石倉洋子のグローバル・ゼミ

みんなと同じは安心ではない

これからの時代に求められる「逆張り」キャリア論

3章 ファシリテーション型リーダーシップが必要とされる時代


石倉:
唐澤さんのお話を伺っていると、人生の節目で自立的な判断をされているように感じます。その感覚はいつ頃身につけられたのでしょうか?

唐澤:
中学時代が原体験かもしれません。中学1年生当時、学級委員を任されたことがあります。うちの学校には、学級委員が集まる「学年委員会」というものがありました。生徒がその会を運営するのですが、担当の先生がすごく怖い人でした。会議の進め方も非常に厳しく、言われたことを淡々とやるだけなので、すごくつまらなくて辛い経験でした。だから2年生のとき、もう絶対に学級委員はやりたくないと思って辞めました。

でも3年生のとき、やっぱりまた学級委員会をやってほしいと言われました。そこで、みんなで楽しく意見を出し合える学年委員を作っていいなら、やってもいいと条件を出したんです。そうしたら、みんなが楽しく笑いながらアイデアを出し合えるようになって、すごく楽しくなりました。同じ委員会なのに、楽しく進行するだけでこんなに良くなるんだ!というのが僕の原体験です。

これは楽しい環境で自分たちで考えるから出てきたアイデアであって、先生から「やれ」と言われても絶対に出てこないと思います。「楽しく働く」「自分で考える」ことが大事だと思えたのは、この経験が大きいですね。

メルカリも、みんなで意見を出そう、考えようというカルチャーの会社なので、自分にすごくフィットしていると感じています。

石倉:
グローバルリーダーに求められるのも、多様な環境でいろいろな意見を出し合えるリーダーシップに変わりつつあるように思います。

唐澤:
ダイバーシティが前提になるので、今後はトップダウン型ではなく、メンバーの意見を引き出し、全体を活かす「ファシリテーション型リーダーシップ」が求められるようになると思います。

欧米系の会社がダイバーシティという言葉をよく使いますが、結局トップダウンで決める会社が多いのが実情です。いろんなスキルセットの人がいたら使いやすいよね、と言っているように聞こえて、それは多様性の本質ではないと感じます。価値観そのものや、背景・考え方が違う人が異なる意見を言うからこそ、化学反応が起こって、リーダーも気づいていない答えにたどり着ける。それが大事なことだと思います。
日本人は話を聞くのが上手なので、ファシリテーション型リーダーシップは得意なのではないでしょうか。

石倉:
おっしゃる通りだと思います。以前GASのプログラムに国際NGOで活躍する日本人の若手をゲストとしてお招きしたことがあります。彼は職場で外国人の同僚たちが人の意見を聞かず、好き勝手なことを言っているのをまとめることで、自分の役割が分かったと言っていました。

おそらく日本人に足りないのは「多様な人と働いた経験」でしょう。いつも同じ人とばかり接していたら、多様な意見をファシリテートする力は開発されないと思うんです。あとは自分に経験が足りないことをどこまで自覚できるか。会社で上司が「まだ若いから」と言うかもしれませんが、とにかくいろいろな経験を積んだほうがいいですよね。

唐澤:
多様なものに触れるのは、キャリアの早い段階のほうがいいと思います。歳を重ねてからでは、多様性を受け入れ難い人も出てきてしまう。若いうちに、価値観の違う人が世の中にいることを強烈に認識するのは非常に重要です。

石倉:
メルカリでは、まさにいま組織の多様化を急速に進めていらっしゃるということで、多様な人と働く経験を大切にされているわけですよね。

唐澤:
メルカリは日本発の企業で、まだビジネスは日本国内が中心ですが、国内にある組織でも外国籍の人材を多く採用しています。それは、今後もっと事業のグローバル展開をしていくことを視野に入れていることもありますが、最高レベルのエンジニアを採用したいので、国内だけでなく世界中から最高の人材に集まって欲しいという想いから、30カ国くらいから人材を採用しています。

石倉:
多様性が重要だという認識は日本でも定着してきましたが、ダイバーシティをどう捉えるかについては、人によって考え方が違うと思います。

GASでは現場の実情を理解し、自分で考えてアウトプットすることで課題への理解を深めることを重視したプログラム構成となっています。
GAS2019では、ダイバーシティの本質を参加者に捉えて頂きたいと考えています。ゲストにお越しいただく際に、メルカリでどのようにダイバーシティを推進していらっしゃるのか、詳しく伺っていきます。

多くの日本企業がこれから直面する課題に先駆けて取り組んでいらっしゃるメルカリでの唐澤さんの取り組みは、きっと多くの示唆を下さると期待しています。本日はありがとうございました。



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