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ビジネス・チャレンジ・シリーズ
人事制度の改革なくして「働き方改革」はできない!

日本企業に求められる人事改革のあり方とは?

更新日 : 2017年09月19日 (火)

第3章 人事改革のスタートは、トップの意識を変えること


上が変わらなければ、下は変わらない


有沢正人: 人事改革のスタートは、トップの意識を変え、覚悟を持ってもらうことです。2012年、カゴメの会長や社長に新たな人事戦略案を説明する際、私は「今回の人事改革には、大きな痛みが伴うかもしれない。しかし、今こそ旧態依然とした仕組みを変えなければ、グローバルにおけるカゴメの未来はない。私も覚悟を決めるから、あなた達も覚悟を決めてくれ」と説明しました。

最初に取り組んだのが、役員報酬制度の改革です。従来の状況を調べると、常務、専務、執行役員とそれぞれのグレードで同じ給与と賞与、全く個人差がなかったのです。当時の社長に「この人たちは全く同じ仕事をしているのですか?」と聞いたところ、「そうではない。しかし、個人差はつけられない」と言われました。役員を評価する仕組みがなかったのです。

そこで、まずは会長と社長の報酬について、圧倒的に割合が高かった固定報酬を見直し、変動報酬との割合を5対5にしました。役員も変動報酬の割合を高め、担当する仕事の役割や範囲、難易度によって給与を決める制度を導入し、役員を評価する仕組みも設けました。

これらについて取締役会で説明した際、社長は「この改革案については、まさに耳にタコができるほど議論し、我々は納得した。もしもこの案が通らなければ、私達トップのクビを切ってくれ」と言ってくれました。この瞬間、私はトップの意識が変わったことを実感しました。その後は、「開かれた企業」という企業理念のとおり、会長・社長・役員に関する新旧の評価制度や報酬制度の中身、年収の額まで、従業員に対して全て公開しました。これらは全て、日本・海外で同時に実施しています。

上が変わらなければ、絶対に下は納得せず、変わりません。最初に従業員側の評価や報酬に手をつける企業は多いですが、これでは必ず反発が起きます。まずトップが覚悟を示し、率先垂範した上で、順次、下に落とし込んでいく。現在も社内報や「社長と語る会」などを通して、トップが社員に向けて継続的にメッセージを発しています。なお、現在は部長・課長クラスまで前述の仕組みを落とし込んでいます。


職能給から職務給へ



有沢正人: 私が入社する以前、カゴメの給料は「職能給」でしたが、こうした「人」に拠った賃金制度をやめ、前述した職務等級制度(ジョブグレード)を導入しました。これは、人(肩書きや能力)にお金を払うのではなく、役割や仕事、成果に対してお金を払うという考え方です。私がよく使っているのが、“Pay for Performance, Pay for Job, Pay for Differentiation”(成果に払う、仕事に払う、差に払う)という言葉です。求められる役割や成果が異なれば、差がつくのは当たり前だからです。

その基準を示すために、職務等級ごとに求められる仕事や期待される成果、責任、権限などを明確にし、それを評価するための指標、給与水準を決め、全従業員に公開しました。公開することで、従業員は仕組みや制度のロジックが理解でき、納得感が生まれ、健全な競争意識が働くようになります。

抜擢人事もどんどん始めました。どれほど優秀でも、規定のポイントを貯めないと昇格できないのでは、企業の生み出す価値において損をしている。コスト、人件費といった視点ではなく、「会社としてどう価値を高めるのか」という視点で考えています。

また、評価者が変われば、評価の基準もコロコロ変わる。私はそれがたまらなく嫌でした。そこで、管理職は毎年必ず評価者研修を受講する、という制度をつくりました。これによって、世界のどの拠点に行っても、あるいは上司が変わっても、同じ基準で評価されるようになりました。

ひとつ断っておきますが、私は「とにかく職務等級制度を入れればOK」と言っているわけではあません。職務等級制度を入れると、従来は複雑かつ曖昧だったことが分かりやすくなる、ということです。大切なのは、様々な価値観や考え方を持つ人達の能力を引き出し、最大限に活かすための仕組みをつくること。一方で、評価や昇降格、報酬の仕組みは分かりやすくし、グローバルで統一しましょう、ということです。

私が入社した頃、カゴメのグローバルの売上は全体の数%程度でしたが、現在は25%になりました。自分の手柄だなどと言うつもりは毛頭ありません。私が行ったのは、「いかに従業員が働きやすい環境をつくるのか」という考えを起点に、多様性を認め、従業員が個性を発揮し、成長できる仕組みや制度をつくり、それらの全てに統一感と透明性を持たせたこと。従業員の価値を高める、社会に貢献するといった目的に貢献しない人事の仕組みや制度は、ほとんどやめました。

そして、これらを効果的なものにしていくためには、トップの意識変革と覚悟が必要になる。それができたら、今度は役員、部長、課長などの意識を変えていく。それが、働き方改革を実現するための最短の道だと考えています。


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今回のビジネス・チャレンジ・シリーズでは、カゴメ株式会社で人事最高責任者として同社の評価制度の変革を遂行してきた有沢正人氏をゲストにお迎えし、「働き方改革」時代の企業の人事評価制度の在り方を議論します。


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