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天上の舞 飛天の美
世界遺産・平等院鳳凰堂に秘められた美と感性

神居文彰住職が語る千年のストーリー

教養文化キャリア・人
更新日 : 2014年05月30日 (金)

第4章 刻一刻と変化する、菩薩の表情

神居文彰(かみい・もんしょう/平等院 住職)

 
仏師たちの個性が競い合う日本のものづくりの原点

神居文彰: 鳳凰堂の中心である中堂には、本尊である阿弥陀如来が鎮座しています。その周囲、長押(なげし)という横木の上には「雲中供養菩薩」が掛けられています。本尊の髪際は丈六(じょうろく)、お釈迦様の身長である一丈六尺(約4.85m)と同じ高さです。したがって、私たちが菩薩を見る際は、遠く仰ぎ見ることになります。

52躯ある雲中供養菩薩は元々、彩色が施されていましたが、現在はほとんど剥落しています。多くは菩薩の姿(菩薩形)をした坐像で、飛雲に乗り、楽器を演奏したり、持物をとったり、合掌したりしています。菩薩形のなかで6躯だけ、他とは少々違う姿をしたものがあります。舞を踊っているのです。とても軽やかで陽気であり、見ているだけで明るい気持ちになります。さらに、5躯は僧の姿(比丘形/びくぎょう)をした坐像で、うち3躯は合掌し、2躯は印を結んでいます。

阿弥陀如来像をはじめ、鳳凰堂を彩る仏を作製したのは、大仏師・定朝(じょうちょう)です。彼の手により檜の寄せ木造りという日本独自の技法が完成し、以後は仏像彫刻の基本となりました。定朝は、日本初の仏師集団(工房)をつくり出した人物でもあります。空を舞う菩薩の姿をよく眺めてみると、おひとりとして同じものはありません。外見だけでなく、材の使い方や技法も実に様々です。定朝は、仏師それぞれの個性を認めたうえで自由につくらせ、最終的に阿弥陀如来像を中心とした荘厳な空間へと昇華させています。このプロセスは、日本のものづくりの原点と言っても過言ではないでしょう。

雲中供養菩薩を横から見ると、とても薄い。しかし、正面から見ると立体感があり、とてもふくよかで柔らかい。まったく薄さを感じさせません。仏師たちの技術の高さがうかがえます。

すべてのものが常に変化する

神居文彰: 鳳凰堂における雲中供養菩薩は、光と影により、様々な表情を見せてくれます。朝は正面から昇る太陽に照らされ、お昼頃は阿字池からバウンスした光を受ける。夕暮れどきの柔らかな光を経て、夜になり、蠟燭の温かな光により生み出される影は、ゆらめく。様々な光により描き出される影は絶え間なく変化し、どこまでも伸びていくのです。

1日のなかで、あるいは季節の移り変わりのなかで、光に照らされる菩薩の表情や背後に伸びる影は刻一刻と変化し続けます。鳳凰堂では、すべてのものが常に変化しているのです。皆さんが鳳凰堂を歩けば、過去・現在・未来のつながり、すなわち究極の命の先が感じられることでしょう。

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