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0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~

箭内道彦が語る「タダでもやりたい仕事」

更新日 : 2015年08月19日 (水)

第2章 定価0円のフリーペーパー『月刊 風とロック』


 
大赤字でも作り続ける理由

箭内道彦: 僕は2005年から、定価0円のフリーペーパー『月刊 風とロック』を発行しています。全国のタワーレコード店頭で配布していますが、おかげさまで2014年春、創刊100号を迎えました。同号の表紙は、僕の大好きなアイドル、忌野清志郎さん。この雑誌づくりは、僕にとってのライフワークだと感じています。

『月刊 風とロック』は、僕の好きな人やものしか掲載せず、僕の思うように作って発刊する、非常に個人的趣味に基づく雑誌です。企画・取材・撮影・編集・デザインなど、すべて僕ひとりで手掛けています。そのため、月刊誌と銘打っていますが、発刊時期も僕次第です。

定価0円のため、毎号、大赤字を出しながら発刊しています。例えば、樹木希林さんに表紙を飾っていただいた2013年4月号はA4版フルカラー、120ページほど。毎回ページ数は異なりますが、基本仕様はほぼ同じです。

平均すれば、1号あたり200、300万円かかっており、創刊100号となれば、すでに2、3億円を投じている計算になります。そう考えれば、少なくとも僕は10年で同額を稼いでいるわけですが、見方を変えれば、そのお金をマンションや車の購入などに使い、楽しんでいた可能性もあったわけです。

大赤字なのに、なぜ作るのか。まったく意味が分からない。もう、やめたほうがいい。創刊当初から、いろんな人にそう言われてきました。しかし、僕としては、そう言われることが無性に嬉しいという、実に変な気持ちもあります。

なぜ、定価0円なのかといえば、創刊当初は人様からお金をいただくようなものを作る自信がなかったから。0円であれば、誰にも文句を言われず、自由に作ることができます。「おもしろくない」と言われても、「いらないのなら、もらわないでください」と言えます。また、広告やスポンサーが入ってくれば、金銭的には潤うかもしれませんが、内容に関して色々うるさく言われます。元来、人にとやかく言われることが苦手だったため、0円でスタートしました。

もう1つ、定価0円にはプライスレスという意味も込めています。僕にとってこの雑誌は、お金には換えられない価値があるからです。さらに、定価が付いてしまうと、「ちゃんと売れるかな」という心配も生まれます。そうした世界から離れたかった、という思いもありました。

『月刊 風とロック』に登場するのは、僕が心から愛する人やものだけです。どれほど有名な人からオファーがあっても、好きではない人は載せたくはありません。僕にとっては特別な意味を持つ雑誌であり、だからこそ作り続けてこられたのだと思います。


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六本木アートカレッジ 0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~
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「0円でやる仕事」、それが「ライフワーク」。なりたい職業より、やりたいこと。箭内流のライフワークの考え方、見つけ方についてお話しします。



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