記事・レポート
柴田励司氏が語る、いつかなりたい自分になるためのヒント
『どうしてあのヒトは、デキるのだろう。』
更新日 : 2010年12月13日
(月)
第3章 「残業は問題だ」の問題とは何か?

柴田励司: THROUGHPUTとは、「様々な情報をいかに構造化するか」ということを意味しています。ある課題を解決するための議論がかみ合わない、そんなケースについて考えてみましょう。こんなとき、たいていは課題が構造化されておらず、各人の指し示す課題の定義が異なっているのです。
わかりやすい例が残業の問題です。「残業が問題だ」という意見はよく聞かれますが、その言葉だけでは具体的に何を問題としているのかが明確ではありません。人によって問題は違う可能性が高いのです。
例えばある人は「人件費が問題だ」と思っているのかもしれないし、別の人は「過労で健康を害する」ことを心配しているのかもしれない。あるいは最近の報道から「名ばかり管理職の問題として訴えられる」ことを心配しているのかもしません。もしかしたら、忙しすぎて教育にかける時間がないために「人材が育たない」ことが問題なのかもしれないのです。このように、残業一つとっても様々な問題が考えられるわけです。
ですから、課題に直面したら、まずはその課題は何であるかという定義を明らかにすることが大切です。そして、「その問題を放置しておくと、どんな悪いことが起こるのか」を具体的に詰めていくと、たいていの課題は明らかになります。
その次に、根本的な原因は何であるのかを知り、対策しましょう。ここでは古典的な「Why so?」が必要です。私の経験では、5回程度「なぜ?」と聞くと根本的な原因にたどりつき、問題の構造化が可能になります。
そして、最後がコストです。課題があり、対策を考え、コストを示すわけです。金額を提示する際には、その先のリスクまで見据えた数字を用います。例えば、ある課題を解決するために3億円かかるとします。しかし3億円という数字は決して小さくありませんし、このご時勢ではなかなか予算が認められないでしょう。そんなときはストレートに「3億円が必要です」とは言わずに、「この問題を放置しておくと、この先3年間で30億円の機会損失になる可能性があり、それを3億円かけて直す」と示せば、「30億のマイナスに対する3億」となり、提案が通る可能性が高まります。
ここまできたら実際にAction Planをつくります。もちろんAction Planは関係者に受け入れられるものでなければなりません。そこで、関係者の顔を思い浮かべて、どういう形であれば、みんなが受け入れられるかを考える「Paradox Thinking」の出番です。
例えば「残業20%削減」が決まった場合、これは経営者にとっては人件費削減を意味しますが、管理職にとっては自分の負担が増えるかもしれないという不安につながります。一般の従業員は賃金が減ることを危惧するでしょう。Paradox Thinkingとは、1つの意思決定やアクションが、関係者にどういう影響を与えるかを考えながら落としどころをつくることです。
ここまでやってはじめて、最善策であるPlan-Aができるのです。ところが世の中とは不条理なもので、Plan-Aがダメになるケースも少なくありません。ですから、代替案のPlan-Bも用意しておく必要があります。Plan-Aで100進むはずのものが、Plan-Bでは50しか進まないかもしれません。それでも、たとえ50でも前に進んだほうがいいという考え方がPlan-Bです。
わかりやすい例が残業の問題です。「残業が問題だ」という意見はよく聞かれますが、その言葉だけでは具体的に何を問題としているのかが明確ではありません。人によって問題は違う可能性が高いのです。
例えばある人は「人件費が問題だ」と思っているのかもしれないし、別の人は「過労で健康を害する」ことを心配しているのかもしれない。あるいは最近の報道から「名ばかり管理職の問題として訴えられる」ことを心配しているのかもしません。もしかしたら、忙しすぎて教育にかける時間がないために「人材が育たない」ことが問題なのかもしれないのです。このように、残業一つとっても様々な問題が考えられるわけです。
ですから、課題に直面したら、まずはその課題は何であるかという定義を明らかにすることが大切です。そして、「その問題を放置しておくと、どんな悪いことが起こるのか」を具体的に詰めていくと、たいていの課題は明らかになります。
その次に、根本的な原因は何であるのかを知り、対策しましょう。ここでは古典的な「Why so?」が必要です。私の経験では、5回程度「なぜ?」と聞くと根本的な原因にたどりつき、問題の構造化が可能になります。
そして、最後がコストです。課題があり、対策を考え、コストを示すわけです。金額を提示する際には、その先のリスクまで見据えた数字を用います。例えば、ある課題を解決するために3億円かかるとします。しかし3億円という数字は決して小さくありませんし、このご時勢ではなかなか予算が認められないでしょう。そんなときはストレートに「3億円が必要です」とは言わずに、「この問題を放置しておくと、この先3年間で30億円の機会損失になる可能性があり、それを3億円かけて直す」と示せば、「30億のマイナスに対する3億」となり、提案が通る可能性が高まります。
ここまできたら実際にAction Planをつくります。もちろんAction Planは関係者に受け入れられるものでなければなりません。そこで、関係者の顔を思い浮かべて、どういう形であれば、みんなが受け入れられるかを考える「Paradox Thinking」の出番です。
例えば「残業20%削減」が決まった場合、これは経営者にとっては人件費削減を意味しますが、管理職にとっては自分の負担が増えるかもしれないという不安につながります。一般の従業員は賃金が減ることを危惧するでしょう。Paradox Thinkingとは、1つの意思決定やアクションが、関係者にどういう影響を与えるかを考えながら落としどころをつくることです。
ここまでやってはじめて、最善策であるPlan-Aができるのです。ところが世の中とは不条理なもので、Plan-Aがダメになるケースも少なくありません。ですから、代替案のPlan-Bも用意しておく必要があります。Plan-Aで100進むはずのものが、Plan-Bでは50しか進まないかもしれません。それでも、たとえ50でも前に進んだほうがいいという考え方がPlan-Bです。
関連書籍
どうしてあのヒトは、デキるのだろう。
柴田励司PHP研究所
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2010年12月13日 (月)
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