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『ケロッグ大学大学院 モーニング・セッション「異能の時代~ダイバーシティを活かした価値創造のマネジメント」』

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更新日 : 2008年08月22日 (金)

第9章 共感(エンパシー)は、同情(シンパシー)とは違う

ダイバーシティを活かした価値創造のマネジメント

星野朝子: 人は共感能力が低いと言われると、何か性格が悪いように言われたような気がするらしいのですが、「これは性格ではない」と専門家たちは明確に言っています。「共感能力というのはスキル。だから、トレーニングすれば確実に高まります」だそうです。

彼らが言っていること、そしてこの世界で言われていることは、「エンパシーというのはシンパシーとは違う」ということ。シンパシーは人に同情する、人の痛みがわかる、そういう気持ちです。特殊なケース以外、ほとんどの人間が生まれながらにしてシンパシーを持っているといいます。

シンパシーは自分と価値観が同じであったり、自分の好きな人に対してしか向けられないそうです。例えば、自分の息子なり娘が受験戦争に失敗して、希望大学に落ちました。自分の息子、娘が泣いています。そのとき親は「あんなに努力をしたのに、ああ、なんてつらかろう」と思うわけです。

ところが同じ学年の隣の子が良い大学に受かったと聞いても、「なんてうれしかろう」とは思わないですね。「ふざけるな。なんであんな奴が受かって、うちの子 が落ちたんだ」と、こういうふうに思うわけです(笑)。シンパシーは自分の子どもの気持ちに向けられるのであって、隣の子には向けられないのが普通です。

仲間でもそうですね。自分と価値観を共有しているから、みんなで喜べるわけで、それはエンパシーじゃなくて、シンパシーだというのです。

エンパシーというのは、どんなに憎かろうが嫌いだろうが、価値観が違おうが、その人がどう思っていて、どうされるのが一番うれしいかということを理解でき、それを相手に伝達できる能力なんですよ。ここがシンパシーとエンパシーの違うところです。

エンパシーに関するチャレンジの結果というと短絡的なのですが、例えば、こういうミニバン(日産SERENA)が登場しました。ミニバンは女性が購 買の意思決定に関わる比率が高く、8割方女性が決めていると言われています。このSERENAはワンボックスのミニバンセグメントでトップクラスの販売を 続けており、かなり多くの女性の心をつかんでいるということです。この辺でも、日産の企画者が女性の気持ちを理解できるようになってきたかなと思っていま す。