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ビジネス・チャレンジ・シリーズ
人事制度の改革なくして「働き方改革」はできない!

日本企業に求められる人事改革のあり方とは?

更新日 : 2017年09月19日 (火)

第4章 キャリアを「主体的に考える」ことを促す仕掛け


外部の視点が変化のきっかけに
前刀禎明 (株式会社リアルディア 代表取締役社長)


前刀禎明: お話を聞いた限り、有沢さんは働き方改革における有効な手段をほぼ実行されているように感じました。例えば、評価と報酬の仕組みにメリハリをつけたこと。外資系企業はその部分で非常にシビアですが、日本企業はそこまでなりきれず、横並びが大半です。こうした感覚では、グローバルでは戦えません。また、トップの意識を変えるという点では、カゴメはコーポレート・ガバナンスの体制もしっかり構築されています。

有沢正人: 2016年3月に、監査等委員会設置会社に移行しました。「開かれた企業」とともに、自律と他律というキーワードのもと、外部の多様な視点を入れることで客観性や透明性を確保しています。

前刀禎明: 私も企業の報酬・指名委員を務めたことがありますが、こうした仕組みがあると、トップの意識改革においてもプレッシャーや緊張感が全く変わります。トップが必死に働けば、下の人間も必死に働くはずです。また、同じ企業に長く勤めていると、社内の常識や慣例のせいで思考停止に陥り、緊張感も失われ、変化を嫌うようになります。外部の人間としては違和感を覚えることばかりですが、それを指摘しても「色々と難しいから」「時間がかかる」などと返ってくる。そう言っているうちに、会社が潰れてしまうかもしれないのに。

有沢正人: やはり、外部の視点でなければ見えないこと、分からないことは多いですね。例えば、同質性の高さはコミュニケーションをスムーズにする反面、変化や成長を遠ざける要因になるため、人材採用ではあえて尖った人材、カゴメらしくない人材も選ぶ方向に変えました。

前刀禎明: 外部人材を採用しても、すぐに辞めてしまうことがある。すると、「外から来た人はダメだ」と言って、再び内向きに戻ってしまうケースも結構あります。

有沢正人: その人に原因がある場合もあれば、受け入れる側に問題がある場合もあります。異質を受容する体制づくりとともに、「自分達もこれを機に変わるのだ」という覚悟が持てるかどうかが、変革への重要なカギになると思います。


成長のきっかけ、場をつくるのが人事の仕事



前刀禎明: 成長意欲や自主性というものは、従業員全てが高いレベルで持ち合わせているわけではないはずです。それを総体的に引き上げるために、どのような工夫をされたのでしょう?

有沢正人: 一人ひとりの従業員が、自らのキャリアについて「主体的に考える」ことを促す仕掛けを数多く入れました。キャリアを考えるセミナーや選択型研修を設け、自らが思い描く将来をもとに、どの研修を受講するのかを自分で判断する。受講しなくても評価には響きませんが、自ら考えて動いた人ほど、良い仕事をするようになり、給料が増えています。従業員が「成長したい」と思えるようなきっかけ、そして、実際に成長できる環境をつくるのが、人事の仕事だと考えています。

前刀禎明: 今のお話を聞いて、ピクサーの「集団としての創造性」(Collective Creativity)を高めるルールを思い出しました。社内の誰もが自由かつオープンにコミュニケーションできる、部署の垣根を越えて誰もが自由にアイデアを出すことができる、といったものです。

有沢正人: しかし、私が入社した頃は組織も縦割り、私は「サイロ」と呼んでいますが、1つの事業部門の中でキャリアを積み上げ、横への異動はほとんどありませんでした。そこで、上級職から順に、わざと専門外の部署にシャッフルし、それを5年ほどかけて部長、課長といったレベルにまで落とし込んでいきました。組織間の壁は完全にはなくなっていませんが、以前よりも横の異動は活発になっています。


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今回のビジネス・チャレンジ・シリーズでは、カゴメ株式会社で人事最高責任者として同社の評価制度の変革を遂行してきた有沢正人氏をゲストにお迎えし、「働き方改革」時代の企業の人事評価制度の在り方を議論します。


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