記事・レポート
日本元気塾セミナー
小さな一歩が世界を変える!
「医療」「教育」で世界を変えるニッポン人
更新日 : 2016年06月13日
(月)
第4章 21世紀のMade in Japanを世界へ
思いがあるなら、全員集まれ!
吉岡秀人: 1995年、僕が1人で始めた活動は、2004年にジャパンハートというNPOに形を変え、現在はラオス、カンボジア、インドネシア、フィリピン、タイ、さらに日本の東北地方やへき地・離島にも広がっています。これらの活動を支えているのは、「自分も何かしたい!」と手を挙げてくれた日本の医者や看護師です。現在は年間500人以上がジャパンハートの活動に参加し、国内外で活躍してくれています。
逆に言えば、これほどのマンパワーが従来、日本の中に眠っていたわけです。その理由は大きく2つあります。1つは「英語ができない」という気持ち。もう1つは、「自分はまだ若いから」「技術が未熟だから」という気持ちです。
「海外で働く、イコール英語が必要」と考える人は多いですが、実は都市部を除けば、アジアの大半の地域では現地語が使われています。つまり、通訳さえいれば、会話が成立します。ジャパンハートの参加条件にも「英語が話せる」という条件はありません。したがって、英語が必要と考えている人がいるのなら、それは大きな間違いです。
もう1つ、「若いから」「技術が未熟だから」という考えも間違いです。医療を受けられない人達にとっては、若いかどうかなど関係ありません。医者がそこにいてくれるだけで有り難いのです。僕は常にこう言っています。「ジャパンハートはキャリアも語学力も不要。子ども達を助けたい、医療を受けられない人のために働きたいと思う人は、全員来てくれ」と。
参加者が増えるほど多くの人が助かる
吉岡秀人: ジャパンハートの医療活動に参加する場合、僕達は参加者からお金をいただいています。例えば、数日間の休暇を利用して海外の活動に参加する場合、数万円をいただきます。このお金は、参加者が現地で行う医療活動にかかる費用として使われます。また、現地での宿泊や食事は面倒を見ますが、それ以外の渡航費や保険などについては自己負担です。
「自腹でも参加したい人は来てくれ」と声をかけたところ、500人も集まり、その数は年々増えています。参加者は大きなやりがいを感じ、朝から晩まで一生懸命働いてくれます。それによって、いままで医療を受けられなかったたくさんの人達が、医療を受けられるようになる。つまり、参加者が増えれば増えるほど、多くの人達に利益が生まれる仕組みとなっています。
現在はこの取り組みを発展させ、2年に1度の頻度で大規模災害が起こるASEANにおいて、新たな国際緊急救援の仕組みを作っています。インドネシアに拠点を置き、大規模災害が起こった際は、海外にいるジャパンハートの医療者をいち早く派遣するというものです。
2013年11月に起こったフィリピンの巨大台風被害では、2日後には我々のスタッフが現地に入りました。僕らが行った時はカナダの軍隊しかおらず、1週間後にようやく世界中から救援チームがやってきました。災害時の緊急救援は何よりもスピードが重要です。ASEANに数百人規模の医療者ネットワークを持つジャパンハートだからこそ、このスピードで対応できるわけです。
2015年3月には、インドネシア政府と一緒に、緊急救援に関する合同訓練も行っています。同国政府直轄の全国的な市民防災団であるTAGANA(タガナ)、現地NGO、アジア各国に散らばるジャパンハートのスタッフが一堂に会し、災害時の危機管理のあり方を学び、大規模な演習も行いました。
日本のことをよろしく
吉岡秀人: 1995年、僕がミャンマーで最初の拠点とした町は、かつて日本とイギリスが大激戦を繰り広げた場所でした。そのため、あちこちに慰霊碑が建っており、僕は何度もそこを訪れました。
彼らは日本を守るという大義のためにここに来て、死んでいった。しかし、死ぬ直前は何を考えていたのか? 僕は慰霊碑に刻まれた無数の名前を見るたびに、考えました。学校を卒業したばかりの若者、新婚の人、小さな子どもを残してきた人もたくさんいたはずです。やがてそれは、「彼らの思いを1つにまとめたら、どのような言葉になるのか?」という問いに変わりました。
僕の胸にわいてきたのは、「日本のことをよろしく」という言葉でした。1995年の日本を生きる若者達は、夢や希望に燃えて生きているか? 彼らにそう問われたとしても、僕は胸を張って「はい」とは言えませんでした。それからは、彼らの思いに応える方法を必死に考えました。
僕にできることは、ジャパンハートの活動を通じて、多くの若者を立派に育てて日本に送り返すことだと思いました。患者やその家族の人生まできちんと理解して寄り添い、心を救うような医療が行える人を育てる。人間は肉体が救われても、心が救われなければ、幸せにはなれないから。それが「日本のことをよろしく」という言葉に対する僕なりの答えです。
もう1つ。かつて日本が世界に誇ったMade in Japanは、質の高い日本のプロダクトに与えられた称号でした。しかし、21世紀のMade in Japanは、日本で生まれた仕組みや組織、人そのものに与えられる。そこを目指すべきだと考えています。日本ならではのMade in Japanを世界中に届けることが、いまの僕の願いです。
該当講座
小さな一歩が世界を変える!
~「医療」×「教育」で世界に挑戦する日本人イノベーター~
吉岡秀人(小児外科医・ジャパンハート)×三輪開人(e-eduication)米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
社会的変革で途上国を変えようとする日本人イノベーターがテーマ。吉岡氏と三輪氏はミャンマーで出会い「医療」×「教育」で新しいイノベーションを引き起こそうとしています。“入院中の子供たちに映像による教育を提供する”ことにより子供たちに将来、未来、夢をもたらすことです。今までの各々の活動、そして新しい出会いがもたらした新たな取組みの可能性、社会的インパクトについて多面的に考えます。
日本元気塾セミナー
小さな一歩が世界を変える!
インデックス
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第1章 医療の届かないところに医療を届ける
2016年06月13日 (月)
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第2章 目の前の患者にすべてのエネルギーを注ぐ
2016年06月13日 (月)
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第3章 日本の「外」にある医療の現実
2016年06月13日 (月)
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第4章 21世紀のMade in Japanを世界へ
2016年06月13日 (月)
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第5章 最高の授業を世界の果てまで届けよう
2016年06月29日 (水)
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第6章 ミャンマーの子ども達に教育を届ける
2016年06月29日 (水)
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第7章 ジャパンハートとe-Educationの出会い
2016年06月29日 (水)
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第8章 誰もが参加しやすい仕組みをつくる
2016年07月06日 (水)
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第9章 チャンスのバトンを次世代に受け継ぐ
2016年07月06日 (水)
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第10章 ワクワクする未来は新しい一歩から始まる
2016年07月06日 (水)
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