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メディア化する企業はなぜ強いのか? 小林弘人氏が解説します

BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2012年07月24日 (火)

第4章 ユーザーにどんな情報を提供すればいいのか?

小林弘人(株式会社インフォバーン代表取締役CEO/株式会社デジモ 代表取締役 ソーシャル・トイ・ビジョナリー)

小林弘人: ユーザーにどんな情報を提供すればいいのかというと、1つは「自社発のストーリー」です。スペックだけ並べても共感は得られません。共感には物語の冗長性が必要です。だから自社発の物語を物語るのです。

「業界すべてを覆うストーリー」も有効です。特に、そのサービスや商品が革新的で一般的に認知されていないものに効きます。例えばリカンベントという、寝そべるような形で漕ぐ自転車がありますが、リカンベント専門メーカーは、まずはリカンベントを多くの人に知ってもらう必要がありますよね。だったら自社とか他社とか関係なく、リカンベントの啓蒙メディアとなって業界すべてを覆ってしまえばいいのです。これは先行すればするほど他社より優位に立てるし、他社に声をかけて一緒にやることもできます。

それから「ユーザーのインサイト(ユーザーがすでに持っている欲求やニーズ)をくみとってあげたストーリー」があります。これは住宅メーカーが得意で、「ちょっとリフォームしようかな」といったぼんやりしたインサイトを顕在化させ、それをストーリーに反映させることで、そういう人に来てもらえるメディアにしています。

「ユーザーがつくる自社関連ストーリー」というのもあります。歴史が長くて、ブランドが確立していたら、ある程度コアなファンがいるはずです。その人たちにストーリーをつくってもらうのです。企業はそうした熱狂的なファンを支援すればいいのです。

「自社ユーザーが欲するライフスタイル情報」として、商品やサービスの話だけでなく、ターゲットユーザーのライフスタイルを「どんな服を着ているのか?」とか「休日はどんなふうに過ごしているのか?」と思い描き、その人たちに向けた情報を雑誌のように提供する方法もあります。

当然ながら「個別のサービス・商品に関連するストーリー」を物語ることは大事です。サントリーのお茶「伊右衛門」は、ドラマ仕立てで商品の世界観を上手に紹介しています。

「潜在的なユーザーを惹く自社関連ストーリー」もあります。これはまだユーザーになっていない人に対して自社のサービスや商品を提供するやり方で、ちょっと長いスパンが必要になります。例えばアメリカン・エキスプレスは、大学生向けに「カレンシー」というサイトを立ち上げて、卒業して就職したときにアメックス・カードを持ってもらえるように金融情報を提供しています。

こうしたものをつくるときは、自社に転がっている無料の情報をなるべく使うようにしましょう。基本的に、その業界では当たり前の話が、業界外では受ける場合もあります。ただしコンテンツを企画書のように並べるだけでは、やっぱり電子チラシになってしまいます。電子チラシにならないために、メディア化するという意味がよくわかる、おもしろい事例を1つ紹介します。

大手ゼネコンの前田建設工業には「前田建設ファンタジー営業部」という架空の営業部があります。これはウェブ用のコンテンツで、SFアニメに登場するバーチャルな建築物を、もし前田建設が受注したらどうつくるかを部員たちが話し合うという内容です。ちゃんと見積や工期を出し、建築のディテールにもこだわっているなど、読むとクスクス笑えます。

これがすごいのは、ただ笑えるだけでなく、例えば『マジンガーZ』に登場するプール下のロボット格納庫をつくるときは「アクアラインの海ほたるを掘ったときの工法が使えるんじゃないか?」というような事例が話の中に出てくるので、読み終わるころには、読者は前田建設工業の技術や実績について、すごく詳しくなっているんです。

人気コンテンツで、他社から一緒に組みたいというオファーが来て、架空の業務提携が発展して、実際のコラボレーションになったこともあるそうです。さらにはリクルーティングのときに「前田建設工業に入りたい」と名指しで来る応募者も増えたそうです。これは非常によくできたIRになっています。

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小林弘人
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メディア化する企業はなぜ強いのか?

~小林弘人氏に聞く、フリー、シェア、ソーシャルを活用して企業が成功するポイント~

メディア化する企業はなぜ強いのか?
小林弘人 (株式会社インフォバーン代表取締役CEO、東京大学大学院・情報学環 非常勤講師)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

小林弘人(インフォバーン代表取締役CEO)
「ワイアード」「サイゾー」などの紙媒体、「ギズモード」などのネットメディアの両方を手がけてきた、出版業界からインターネット業界にまたぐオピニオンリーダー、小林氏をゲストにお迎えします。


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