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旨い、美味しい !?

読みたい本が見つかる、「カフェブレイク・ブックトーク」

更新日 : 2010年09月16日 (木)

第4章 <B級グルメ>の登場

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澁川雅俊: そのような食べ物に対して80年代の中頃からメディアでは<B級グルメ>などという呼称を与えています。それ自体妙な造語ですが、実体がいまも変動しているようで、定義はまだ固まっていませんが、どうやら(1)精錬された旨さよりも大衆的な旨さ、つまり「質より量」を重んじる価値観の下で指定される食べ物、(2)都会(首都圏とか京阪神都市圏)の食堂ではなく、田舎の食堂で供される食べ物を指しているようです。

(1)は「安い、はやい、うまい」にも通じ、その点ではファスト・フードと重なる部分がありますが、しかし「マック」や「吉牛」を<B級グルメ>とは言い難いようですし、銀座・赤坂・青山・六本木など垢抜けた街の小洒落たレストランで供されるものではなく、浅草・深川・渋谷・新宿・池袋などの、込み入った裏町の食堂や一膳飯屋などでもそれが供される、という認識も一般にはあるようです。

いずれにせよその差は僅差なのですが、例えば『B級グルメが地方を救う』(田村秀著、08年集英社新書)を読むと、<B級グルメ>の具体的な姿形と味のほどがある程度浮かび上がってきます。この本ではその体表的な食べ物として「富士宮・横手・太田の焼きそば」や「宇都宮・浜松・裾野」の餃子を挙げています。

それらは地方の新しい名物旨いものですが、駅弁はいまも地方の名物食べ物です。『駅弁と歴史を楽しむ旅』(金谷俊一郎著、10年PHP新書)は、かつての中心であったこの<B級グルメ>の健在振りを紹介しています。となると、『定食学入門』(今柊二著、10年ちくま新書)の、若者たちが町の食堂で昼夕にとる食事もおなじジャンルに入ります。

『しあわせ食堂』(武内ヒロクニ・毎日新聞夕刊編集部著、09年光人社)は、カステラやあんぱんなどの菓子類も含まれていますが、50名の著名人を取材し、それぞれの<一押し>旨いものや思い出の旨いものを収録しています。 また世界85か国を食べ歩いた元旅行添乗員が書いた『日本の食欲、世界で第何位?』(岡崎大五著、10年新潮新書)などもあります。これらに挙げられているものは、すべて<B級グルメ>に類別できるでしょう。

ところで、この用語の<B級>というのは<A級>と対比するために用いられたということはわかるのですが、実はそう単純ではなく、ことの起こりは『B級ノワール論』(吉田広明著、08年作品社)にあったようです。つまりそれは、ハリウッド映画の世界で、香り高い作品ではなく、大衆ウケするスリル&サスペンス&セックスものの通称で、2本立興行の付け足し映画を指していました。そういう意味では、かつての音楽レコードでも、有名歌手の唄をA面に、駆け出しをB面になどという作り方がありましたね。

なおまた、この<B級グルメ>の「グルメ」については、その意味を間違って使っています。「グルメ」は本来「美食する人」、あるいは「旨いもんに飽くなき欲望をもってその実現に努力する人」を表しており、メディアで普通に使われているような旨い食べ物そのものにこの語を充てるのは間違いです。従ってその言い方は、正しくは「B級の旨いものを好んで食べるA級でない美食家」ということになりますが、そう考えると「グルメとは何か」を改めて究明する出発点になりそうですね。

ところで「グルマン」ということばがありますが、これは「大食漢」とか「健啖家」とか、あるいは俗っぽい言い方をするならば「食いの神」などに当たります。

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