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旨い、美味しい !?

読みたい本が見つかる、「カフェブレイク・ブックトーク」

更新日 : 2010年09月22日 (水)

第7章 <美味礼讃>

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍

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「食の宇宙は広範で、3D」

澁川雅俊: 食べ物や食べ方を一つの領域になぞらえると、そういわざるを得ません。ちょっとその中味をおさらいしてみましょう。まず食(飲も含む)生活・文化・歴史、食品とその栄養、食材と料理(レシピ、料理店ガイド)、食品工業、農林水産における食物の生産、飲食店・食堂・カフェ等経営(料理店、料理人、調理機器・調度・食器)、食育・保険にかかわる医学・薬学などがこの領域に含まれ、それぞれに関する本が<ごまん>(実際にデータベースで調べてみると約5万点あり、その符号に驚き)とあります。それらの中にはフィクションや絵画や写真集があることは先に見たとおりです。

ここまでのところは、そんな中から食文化にかかわる本を中心に、<旨い>に焦点を当てた本を選んで、ご紹介してきました。でもまだまだあります。とりわけライブラリーにあるもので、気に入ったいくつかを命脈もなく挙げてみたいと思います。

旨いものの旨さはその素材といいます。たくさんありますが、この2点、『フルーツハンター』(A・L・ゴウルナー著、立石光子訳、09年白水社)と『つくる、たべる、昔野菜』(岩崎政利・関戸勇著、07年新潮社)を挙げておきます。旨いものと旨い酒のコラボレーション。これもたくさんありますが、この1点、ワインのソムリエがこれを書いた『「和」の食卓に似合うお酒』(田崎真也著、10年中公新書ラクレ)。私の好きな食後の和菓子について2点、『事典 和菓子の世界』(中山圭子著、06年岩波書店)とムック「別冊太陽」の中の『和菓子風土記』(鈴木晋一監修、05年平凡社)。これらは食欲を刺激します。

美味を追求する

ブリア=サヴァランの『美味礼讃』(関根秀雄・戸部松実訳、05年ワイド版岩波文庫)という本があります。これは、グルメ本の古典といっていいでしょう。ただ原書の標題を正確に翻訳すると、「味覚の生理学、或いは、絶対的美味学をめぐる瞑想録」ということになり、単に旨いものガイド、あるいはそれに関する蘊蓄を披露したものではありません。「絶対的美味学をめぐる瞑想録」と副題が掲げられているように、旨いものを食べるために旨さの素を冷静に分析し、体系化してこの本を書いています。そのことはこの本の目次を追っていくだけでも一目瞭然です。感覚、とりわけ味覚についての考察から始まって、美味学の起源と現況、食欲、食物、飲料、美食家論、食卓論、食欲と体調・体型、料理法などなど人の食生活にかかわるあらゆる観点から旨いものを追求し、総合的に記述されています。そして彼はこの本を通じ、「食こそ精神生活の根源であることを実証的に説いて、食味の楽しみを罪とする禁欲主義から人々を解き放った人間哲学」(帯評)を語ろうとしています。

ところでライブラリーに、『空腹について』(雑賀恵子著、08年青土社)という本があります。この本はお腹が空いた状態における食欲と食べ物の関係について、農業、文化人類学、薬学などさまざまな視点から調べていますが、サヴァランもそれについて考察しています。この本の中で戦争など非常時における食事についても言及されていますが、南極越冬隊の賄い方が書いた『名人誕生-面白南極料理人』(西村淳著、09年新潮文庫)もこの関連でとらえると、興味深いですね。

また『暴食の世界史』(F・プローズ著、屋代通子訳、10年築地書館)は、古来、人々がいかに食欲に端を発する喜び見出そうとしてきたかを語り、それと同程度にそのことを罪悪とし、それを戒めることに執着してきたかを私たちに知らせてくれます。私たちは、早飯だったり、食べ過ぎたり、凝った食べ物を好んだり、高価な食べ物に憧れたりしますが、昔も今も賢者たちはグルメを悪とし、それを克服すべきという言説を聖書やその教義本、さらに、例えば先に挙げた『食道楽』のように、古典から現代まで文学作品に残しています。この本はそういうメッセージを引き合いにして、旨いものを食べたいという私たちの願望に考察を加えています。この本は『空腹について』と対をなす問題ですが、サヴァランはそうした罪の意識から開放して、適正な食事を追求していたようです。

なお最近『いま蘇るブリア=サヴァランの美味学』(川端晶子著、09年東信堂)が出されましたが、これはこの本の新訳書です。

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