記事・レポート

0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~

箭内道彦が語る「タダでもやりたい仕事」

更新日 : 2015年08月19日 (水)

第3章 『月刊 風とロック』の主題歌


 
0円の力

箭内道彦: 『月刊 風とロック』が創刊100号を迎えた際、その主題歌ができました。音楽プロデューサーの亀田誠治さんによるプロデュースのもと、作詞は宮藤官九郎さん、作曲は斉藤和義さんが担当してくれました。そして歌ってくれたのは、これまで『月刊 風とロック』に登場してくれたミュージシャンや俳優の方々。僕の大好きな人達が、本当に忙しいスケジュールを縫って、何日間もかけて完成させてくれました。

とはいえ、あくまでも創刊100号の“おまけ”であり、当然ながら0円で提供している雑誌のため、皆さんへのギャランティーは一切発生していません。お祝いの意味も多分に含まれていたかもしれませんが、例えば「ギャラはいくらでお願いします」となったら、そこに別の難しさが生じたのではないかと思います。やはり、0円だからこそ、多くの人の気持ちがひとつになった。それこそが「0円の力」ではないか、と感じています。

創刊100号は、僕が棺桶に入る時、体の周りにぎっしり詰め込んでほしいと思っています。そして、僕のお葬式でも、この主題歌をかけてもらいたい。他の人には価値はないかもしれませんが、僕にとっては本当に宝物のような1冊であり、1曲です。

自慢のように聞こえてしまうと少々恥ずかしいのですが、『月刊 風とロック』には、例えば有名な女優さんがパブリックにはあまり見せない表情の写真も載っています。先日、事務所の方が言われていましたが、それを見た他の雑誌社から「ウチでは変な顔はNGなのに、なぜ、箭内さんの雑誌はOKなんですか!」とクレームが来たそうです(笑)。

例えば、この雑誌を2,000円で販売していたら、おそらくOKが出ないと思います。個人的に楽しむための雑誌を、身銭を切りまくりながら作っている。登場してくれる人達も、わけの分からない僕の考えをおもしろがり、協力してくれる。それも「0円の力」だと思います。

僕のライフワークは、ほとんどが自腹で行っています。しかしながら、すべてが0円では経済的な難しさも出てくるため、懐から出て行ってしまう分は本業、つまり、広告という仕事で一生懸命、寝る間も惜しんで働き、稼がなければなりません。

僕のライフワークのせいで、クライアントにも様々な面でご迷惑をかけているかもしれません。皆さんが僕の活動を温かい目で見守り、理解や賛同を示してくださっているからこそ、僕のライフワークは成立しているのだと思います。本当にありがたい話です。


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六本木アートカレッジ 0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~
六本木アートカレッジ 0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~

「0円でやる仕事」、それが「ライフワーク」。なりたい職業より、やりたいこと。箭内流のライフワークの考え方、見つけ方についてお話しします。