記事・レポート
ビジネス・チャレンジ・シリーズ
人事制度の改革なくして「働き方改革」はできない!
日本企業に求められる人事改革のあり方とは?
更新日 : 2017年09月19日
(火)
第1章 カゴメの「働き方改革+暮らし方改革=生き方改革」
毎回、旬のビジネストレンドの最前線で活躍する方をゲストに迎え、ビジネスパーソンに役立つ視点を提供する「ビジネス・チャレンジ・シリーズ」。今回は、「人事プロフェッショナル」として外資を含む様々な企業で活躍し、現在はカゴメ株式会社の人事最高責任者として改革を主導する有沢正人氏をお迎えしました。グローバル化、ダイバーシティ、働き方改革など、企業が直面する難題に「人事」から切り込み、風穴を開けてきた有沢氏に、株式会社リアルディア代表・前刀禎明氏が迫ります。
ゲストスピーカー: 有沢正人 (カゴメ株式会社 執行役員 経営企画本部人事部長)
モデレーター:前刀禎明 (株式会社リアルディア 代表取締役社長)
気づきポイント
●働き方改革は、従業員自らが「暮らし方」を見つめ直し、「生き方」を変えていくことにつながる。
●人事制度改革のスタートは「トップの意識変革と覚悟」。トップを動かすことも人事担当の役割。
●多様な価値観を融合し、組織のパフォーマンスを最大化させる人事制度改革は、重要な経営戦略。
下り坂のスペシャリストから、人事のスペシャリストに
有沢正人: まずは簡単に自己紹介から。私は新卒で協和銀行(現・りそな銀行)に入り、融資や渉外に携わり、その後アメリカでMBAを取得しました。バブル崩壊後に帰国してからは、経営企画・人事畑を歩き、当時の銀行業界では画期的だった選択型研修制度などを導入しました。そして、証券会社や銀行の破綻が相次いだ1998年以降、人事の責任者だった私は合併の統合交渉、公的資金注入とそれに伴う人員整理など、非常に苦しい時期を過ごしました。
ひと区切りがついた2004年、光学機器メーカーのHOYAに移りました。同社は当時から30カ国以上に拠点を持つグローバル企業でしたが、人事制度はバラバラでした。そのため、世界中を飛び回ってヒアリングを行い、4年がかりでグルーバル共通の人事制度や人材交流の仕組みを構築しました。
2008年秋、今度は世界有数の保険グループAIGから人事担当執行役員の誘いを受けました。2008年といえば、リーマン・ショックです。入社から数日後に経営危機が発覚し、今度はアメリカ政府から公的資金が注入されることになりました。日米両政府の公的資金注入を経験したため、当時は「下り坂のスペシャリスト」という妙なあだ名も付けられました(笑)。その後、AIGでは企業再建とともに、アメリカ本社と連携して人事制度の抜本的な改革を行いました。
そして2012年、カゴメから「グローバルに通用する人事制度をつくってほしい」とお声がかかり、現在は人事部門の責任者として世界共通の人事制度の構築、ダイバーシティ推進、人材育成の仕組みづくりなどに取り組んでいます。
なお、カゴメは2017年に創業118年を迎え、近年は売上が2,000億円前後で推移し、株主数は19万3,000、うち99.6%は個人株主です。これは、企業理念の1つに「開かれた企業」を掲げる当社ならではの特徴です。海外では、アメリカやオーストラリア、欧州、東南アジアなどに35の関連会社があり、B to C中心の国内とは異なり、海外は基本的にB to Bが中心となっています。
働き方が変われば、生き方が変わる
有沢正人: カゴメは現在、「働き方改革+暮らし方改革=生き方改革」という考え方に基づいて、様々な施策に取り組んでいます。働き方は、あくまでも企業側の視点、業務時間内に限った話です。働き方を変えることは、従業員が自らの暮らし方を見つめ直し、生き方を変えていくことにつながる。私達はそう考えています。
「働き方改革」では、例えば、繁忙期・閑散期でバラツキが生じやすい月単位の労働時間管理ではなく、年間の総労働時間で管理する方向に変えようとしています。また、働き方だけでなく、キャリアの考え方にも「多様性」があっていいということで、キャリアパスも来年から多様化する予定です。在宅勤務やテレワーク、サテライトオフィスも導入し、副業についても「本業に差し障りがない範囲でOK」という形で近いうちに導入します。
また、外部企業のロールモデルに講演してもらうキャリアセミナーやワークライフセミナー、育休後復職セミナーなども開催しており、仕事と生活の両立をサポートするハンドブックを全従業員に配付しています。さらに、「産休・育休中でも、空いた時間に仕事がしたい」という人には仕事を提供し、きちんと報酬も支払う、という仕組みも来年から入れたいと考えています。
「暮らし方改革」は、基本的にQOL(Quality of Life)の向上が目的となります。例えば、「地域特例カード」。「家族と一緒に暮らしたいから、3年間は転勤したくない」「旦那が大阪に転勤したので私も大阪に行きたい」といった人が、退職までに2回使えるカードです。これも来年から導入予定です。「本拠地制度」は、「私のホームタウンは○○だから、最後はそこへ戻してください」と言われたら、会社はこれに応えるという制度です。
ちなみに、カゴメには筆記と実技による「オムライス検定1級~3級」という社内資格があります。新入社員も、入社後は包丁の持ち方をはじめ、ナポリタンやオムライスのつくり方といった料理の基本を学びます。その目的は、食品会社の一員として最低限の知識や技術を身につけると同時に、育児・介護休暇を取った際、男性であっても家事をすることが必要になるからです。
一人ひとりが身につけた知識や技術を活かして成長し、それによって仕事も生活も豊かにしていく。また、従来は人生の貴重な時間を「会社」に使い過ぎていたため、それを個人に戻すことで充実した人生を送ってもらい、仕事でも高いパフォーマンスを発揮してもらう。それが「働き方改革+暮らし方改革=生き方改革」であり、企業としてそれをサポートする、というのがカゴメの考え方です。
「働き方改革」では、例えば、繁忙期・閑散期でバラツキが生じやすい月単位の労働時間管理ではなく、年間の総労働時間で管理する方向に変えようとしています。また、働き方だけでなく、キャリアの考え方にも「多様性」があっていいということで、キャリアパスも来年から多様化する予定です。在宅勤務やテレワーク、サテライトオフィスも導入し、副業についても「本業に差し障りがない範囲でOK」という形で近いうちに導入します。
また、外部企業のロールモデルに講演してもらうキャリアセミナーやワークライフセミナー、育休後復職セミナーなども開催しており、仕事と生活の両立をサポートするハンドブックを全従業員に配付しています。さらに、「産休・育休中でも、空いた時間に仕事がしたい」という人には仕事を提供し、きちんと報酬も支払う、という仕組みも来年から入れたいと考えています。
「暮らし方改革」は、基本的にQOL(Quality of Life)の向上が目的となります。例えば、「地域特例カード」。「家族と一緒に暮らしたいから、3年間は転勤したくない」「旦那が大阪に転勤したので私も大阪に行きたい」といった人が、退職までに2回使えるカードです。これも来年から導入予定です。「本拠地制度」は、「私のホームタウンは○○だから、最後はそこへ戻してください」と言われたら、会社はこれに応えるという制度です。
ちなみに、カゴメには筆記と実技による「オムライス検定1級~3級」という社内資格があります。新入社員も、入社後は包丁の持ち方をはじめ、ナポリタンやオムライスのつくり方といった料理の基本を学びます。その目的は、食品会社の一員として最低限の知識や技術を身につけると同時に、育児・介護休暇を取った際、男性であっても家事をすることが必要になるからです。
一人ひとりが身につけた知識や技術を活かして成長し、それによって仕事も生活も豊かにしていく。また、従来は人生の貴重な時間を「会社」に使い過ぎていたため、それを個人に戻すことで充実した人生を送ってもらい、仕事でも高いパフォーマンスを発揮してもらう。それが「働き方改革+暮らし方改革=生き方改革」であり、企業としてそれをサポートする、というのがカゴメの考え方です。
該当講座
人事評価制度の改革なくして「働き方改革」はできない!
今回のビジネス・チャレンジ・シリーズでは、カゴメ株式会社で人事最高責任者として同社の評価制度の変革を遂行してきた有沢正人氏をゲストにお迎えし、「働き方改革」時代の企業の人事評価制度の在り方を議論します。
ビジネス・チャレンジ・シリーズ
人事制度の改革なくして「働き方改革」はできない!
インデックス
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第1章 カゴメの「働き方改革+暮らし方改革=生き方改革」
2017年09月19日 (火)
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第2章 人事のプロが考えるダイバーシティとは?
2017年09月19日 (火)
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第3章 人事改革のスタートは、トップの意識を変えること
2017年09月19日 (火)
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第4章 キャリアを「主体的に考える」ことを促す仕掛け
2017年09月19日 (火)
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第5章 従業員の健全な上昇志向を育む
2017年09月19日 (火)
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