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石井裕:理念駆動~タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ
MIT Media Lab CREATIVE TALKより

時代を超えるビジョンが、独創未来を創る

キャリア・人グローバル
更新日 : 2014年01月20日 (月)

第7章 18年かけてたどり着いたビジョン

石井裕(MITメディアラボ副所長、TTTコンソシーム・コディレクター、タンジブル・メディア・グループ・ディレクター、Jerome B. Wiesner Professor of Media Arts

 
ビジョンを表現する壮大なツール

石井裕: 最新の研究成果が「inFORM」です。2013年春、ようやく2年越しで完成しました。1,000本のピンをコンピューテーションで操作することで、情報をタンジブルなものとして自在に表現します。従来のフラットなGUIとまったく違う、マテリアルそのものがダイナミックに踊り出す世界が生まれました。

いままで存在しなかった、新しいコンピューテーションのマテリアルです。この新しい踊る粘土を使うことで、どのような情報の表現、インタラクションが可能になるのか。これがいま最もエキサイティングな、私たちの研究テーマです。

inFORMは、MITメディアラボにしか存在しません。技術的制作がとてつもなく大変だからです。1,000本ものピンを自在に動かせるようになるまでには、多くの試行錯誤を重ねました。しかし大切なことは、テクノロジーを生み出すことが目的ではなく、ラディカル・アトムズという壮大なビジョンを表現するメディアとしてこのinFORMを作ったということです。したがってinFORMは、目的でなく、あくまでもRadical Atomsというビジョンの可視化の手段に過ぎないわけです。

重力から解放されたマテリアル

石井裕: 私たちはその先まで考えています。たとえば、地球には重力があります。重力により地面に引っ張られている限り、頭の上にある広大な空間に思いを巡らすことは滅多にありません。ならば、重力ゼロの状況を可能とする、新しいマテリアルを作ろうと考え、我々が生み出したのが「ZeroN」と呼ぶ、空中に浮揚する新しいマテリアルです。

球を空中に置くと、宙に浮いたまま、そこにとどまります。さらにコンピュータが正確な位置を把握し、コンピュータが球を意図した場所に動かしたり、回転させたりできます。人間もそれを動かすことができますし、このZeroNにより、天文力学における三体問題、ケプラーの法則=面積速度一定の法則などのシミュレーションができる。あるいは、月や太陽の陰影もシミュレーションできるようになります。

我々人間は、重力があることを当たり前だと考えていますが、重力がなかったとしたら、どのようなことが可能になるのか。情報を従来のピクセルというインタンジブルな世界から解き放ち、新しいフィジカルなドメインに持ち込むことにより、頭の上に広がる無限の空間に思いを巡らすことができるようになる。すなわち、新しいデザインのための空間=可能性が生み出されるわけです。

私たちは、バッテリーの寿命を延ばすといった、私たち以外でも解決できる専門家がたくさんいる研究は、基本的に行いません。誰も考えなかったようなビジョンを通して、新しいデザインのための空間を作り上げることに集中したいのです。

GUIのピクセルは、依然として有力な情報表現ですが、情報はフラットなスクリーンの裏に閉じ込められている。しかし、情報とはダイナミックなものです。それを物質的に表現するために「タンジブル・ビット」というビジョンを1997年に提唱しました。そして、シャイなアトムたちをも踊らせるために、「ラディカル・アトムズ」というビジョンにたどり着いたわけです。私の18年間のVision-Driven(理念駆動)によるデザインリサーチの軌跡です。


石井裕:理念駆動~タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ
MIT Media Lab CREATIVE TALKより インデックス


該当講座

理念駆動:タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ

Vision-Driven: From Tangible Bits Towards Radical Atoms

理念駆動:タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ
石井裕 (MITメディアラボ副所長、TTTコンソシーム・コディレクター、タンジブル・メディア・グループ・ディレクター、Jerome B. Wiesner Professor of Media Arts and Sciences)
林千晶 (株式会社ロフトワーク 代表取締役/MITメディアラボ所長補佐)

石井 裕(MITメディアラボ副所長)
林 千晶(㈱ロフトワーク代表取締役/MITメディアラボ所長補佐)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第3回は、副所長の石井氏にお越しいただきます。メディア・アート、インタラクション・デザイン、そしてサイエンス・コミュニティーにおいて、石井氏らが発表してきた多様なプロジェクト例を紹介しながら、「タンジブル・ビッツ」から「ラディカル・アトムズ」へと至るビジョン駆動研究の発展の軌跡を描写します。


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