記事・レポート

今考えるべきこと「明日への提案 - 逆境を越える」

ピンチの時こそ、変革者が出てくるチャンス

更新日 : 2020年04月20日 (月)

第1章 朝比奈一郎さん(青山社中リーダー塾 塾頭)

アカデミーヒルズがお届けする本企画では、様々な立場の識者から明日への提案を頂きます。
今を洞察し、未来をデザインする。多様な発想で彩られるオピニオンをお届けします。





新型コロナウイルスの話題一色ですが、皆様、如何お過ごしでしょうか。色々大変ですが、震災などの一時的ショックに比べ、何より「先が見えない」というのは、本当にしんどいですよね。一体、いつ収束するのか。

そんな中、官僚として約14年勤務し、現在は政治家・政党向けに政策作成支援をしている立場から、とても気になるのは政府の対応です。ようやく、4月7日(火)に緊急事態宣言も発令されましたが、身体への被害と経済的被害を天秤にかけながらギリギリの対応をしているものと推測します。そして、同日に閣議決定された緊急経済対策ですが、事業規模ベースでの総額こそGDPの約2割の108兆円と、リーマンショック時の約2倍と過去最大となっていますが、中身的には所得が急減した低所得世帯や売り上げが急減した中小事業者・個人事業主向けの現金給付など、その場しのぎ的なものが中心となっています。

マスクの全戸配布が「アベノマスク」と揶揄されるなど話題になっています。現金給付も大事ですが、実際に支給される家庭は、住民税の非課税世帯ということでかなり限定される見込みですし、そもそも30万円が配られたところで、流れを変えるほどの効果がないのは自明ですよね。緊急対策もちろん大事ですが、極めて官僚的で、ピンチをチャンスに変えようという大胆な政治家的発想を感じません。明るい未来、希望が欲しいんですよね。国民は。
( その後政府は、収入が減少した世帯への30万円の現金給付を取りやめ、1人あたり一律10万円の給付を盛り込んだ2020年度補正予算案を2020年4月20日に閣議決定しました。これにより、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策の事業規模は約117兆1千億円、19年度補正予算の未執行分を含めた財政支出は48.4兆円となりました。 )

今こそ、例えば「遷都する」みたいな大きなストーリーが必要ではないでしょうか。パンデミックや震災からのリスク分散、景気刺激(いわゆるワイズ・スペンディングによる近未来都市化)、地方創生などの観点から、一粒で2度も3度も美味しい政策かと思います。オリンピックも延期になり、憲法改正もままならない安倍政権のレガシー(後世に残る成果)としても申し分ないかと思います。どこかで打ち出して欲しい。

とはいえ、過去の経緯(特に90年代にかなり盛り上がりますが、頓挫しました)を踏まえた現実的可能性としては、まず、首都機能移転の手始めとして、例えば、那須に環境省を移すところから始めてはどうかと思います。ちょうど環境大臣は若手カリスマの小泉進次郎さんですし、「着眼大局、着手小局」との格言もあります。詳しくは、こちらの拙稿をご覧いただけますと幸いです。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59902
(驚いたのは、論考を発表した当日に小泉環境大臣本人から携帯に電話を頂き、是非意見交換したいとの話があったことです。先週(※2020年4月の第一週)実際に1時間以上、本件を含めアフター・コロナの時代をどう考えるかについて、色々と議論させていただきました。大変な激務の中でのアンテナの高さや行動の速さには恐れ入る次第です。)

遷都で東京がどうなるか、という心配があろうかと思いますが、上記のとおり、現実には少しずつ首都機能を移転させることしかできないと思いますので、一気に東京が廃れることはないはずです。そして私見では、東京は、そもそもこれくらいで廃れるような「やわな都市」ではないと思います。アドビ社の有名なクリエイティビティに関する世界5都市比較調査(NY、パリ、ベルリン、ロンドン、東京)がありますが、東京は、世界中から、圧倒的にとてもクリエイティブな都市と認識されています。政治・行政の「くびき」が弱まったりはずれたりして行くことで「ゆとり」を取り戻し、より独創性を発揮できるのではないでしょうか。経済都市のみならず、新しい文化都市としての魅力も増すことになろうと想像します。つまり、首都東京も生まれ変わるのです。

ちなみに、世界は、カイロからの新首都(エジプト)や東カリマンタン(インドネシア)など、今、法案成立が取りざたされている「スーパーシティ」をグリーンフィールドベース(ゼロから)つくる動きが盛んです。かつてのアブジャ(ナイジェリアの首都)は丹下健三さん、アスタナ(現ヌルスルタン、カザフスタンの首都)は黒川紀章さんが設計していますが、新首都といえば日本人という本来の得意分野でもあります。

物事を大きく始める人を、私は始動者(≠指導者)と呼び、この定義こそが、英語でいうleader(リーダー)の原義に近いと、ハーバード留学経験も踏まえて確信していますが、ピンチの時こそ、変革者が出てくるチャンスです。日本人一人一人が、真剣にアフター・コロナを考え、議論し、行動することで、災いが転じて福となることを期待したいと思います。


<筆者紹介>
朝比奈一郎さん(青山社中リーダー塾 塾頭)

1973年生まれ。埼玉県出身。東京大学法学部卒業。ハーバード大行政大学院修了(修士)。
経済産業省ではエネルギー政策、インフラ輸出政策、経済協力政策、特殊法人・独立行政法人改革などに携わる。「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」初代代表。経産省退職後、2010年に青山社中株式会社を設立。政策支援・シンクタンク、コンサルティング業務、教育・リーダー育成を行う。その他、自治体(三条市、那須塩原市、川崎市、沼田市、生駒市、妙高市、軽井沢町、越谷市)のアドバイザー、内閣官房地域活性化伝道師、内閣府クールジャパン地域プロデューサー、総務省地域力創造アドバイザー、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授なども務める。


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