記事・レポート
宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい
更新日 : 2009年03月19日
(木)
第7章 ミュージカルのつくり方

<strong class="name">宮本亜門: </strong>ではミュージカルというのは、どうつくっていくのかという話をしましょう。ブロードウェイでは大体平均して1つの作品に5年かかっています。
まず、作詞家、作曲家、台本作家、時たま演出家も含め3人ぐらいが出会い、「どういう題材で、どういう作品にしようか」という話し合いが始まります。そして1年ぐらい、誰もお金も一銭も払ってくれないなかで、つくり上げます。
そして「リーディング」をやります。それは、今のような状態です。マイクがただ何台かあるだけで、譜面を前に置きながら、プロの出演者たちに台詞を読み、歌を歌ってもらう。一切動きはなしです。プロの出演者はお昼、空いていることがあるんです。夜はブロードウェイの公演があるのですが、空いている昼間、彼らを安いお金で雇ってやってもらうのです。
リーディングを見に来るのは、バンカーです。将来スポンサーになる人たち、あるいは投資をするかもしれない人たちのことです。そういう人たちが「これは売れるだろうか」と、うまくいくかどうかを見に来るわけです。
このようなリーディングというのを、ニューヨークではほとんど毎日いくつかやっているといってもいいでしょう。プロデューサーが、狭い部屋で台詞と歌を長時間聞いて、未来の名作を探し当てるのです。
そして今度は振り付け師など、動きをつける人たちが入ってきて「ワークショップ」をやります。大体これが1年半後ぐらい。ワークショップは、リーディングの部屋よりは広い稽古場でやります。何カ所かダンスナンバーが入り、お芝居も少し入ります。そのような段階を3、4回踏んでいくわけです。
そして「さあ、いよいよ、上演へ」というところで、セット、衣装、舞台をつくるわけですが、つくって最初にブロードウェイにいくということは、ほとんどありません。よほどお金がある大制作会社なら別として、普通、ブロードウェイには直接行かないのです。
まず、アメリカツアーです。地方都市の劇場と提携して、何カ所かで観客の反応を見ていくわけです。それによって作品の面白さを高めてゆく。演出家や台本作家は後ろの方で観て、細かく書き直す。そういう経験を踏んで、いよいよ、ブロードウェイに行くのです。
宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい インデックス
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第1章 「ごめんね。僕ね、悪いけど、最後まで怒らないから」
2009年01月14日 (水)
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第2章 なぜ演出家になったのか
2009年01月23日 (金)
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第3章 「初めてのブロードウェイは怖かった。でも劇場は温かかった」
2009年02月02日 (月)
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第4章 『アイ・ガット・マーマン』の初上演前日に起きた9.11
2009年02月23日 (月)
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第5章 夢にまでみたブロードウェイが『太平洋序曲』で現実に
2009年03月05日 (木)
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第6章 世界で活躍する日本人クリエーターが少ない悔しさ
2009年03月12日 (木)
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第7章 ミュージカルのつくり方
2009年03月19日 (木)
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第8章 プロデューサーの熱い想いがブロードウェイを支えている
2009年03月30日 (月)
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第9章 「舞台はライブ。劇場でなければ得られない体験がある」
2009年04月09日 (木)
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第10章 沖縄が教えてくれたもの。瞬間、瞬間を大切に生き抜きたい
2009年04月30日 (木)
該当講座
宮本亜門 (演出家)
2004年、東洋人初の演出家としてニューヨークのオンブロードウェイにて「太平洋序曲」を上演した宮本亜門氏。演劇・ミュージカル界で最高の栄誉とされるトニー賞4部門にノミネートされ、米国の演劇界でも高い評価を得ました。 その後も次々に国内外で作品を発表し、常に新しい表現を試みるとともに、テレビ番組出演....
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