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「日本発、世界」を視野に動き出したNHN Japanの経営戦略

~森川亮氏に聞く、スマホ&ソーシャル時代を勝ち抜く経営~

BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2012年12月07日 (金)

第8章 携帯電話に学ぶ普及ポイント~付加価値より基本の価値~

写真左:神原弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長)写真右:森川亮(NHN Japan 株式会社 代表取締役社長)

神原弥奈子: mixiは日本、Facebookはアメリカ、orkutはブラジル圏というように、SNSはその国の文化に根差したものが強いという印象がありましたが、それを「LINE」はパッと取り払って入っていったような印象があります。森川さんは、それぞれの国の文化やコミュニケーションのバックグラウンドにあるものと、SNSの関係をどのようにご覧になっていますか。

森川亮: たしかにSNSはそういうイメージがあるかもしれませんが、メールや電話に国境って関係ないですよね。メッセージの基本は、SNSの前にメッセージングです。「LINE」はそれをベースにしたので、国境を超えて広がったのだと思います。もちろん、スマートフォンだから、そもそも国境の必然性がないということもありますが。「日本ならでは」とか「日本固有のもの」を入れ過ぎないようにしないといけないと思っています。
 
神原弥奈子: 確かにe-mailと同じようなシンプルさが「LINE」にはありますね。そういう意味では、ほかのSNSが複雑化し過ぎているのでしょうか?

森川亮: 一般的に、FacebookやTwitterは何か発表するものを持っている人にとっては価値が高いと言われています。ROMユーザー(リードオンリーの人)にとっては、ある意味ウザイものになっているのかもしれません。

日本では以前から「匿名か実名か」という議論がありましたが、知っている人とのコミュニケーションがベースにある上での広がりだと思うんです。「LINE」は身近な人とのメッセージングを軸に、必要な機能だけを追加していくつもりです。

神原弥奈子: 「LINE」は次から次に新機能がついていくのではなく、みんながリアルのソーシャルグラフの中で必要とするような機能がゆっくりついていく感じですか?

森川亮: そうなると思います。例えば、携帯電話はいろいろな機能があったから普及したわけではなく、「外で電話できる」という、それだけの価値で普及したわけですよね。「LINE」も「気軽にメッセージを送れる」という価値だけでもまだまだ伸ばせると思っています。

神原弥奈子: 今後「LINE」の類似サービスが他社からどんどん出て来ると思いますが、どう対応していく予定ですか?

森川亮: ベースは最高のサービスにすることですね。この手のサービスは、機能が増えたり、重くなったりすると人が離れていきます。何か儲けようとすると邪心が出て、その邪心が表に現れて人が離れていくと思います。僕たちの会社は、ある程度の歴史がある分、成功よりも失敗してきた経験のほうが多いので、そういう失敗はしないように気をつけています。

神原弥奈子:  きょうは森川さんに、経営面のお話を伺いました。今「LINE」で注目されていますが、NHN Japanさんは、もう10年以上日本で頑張っている会社で、特に森川さんが社長になられてからの成長は著しいものがあります。IT業界の企業の多くが「変化に対応するのが難しい」と感じている中で、これだけの注目を集め、成長し続けている森川さんのお話には、私も大変刺激を受けました。本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。(終)


該当講座

「日本発、世界」を視野にいよいよ動き出したNHN Japan トップ森川亮氏に聞く経営戦略
森川亮 (C Channel株式会社 代表取締役)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

森川亮 (NHN Japan 株式会社 代表取締役社長)
「ハンゲーム」、「NAVERまとめ」など次々にヒットを生み出すNHN Japan。代表の森川氏にソーシャル、そしてスマートフォン時代に経営者として、今後どのように舵をきっていくのか、その戦略に迫ります。サービスのマネタイズ化、競争の激しいネット業界での人材の確保、海外企業との提携など今後のグローバル展開や、ソーシャルゲーム業界の課題を含めた、国内外ネット業界全体の“いま”についてもお話頂きます。


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