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DeNA流「強いチームのつくりかた」

Harvard Business Schoolアラムナイ・スピーカー・シリーズ:南場智子

BIZセミナーグローバルキャリア・人
更新日 : 2014年05月16日 (金)

第5章 強いチームをつくり出す「言葉の力」

南場智子(株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

 
コトに集中する

南場智子: DeNAには、誰もが口にする言葉があります。これらはチームとして最大限のパフォーマンスを発揮するために、DeNAの一員として必ず持っていなければならない姿勢・意識であり、創業以来、私が意識的に言い続けてきた言葉でもあります。リーダーの役割としては周囲から煙たがられるほど、同じことを繰り返し言い続けることも大切です。

Focus on substance. 「コトに集中しよう」という意味です。たとえば、議論の内容が人やプロトコルに流れてしまったときは、必ず「コトに集中しよう」と言います。コトとは、チームの目標、あるいは目の前にある問題です。私たちの業界はまだ年数が浅く、非常にノウハウ・経験値の少ない業界です。素晴らしい意見やアイデアが出れば、役職や年齢に関係なく柔軟に取り入れていくことが、新たな価値の創造につながるのです。大切なのは誰が言ったのかではなく、何を言ったのかです。

イシューの前にヒエラルキーなし。DeNAは非常にフラットな組織ですが、議論をする際によく使う言葉です。私たちが提供するサービスにおいて、誰が直接ユーザーと接触しているのか、誰が直接競合と戦っているのか。それは経営陣ではなく、最前線で働く“現場”であり、彼らが最も重要な情報を持っています。また、人材採用においては「自分より優秀な人を連れてくる」というルールもあります。したがって、入社したばかりの人が一番優秀であるはず。現場の意見はもちろん、昨日入社したような人の意見も重視することは当たり前なのです。



常識の奴隷になるな

南場智子: 発言責任。「自分の発言には責任を持て」ではなく、むしろ逆です。「無責任でもいいから、とにかく発言しよう」ということ。とにかく思ったことがあれば、必ず意見として表に出す。しかもオープンな場で言う。アンチヒエラルキーの文化を定着させるのと同時に、社内に“政治”を起こさせないという意味もあります。意見に対しては、人が集まる場で必ず本人に返答します。後日、人を介してあれこれ言うことは一切しません。

良質な非常識。当然ながら、大人としての立ち居振る舞いには常識を求めます。親戚でも友だちでもなく、大人が事業を行うために集まっているのがチームです。しかし、思考まで常識の奴隷になってしまうと、無価値になります。

良質な非常識を生み出すには、3つのステップがあります。1つ目は、常識のできあがった経緯とともに、なぜ現在も当たり前のように踏襲されているのかについて、深く考え、理解すること。

2つ目は、理解した瞬間に疑うこと。簡単にできそうなことですが、解答欄に正しい答えを書いて丸をもらうことを条件反射的に繰り返してきた、いわゆる優等生には非常に難しい行為となります。「本当にそれは正しいことなのか? これからもそのままでよいのか? DeNAでもそれがベストなのか?」と、常識を疑ってみるのです。

3つ目は、できる限り代替案を考えること。私たちの業界では、昨日までの常識が次の日には通用しなくなることなど日常茶飯事です。従来の常識に変わる、新たな常識を自らつくり出すのです。この3つの条件をクリアすれば、良質な非常識が生まれ、そこから誰も体験したことのない事業に発展し、最終的には世界にDelightを届けることができるようになります。

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不格好経営 - チ−ムDeNAの挑戦

南場智子
日本経済新聞出版社



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強いチームをどう作るか
南場智子 (株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

南場 智子(株式会社ディー・エヌ・エーファウンダー / 取締役)
今回は近著「不格好経営」が話題となっている、株式会社ディー・エヌ・エーの創業者であり取締役である南場氏をお招きして開催いたします。


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