記事・レポート

日本の蚊帳(かや)が、アフリカの貧困を救う

~1人の日本人が20年間続けたライフワークが、世界を動かす~

更新日 : 2009年12月01日 (火)

第4章 マラリアは根絶できるか?

ムハマド・ユヌス氏

伊藤高明: アフリカは衛生施設のインフラが未発達で、治療へのアクセスが非常に困難です。ケニアのモンパサの3つのクリニックを回ったところ、確かに『オリセットネット』があって患者がいっぱい並んでいたのですが、クリニックまで10キロも歩いてきた人がいました。子どもの90%が家で死んでいるのは、そういう理由からなのです。

WHOはこれまでは5歳以下の子どもと妊婦を優先的に守るという方針を立てていましたが、2008年に新たな方針「ユニバーサル・カバレッジ」を打ち出しました。これは2人に1張りの割合で蚊帳を行きわたらせるというもので、2010年の末までに2.5億張り必要になりますが、もしこれが達成できれば、マラリア患者数は非常に減少すると思います。

患者数が減少したら、少なくなった患者をいかに早期発見して、早期治療をするかが問題になってきます。現状では子どもの90%が家で死亡していることを考えると、村落レベルでボランティアを訓練し、発熱した人が出たらまず早期に診断できるようにし、そこでマラリアだとわかれば治療薬を投与するという体制の整備が望まれます。

こうしたことが実現されれば、マラリアに感染することがなくなるから無駄な出費になる治療費を使わなくて済むようになる。そしたら働くことができるから作物を栽培できるようになる。そしたら余剰収穫物を市場で販売して現金収入を得られるようになる。そしたら貯蓄してより豊かな生活ができるようになる——こういうプラスの循環が始まると思います。

かつては毎年何千人もいた日本脳炎患者が、日本では今は1人か2人だけです。水田が少なくなったり、家畜を家庭で飼わなくなったりしたために、人間と蚊との接触が少なくなったからです。網戸、クーラー、あるいは家庭用殺虫剤の普及のおかげでもあります。そういったものがアフリカに行きわたれば、マラリアも根絶できると思います。

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日本の蚊帳(かや)が、アフリカの貧困を救う

~1人の日本人が20年間続けたライフワークが、世界を動かす~

日本の蚊帳(かや)が、アフリカの貧困を救う
伊藤高明 (住友化学(株)ベクターコントロール(事)技術開発部)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

伊藤高明(住友化学(株)ベクターコントロール(事)技術開発部)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
アフリカの貧困を救う防虫蚊帳「オリセットネット」を開発した伊藤氏の20年間にわたる研究の過程から、スピード重視で結果を急ぐ現代の日本人が忘れがちな「地道に、こつこつと、一つのことを続ける」ことの価値を改めて考えます。


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