オピニオン・記事

‘AI’=ROBOT?

世を席巻するAIを読む

更新日 : 2017年07月14日 (金)

第4章 ‘シンギュラリティ’と2045年問題

AIの権威が語るシンギュラリティ



澁川雅俊: シンギュラリティ(singularity)は、日本では「技術的特異点」と付記されます。その話題とともに2045年問題、すなわち「その年にAIは人知を超え、以降は人とAIが融合する。さて30年後、私たちはどうなるのか?」とメディアで盛んに煽り立てられました。シンギュラリティとは、いったい何なのでしょうか?

『シンギュラリティは近い』〔R・カーツワイル/NHK出版〕は、同著者の大著『ポスト・ヒューマン誕生〜コンピュータが人類の知性を超えるとき』〔2007年/同〕のエッセンス版です。AIの世界的権威である著者は、物理・化学、生命・DNA、脳、テクノロジー、テクノロジーと知能、宇宙の6つの観点から歴史を振り返り、その進化の経過を辿りつつ、「生物の限界を超え、2045年、人類はついに特異点に到達する」と述べています。「私はシンギュラリアンだ」「我々は現在、永遠と長く生きる手段を手に入れた」など、数々のショッキングな見解が語られています。

『シンギュラリティ』〔M・シャナハン/エヌティティ出版〕は、英国のAI研究の第一人者が、いつかその時が来る、その時のためにAIが目指すこと、例えばAIと人間の肉体が合体し、不死の存在になることの賛否、好嫌、さまざまな想いを踏まえて考察しています。こちらの著者は、カーツワイルほどのシンギュラリアンではなさそうです。

内容は、科学技術の課題はもとより、政治・経済・社会全般にかかわる諸問題、道徳・倫理の問題、何よりも人々のアイデンティティにかかわる問題、適合しなければならない問題など多岐にわたります。善と悪、何が起ころうと人間主義に安住している者からすれば、そのポスト・ヒューマン原理主義には馴染みませんが、その時は間違いなく来るのでしょう。それは天国なのか、あるいは……。


人間とAIは不即不離の‘糾える縄’か



澁川雅俊: そもそも、人間は初めて「技術的特異点」を迎えるのでしょうか? 人類の歴史は約20万年と言われていますが、G・S・ホーキンスは『宇宙へのマインドステップ』(1988年/白揚社)の中で、その間に起こった古代洞窟線描画の出現、数字の発見と計算の発明、文字の発明と本の出現、印刷技術の発明、望遠鏡の発明を、人間に「新しい宇宙観」の形成を促したテクノロジーとして捉えています。

『人工超知能が人類を超える シンギュラリティ』〔台場時生/日本実業出版社〕では、1万年前の農業革命、18世紀後半に始まった産業革命、そしてコンピュータの出現による情報革命をパラダイムシフトの画期と捉え、俗に2045年と喧伝される次回のシンギュラリティを、人間と同等の能力を備えたAIの完成(ロボット革命)時点であるとしています。

ヒューマノイドロボット工学者である著者は、それがいつ訪れるのかはわからないとしていますが、一旦その時点を超えると、人類の進化は種の保存を目的とする生物的進化だけでなく、科学技術的進化も伴ってくると述べます。そして、人間とAIは不即不離の‘糾える縄’の関係を保ちながら、最終的には遺伝子の意図的改良と不老不死を獲得する生物革命が起き、全知全能の類に至る、という大胆なロードマップを描いています。

一方、『明日、機械がヒトになる』〔海猫沢めろん/講談社〕は、小説家が7人の科学者を訪ね歩いたルポルタージュです。「人間は機械化し、機械は人間化している」との感覚をモチーフに、虚構を現実にするSR(代替現実/substitutional reality)、3Dプリンタ、アンドロイド、サイボーク研究の一端を担うBMI(brain machine interface)、AI、ビッグデータなどの最先端研究を取材。著者は「ヒトと機械の境界が溶け始めた」と表現し、シンギュラリティの到来を確信しているようです。いずれ、その見解の下で新たな作品を発表するかもしれません。


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アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?
アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?

今回は、人工知能(AI)にまつわる本がテーマのブックトーク。
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、「今までの」そして「これからの」AIを読み解きます。


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