記事・レポート
日本元気塾セミナー
小さな一歩が世界を変える!
「医療」「教育」で世界を変えるニッポン人
更新日 : 2016年06月29日
(水)
第6章 ミャンマーの子ども達に教育を届ける
活動の主役は普通の大学生
三輪開人: e–Educationのプロジェクトを動かしているのは、大学生です。皆さんの隣にいるようなごく普通の学生達が、今日も世界中で活躍しています。
例えば、ミャンマープロジェクトを担当した小沼武彦。いじめによって学校がきらいになり、高校では学年ビリの成績もとっていた彼は、その後進んだ大学で生涯の恩師と出会います。「この世界には、正解が1つでないことがたくさんある。色々な角度から世界を見てみよう」。そう言われた彼は初めて勉強の面白さを知り、アメリカの大学に留学します。東日本大震災の際は、留学先で支援活動プロジェクトも行っていました。
しかし、3年になり就職活動が始まると、大きな壁にぶつかります。教育の魅力を知り、困っている人の力になりたいとも考えていた彼は、自分のやりたいことが見つけられなかったのです。その時に偶然出会ったのがe-Educationのメンバー募集でした。休学して参加した彼は、1人でゼロからプロジェクトを立ち上げられる場所を希望し、未開拓だったミャンマーを選びます。
事前にインターネットで調べたものの、民主化への途上にあったミャンマーに関する情報はほとんど得られない。そこで2013年3月、彼は単身ミャンマーに乗り込み、現地のお寺に泊まり込みながら大学や高校、農村にある寺子屋などを回り、現地の情報や教育ニーズを集めていきました。その結果、様々な場面において英語が重要視されていることがわかり、これをプロジェクトの中心に据えることにしました。
ミャンマーにも英語の先生はいましたが、大半はきちんと教えてくれません。先生の給料はとても安く、それだけでは暮らせないため、学校が終わった後にプライベートの塾を開き、副収入を得ています。結果、貧しい子どもはより良い教育が受けられなくなっていました。
その一方で、「こうした状況を変えたい」と考える先生もたくさんいました。バングラデシュと同様、ミャンマーも大学に入るために予備校に通う習慣があります。そこで、予備校を中心に色々な先生を探し回る中で、高校生の英語教育カリキュラムを作成している先生など、一流講師から無償で協力を仰ぐことができ、途中からは化学や物理の先生も加わり、DVD授業の映像制作が進みました。
完成したDVDを、首都ヤンゴンから数百km離れた電気も通らない村に届けたことがありました。竹や木で作られた家が並び、教育施設は小さな寺子屋だけ。村で暮らす高校生は、ボートで1時間かかる場所にある学校に通っていました。1人に1台パソコンを提供できないため、最初はプロジェクターを使いました。映像が流れる前、大声で騒いでいた学生達は、映像が流れると同時に一斉に静まりかえり、画面を見つめていました。
ミャンマーには「セーダン試験」というものがあります。これは高校卒業資格と、日本のセンター試験のような大学試験がセットになったもので、成績優秀者は大学に進学できます。しかし、合格率はミャンマー全体で平均3割。しかも、地方の学生に限れば、合格率は10%まで下がります。そうした状況の中、小沼武彦が奮闘した最初の1年目は数人の合格者を出すことができました。
該当講座
小さな一歩が世界を変える!
~「医療」×「教育」で世界に挑戦する日本人イノベーター~
吉岡秀人(小児外科医・ジャパンハート)×三輪開人(e-eduication)米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
社会的変革で途上国を変えようとする日本人イノベーターがテーマ。吉岡氏と三輪氏はミャンマーで出会い「医療」×「教育」で新しいイノベーションを引き起こそうとしています。“入院中の子供たちに映像による教育を提供する”ことにより子供たちに将来、未来、夢をもたらすことです。今までの各々の活動、そして新しい出会いがもたらした新たな取組みの可能性、社会的インパクトについて多面的に考えます。
日本元気塾セミナー
小さな一歩が世界を変える!
インデックス
-
第1章 医療の届かないところに医療を届ける
2016年06月13日 (月)
-
第2章 目の前の患者にすべてのエネルギーを注ぐ
2016年06月13日 (月)
-
第3章 日本の「外」にある医療の現実
2016年06月13日 (月)
-
第4章 21世紀のMade in Japanを世界へ
2016年06月13日 (月)
-
第5章 最高の授業を世界の果てまで届けよう
2016年06月29日 (水)
-
第6章 ミャンマーの子ども達に教育を届ける
2016年06月29日 (水)
-
第7章 ジャパンハートとe-Educationの出会い
2016年06月29日 (水)
-
第8章 誰もが参加しやすい仕組みをつくる
2016年07月06日 (水)
-
第9章 チャンスのバトンを次世代に受け継ぐ
2016年07月06日 (水)
-
第10章 ワクワクする未来は新しい一歩から始まる
2016年07月06日 (水)
注目の記事
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」
-
開催日 : 11月14日 (木) 19:00~20:30
「あたりまえ」のつくり方
「テクノロジー」、「ダイバーシティ」、「サステナビリティ」という3つの世界的潮流が押し寄せる中、これまで以上に本来のPRが持つ「新しいあたり....