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おもてなしの天才 
全米屈指のレストラン「ユニオン・スクエア・カフェ」の創業者が語るホスピタリティ・ビジネスの本質

更新日 : 2009年03月24日 (火)

第6章 お客さまを最高に幸せにするため、自分たちを大切にする

ダニー・マイヤーさん

マイヤー:  お客さまを2位、投資家を5位に順位づけたのは、そうすることが必要だったからです。1、2、3、4、5と直線的に順位づけしているのではなく、円形を描いています。いわゆる「好循環」です。1つの良いことが起きると、次の良いことにつながり、それがまたもっと良いことにつながっていく……。

一番お金を儲けたいという人も、投資家を一番目にしない。お客さまを最高に幸せにしたいという人も、お客さまを第一にしない。でも我々は、私たち自身を一番目にしたのです。

自己中心的と言われがちですが、好循環の始まりは、まず社員を重視すること。彼らの技能と精神を伸ばすことを重視したということです。従業員が満足し、喜びを感じて仕事をしてくれれば、そして、大切にされていると思うことができれば、お客さまに対してホスピタリティを発揮できるはずです。そして、お客さまはもっとお店に来たいと思い、もっとお金を使ってくださるのです。

HQの高い方は、もっといろいろな場面でホスピタリティを発揮したいと願っています。私たちを支えてくれる基盤であるコミュニティに対しても同様で、店の横に公園をつくったり、病院のそばにあるお店から火曜日の晩にはホスピスに食事を届けたりしています。サプライヤーにもホスピタリティを提供する。おいしいものを提供していただいて、おいしい食事をつくるわけです。そうすることで売上が伸び、投資家にも喜んでもらえます。

ダニー・マイヤーさん
いい比喩になるので、白鳥のお話をしたいと思います。白鳥はとても優雅に見えます。でも体の半分、水面下では一所懸命足をかいているのです。残りの50%が水面上で、人に優雅さというホスピタリティを発揮しています。水中に隠れている部分は白鳥がやること、上の部分は白鳥が皆さんに情緒的な気持ちを呼び起こす部分で、両方が必要です。

白鳥が赤ちゃんで、まだ泳ぎを母親に教わる前は水面下の技術は不完全ですし、同時に水面上のホスピタリティも存在しません。それに気づいた時に思いました。ホスピタリティ・スキルを見出して雇うのも重要ですが、一方で、この技能・技術は我々がしっかり教えてあげる必要があるのではないかと。

これは車の運転とも似ています。初めてマニュアル車を運転する時は、シフトをどこに入れるのかということで頭の中はいっぱいです。でも運転に慣れると、もう技術面に神経を使わなくなり、ホスピタリティを発揮できる。同乗者と楽しい会話ができるようになり、音楽を楽しむことができ、道の景色を楽しむこともできるようになります。

私はこのことを失敗を通じて学びました。バーベキューレストラン『ブルー・スモーク』を開いた時、カジュアルな雰囲気にしようと思い、ジーンズとTシャツのウエイター、ウエイトレスを入れました。ホスピタリティさえあればいい、別に高級レストランじゃないんだから、と思っていました。

オープン2週間で不安を感じました。ウエイターはワインの違いもわからないし、テーブルは間違えるし、オーダーは間違える。これは初めて車を運転する人と同じミスです。HQが高い人ばかりでしたが、ちゃんと技能を教えてあげなかったのでホスピタリティを発揮するところまでいかなかったのです。

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おもてなしの天才
全米屈指のレストラン『ユニオン・スクエア・カフェ』の創業者が語る
ホスピタリティ・ビジネスの本質
Danny Meyer (ユニオン・スクエア・ホスピタリティグループ(USHG)の最高経営責任者)

「ニューヨークで最も予約が取れないレストラン」として名を馳せるユニオン・スクエア・カフェの創業者ダニー・マイヤー氏は、27歳で起業して以来、ニューヨーカーを惹きつけて止まない数々のレストランビジネスを成功させてきました。 「おもてなしの心がもつ力を理解し、うまく活用したいという思いが、成功の鍵とな....


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