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DeNA流「強いチームのつくりかた」

Harvard Business Schoolアラムナイ・スピーカー・シリーズ:南場智子

BIZセミナーグローバルキャリア・人
更新日 : 2014年05月23日 (金)

第7章 問題から学び、変化する能力

南場智子(株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

 
ピンチは飛躍へのチャンス

南場智子: 会社を経営していれば、必ずピンチは訪れます。数多のビジネス書に書かれているようなバラ色の成功譚ばかりではありません。一般的な経営者は「ピンチなどないほうが良い」と思われるかもしれませんが、私はむしろ、たくさんあったほうが良いと思います。ピンチこそ、大きく飛躍するためのチャンスだからです。

本のなかで「失敗のフルコース」と書いたとおり、これまで会社がひっくり返るほどのピンチは数多くありました。創業当初は、何度も資金がショート寸前になりました。若者向けのモバイルフィルタリングの義務化が議論されたとき、公正取引委員会の調査が入ったときも、そうでした。さらには、2012年のコンプリートガチャ(※編注)の問題もありました。

大きなピンチが訪れたときほど、リーダーは率先して泥まみれになり、社内外に誠実な対応を見せることが重要です。私が創業以来心がけてきたことであり、現社長の守安(功/代表取締役社長兼CEO)も実践しています。コンプガチャ騒動が起きたとき、守安はすぐに「全部撤廃しよう」と決め、自ら奔走して業界団体の設立にも積極的に取り組みました。



トップ交代の意味

南場智子: ピンチが訪れた際、私が重視しているのは、社外に見せる以上の誠実な姿勢を、社内の仲間に見せることです。心から深く反省し、社員に対して「私自身から変わっていく」と宣言し、実践します。それが、DeNAに誇りを持ちながら仕事をしてもらうために、非常に重要なことだと考えています。

問題が起これば、そこからきちんと学びとり、自らを変化させていく。これをself-transformation能力と呼んでいます。self-transformation能力を示す最大の事例は、トップの交代だと思います。私は創業から約13年にわたりトップを務めました。これほど長い期間、同じ人間が社長を務めれば、社内には良い澱も悪い澱も溜まります。だからこそ、トップが交代することで澱を一度キレイにし、澱がない状態から再び始めていく。清々しいバトンタッチの歴史をしっかりとつくるのは、創業者である私にしかできないことだと考え、2012年6月に退任するという目標を決め、そのための準備も進めていました。

しかし、1年前倒しする形でCEO職から退きました。家庭の事情を理由に辞めたことについては、本を読まれた多くの方がポジティブに捉えてくださっています。ですが、私自身は非常に無責任なことをしたと感じています。

おそらく、すべての経営者はパーソナルな事情を抱えていると思います。ただし、決してそれを表には出さず、組織を率いるリーダーとして旗振りをされている。私の場合は、それをやらないという選択をしました。同じような立場にいらっしゃる経営者には顔向けができません。さらに、現社長の守安をはじめ、これまで一緒に頑張ってきた仲間には本当に申し訳なく思いました。けれども、最後は家族を選択したのです。

2年を経て、2013年の春に現場への復帰を決めました。沸々とわき上がってくるエネルギーを、何に向ければいいのか。そう考えたとき、頭に浮かんだのは、大好きな「チームDeNA」の仲間と一緒に、夢の実現に向けて力を尽くしたいという思いでした。これまで支えてくれた仲間を、今度は私が支える番だと思ったのです。

※編注
コンプリートガチャ
ソーシャル・ゲームにおけるアイテム課金システムの1つ。カプセルのおもちゃ販売機「ガチャガチャ」「ガチャポン」のように、抽選方式でアイテムを購入し、決められた数種類のアイテムを揃えることで、さらに希少なアイテムを得ることができる。欲しいアイテムが現れるまで繰り返し利用する人が増えたことから、射幸心をあおるとの指摘を受けていた。

関連書籍


不格好経営 - チ−ムDeNAの挑戦

南場智子
日本経済新聞出版社



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南場智子 (株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

南場 智子(株式会社ディー・エヌ・エーファウンダー / 取締役)
今回は近著「不格好経営」が話題となっている、株式会社ディー・エヌ・エーの創業者であり取締役である南場氏をお招きして開催いたします。


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