オピニオン・記事

‘AI’=ROBOT?

世を席巻するAIを読む

更新日 : 2017年07月12日 (水)

第2章 そもそも、AIとは何ですか?

AIのイロハが理解できる本



澁川雅俊: 昨今はAIについて「つまり、それって何?」を解説する本が多く出されています。『人工知能とは』〔人工知能学会監修、松尾豊編著/近代科学社〕は、学会誌『人工知能』に掲載された「レクチャーシリーズ」に、分野を異にする13人の専門家が寄せた論文を編んだものです。論文とはいえ、「AIとは何ですか」「意識や自由意志はありますか」など、AIに対する基本的な疑問にわかりやすく応えた内容となっています。

「AIが恋に落ちる日」との副題が付けられた『コンピューターで「脳」がつくれるか』〔五木田和也/技術評論社〕も手頃な入門書です。著者は「いま持てはやされている‘人工知能’は〈人工知能〉ではない」とし、特化(限定)型AIと、汎用(万能)AIを区別しつつ、後者に「できごとを記憶」「他人の意図を理解」「ジョークやたとえ話に対応」「嘘をつく」「高度な推論を行う」「未来を予測する」「道具を使う」「映画や音楽を楽しむ」といったイメージを描いています。さらに、汎用AIはまだ基礎研究の段階にあり、その成否を握るカギの1つは、人間の脳の働きと詳細なメカニズムの解明が不可欠と述べています。

一方、通勤車中のおともにふさわしいノウハウ本『人類なら知っておきたい、「人工知能」の今と未来の話』〔本田幸夫監修/PHP研究所〕は、「最新ロボットからディープラーニングまで、これ1冊でよくわかる!」と、いささか大風呂敷な副題が付いていますが、特化型AIの現状を幅広く紹介しています。『AIと人類は共存できるか?』〔人工知能学会著/早川書房〕は、現代日本のSF作家たちが政治、経済、倫理、芸術、宗教などの観点から未来を描いた5つの短編と、それを読んだ5人のAI専門家が各領域の成果に基づいて所見を述べています。こちらは楽しみながらAIに触れることができる本です。


 
ビッグデータの功罪を予測する



澁川雅俊: AIの肝は、ビッグデータとディープラーニング(深層学習)のようです。ビッグデータを活用すれば、ビジネスの傾向の発見、疾病予防、法的引用のリンク、犯罪防止、リアルタイムの交通状況の判断などが可能とされています。では、具体的にどれほど‘ビッグ’なのでしょう? 『巨大数』〔鈴木真治/岩波書店〕によれば、その最大値は10の100乗とされ、英語の単位名は‘googol’となり、漢字文化圏での単位名‘無量大数’(10の68乗)をはるかに超えています。

『ビッグデータと人工知能』〔西垣通/中央公論新社〕の著者は、1988年の『AI、人工知能のコンセプト』(講談社)以来、このテーマで数多くの本を著してきた学者ですが、いずれも技術面での議論にとどまらず、AIと社会、AIと人間との関係を思索しています。第一次・二次・三次にわたるAIブームを促進したテクノロジーを踏まえつつ、その思考を段階的に展開していますが、とりわけ後述する‘シンギュラリティ’との関わりでビッグデータを考察しています。

ビッグデータは、現時点での高度の機械学習であるディープラーニングによって集合知に変換され、J・ベンサムが言うところの「最大多数の最大幸福」を生み出す手がかりを提起する源泉であるとし、その重要性、人と社会にとっての意義を具体的な例を挙げながら解説しています。

とはいえ、本書の副題に「可能性と罠を見極める」とあるように、ともすればAIは衆愚の集合知を導き出す可能性があるとも指摘します。そうならないために何が必要かを追究し、示された結果をそのまま採用するのではなく、人間の英知によってことを図ることが肝要だと述べ、AIは人間を超えることはない、シンギュラリティは幻想とも言っています。

『ビッグデータの残酷な現実』〔C・ラダー/ダイヤモンド社〕は、副題「ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?」が示すように、AIは自己を発見する手がかりを提供すると語っています。データサイエンティストである著者は、SNSを通じて出会いサイトに集まる男女の秘めたる個人データの集積を分析し、単に恋愛、あるいは結婚相手を探すだけではなく、個人の性格や性癖さえも確認できると言っています。

それによって幸せな気分になれる人も居れば、そうではない人も居るかもしれない。さらに「よし、頑張ろう!」と決心する人も出てくるかもしれない。だからこそ、ビッグデータは限りない力を秘めている、というのが彼の主張です。

『カルチャロミクス』〔E・エイデン、J-B・ミシェル/草思社〕は、「文化をビッグデータで計測する」との副題があるように、ビッグデータを源泉に文化の変容を調べたものです。Google Booksに搭載された書籍全文のデジタルコンテンツをもとに、1800年〜2000年代に使われてきた単語やフレーズ(英・仏・独・露・中国語)の使用頻度を計算し、その流行り・廃りから各時代の特性を導き出しています。

著者らはおよそ500の対語の使用頻度を比較していますが、例えば「戦争」「平和」を比較すると、常に平和よりも戦争の使用頻度が多く、1914年と1965年にピークを迎えています。両年は第一次世界大戦とベトナム戦争が開戦した年ですが、その間に起こった第二次世界大戦の影響もあり、使用頻度は高い値で推移しています。

また、「男」「女」は1983年までは圧倒的に男が多数を占めていましたが、その年を境に男が下落、現在の使用頻度はほぼ拮抗しています。同様の傾向は「科学」「宗教」にも見られます。1800年代には宗教が科学を圧倒していましたが、宗教は徐々に衰微し、1934年には科学の使用頻度が増え始めています。こうした計測もビッグデータのなせるわざなのです。

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アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?
アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?

今回は、人工知能(AI)にまつわる本がテーマのブックトーク。
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、「今までの」そして「これからの」AIを読み解きます。


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