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ビジネス・チャレンジ・シリーズ
「分身ロボット」がつなぐ未来

人工知能にはできない「孤独の解消」を目指す

更新日 : 2017年11月14日 (火)

第3章 OriHimeで、誰もが社会参加できる世界を


「情報」と同様、「存在」にも価値がある
分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」


吉藤健太朗: 遠隔コミュニケーションなら電話やテレビ電話もあります。しかし、もし、私が花火大会に出掛けた友だちに電話をしても、相手は「なんの用?」と聞き、用件がなければ切るでしょう。テレビ電話も用事がなければ30分と持たないですよね。電話やテレビ電話は要件を伝えるには向いていますが、「その場に一緒に居る」ためのディバイスではないからです。

ごく自然に一緒に居られて、なおかつ、その人の存在を感じさせるディバイス。それが分身ロボットOriHimeです。形状はごくシンプルです。ここに至るまでいろいろと試行錯誤をしました。伝達する情報量を増やすために「歩くiPhone」をつくったり、その人そっくりの顔をシリコーンでつくり、超リアルな分身ロボットにしてみたり、犬型のOriHimeをつくったり……。

結局、能や文楽にヒントを得て、現在のシンプルな形状になりました。能は、ひとつの能面でいろいろな想いを表現します。人形浄瑠璃の人形もまるで命あるもののように見えます。それは観る人が想像力を働かせるからです。演劇の世界も学び、「情報は少ない方が人間の想像力が働く」ことがわかりました。

「情報」に価値があるように、「存在」にも価値があると私は思います。存在感を伝達することは大きな価値になるはずです。オリィ研究所は、世界で唯一の存在感伝達ベンチャーです。

ALS患者との共同研究/難病でも社会参加できる



吉藤健太朗: ALS(筋萎縮性側索硬化症)は筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患です。原因も有効な治療法もまだ見つかっていません。進行が速く、半数ほどが発症後3~5年で呼吸筋麻痺になり、人工呼吸器を付けないと死亡します。しかし、一度付ければ会話はできなくなり、外すこともできません。そのため、人工呼吸器を付けて生きることを選択する人は、日本で3割弱、世界では1割にも満たないそうです。

2013年から、ALS協会や患者らと神経信号や目の動きだけで操作できるインターフェースの共同研究をしています。身体の自由や声を失っても、目や神経など残った機能で操作することで、OriHimeを通じて意思を伝えたり、会話をしたり、仕事をすることができるようになりました。
元メリルリンチ日本証券会長の藤澤義之さん(故人)もALSで寝たきりでしたが、この研究に参加してくれました。OriHimeを通じて「吉藤君、お金は大丈夫かね」「チームビルドは大切だよ」などと助言してくれるようになり、オリィ研究所の顧問にもなっていただきました。他にもOriHimeを使いこなして仕事を続けている国家公務員や、作品を描き続けている画家、日々SNSに記事を投稿して社会とのつながりをもっている方もいます。

日本でエンジニアとして働いていたアーレさんは、若くしてALSを発症し、家族と母国•ノルウェーに帰国しました。ノルウェーでもOriHimeを使って仕事をし、家族との団らんを続けています。「2人の娘に父親のいない人生を歩ませたくない。私は、父親としての役割を全うしたい」。この家族の様子はノルウェー国営放送局で放送されました。

誰かに必要とされたとき、孤独は解消される

吉藤健太朗:  「誰かの役にたっている」、「誰かに必要とされている」という自己肯定感によって、孤独は解消されるのだと思います。こうした関係性がある限り、人間は生きていけるし、人間たりうる。どんな状態になっても、テクノロジーを使ってそうした関係性を実現していきたいと思っています。



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今回のビジネス・チャレンジ・シリーズでは、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発する吉藤健太朗氏をゲストにお招きします。町工場との協働で「OriHime」を製品化させてきた吉藤氏に、独自にビジネスを開拓してきた経緯をお話いただくことで、新しいビジネスを始める上でのヒントを得ます。


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