対話を通じて生きる喜びを見出し、島は活気を取り戻した。「単体の建築がポーンとできても面白くない。街と建築と人間が対話してこそ、面白い街づくりができる」。直島では今、現代美術と村人が対話をしている。
また、「人と人が対話することによって新しい世界が切り開かれる」ともいう。例えば、パリに集まった彫刻家のアレクサンダー•カルダーや画家のピエト•モンドリアンらは、全盛期のパブロ•ピカソに出会い、痛烈な批評や刺激に満ちた対話に発奮して新しい世界を切り開いていったという。前出の直島の人々も、島を訪れる人々との対話を通じて生きる喜びを見出し、島は活気を取り戻した。「単体の建築がポーンとできても面白くない。街と建築と人間が対話してこそ、面白い街づくりができる」。直島では今、現代美術と村人が対話をしている。
安藤忠雄「組織の条件、リーダーの条件」 インデックス
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第1章 自由と責任、夢と好奇心
2009年04月01日 (水)
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第2章 世界の人々とチームを組む
2009年04月16日 (木)
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第3章 直島で見た福武のリーダーシップ
2009年05月08日 (金)
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第4章 オリンピック招致の意義とは
2009年05月26日 (火)
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第5章 暗闇に一筋の光を追う
2009年06月12日 (金)
該当講座
安藤忠雄氏は1969年28歳の時に、たった2人の建築事務所を大阪に開設しました。それから40年、現在では精鋭25名、平均年齢30歳という若いスタッフを率いてヨーロッパ、アメリカ、中東、アジアなど国内外の多様なプロジェクトに日々真剣勝負を挑んでいます。 建築家安藤氏の活躍を知る機会はこれまで沢山あり....
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