記事・レポート

ファッションから始まるコミュニケーション

丸山敬太が語る、心を満たす服のつくり方

更新日 : 2013年08月22日 (木)

第7章 ファッションは人生を豊かにするもの

丸山敬太(KEITA MARUYAMA デザイナー)

 
「褒める」コミュニケーション

丸山敬太: ファッションに携わる者として、使命だと感じていることがあります。それは、人が身につけているもので、すごくきれいなもの、かわいいものがあれば、必ず「褒める」ことです。

僕たち日本人は、褒めることを苦手としています。しかし、海外に行くと、素敵なものを身につけていれば、街行く人が必ず褒めてくれます。「素敵だね。あなたにとても似合っている」と、気軽に声をかけてくれる。そのひと言で、お互いの心はグッと近づき、コミュニケーションも深まっていきます。ぜひ真似していきたいと思っています。

東京という街は、世界的に見ても非常に成熟した文化を持つ街です。成熟した街には、美しい女性、カッコいい男性が必ずいるもの。しかし、いまの日本には「KY(空気を読む)」のようなものが蔓延していて、グループから逸脱することが敬遠される風潮にあります。実はそれによって、日本人全体のファッションレベルも落ちているのではないかと、僕は心配しています。

だから僕は、一生懸命ファッションを楽しんでいる人に出会ったら、必ず褒めたいのです。皆さんにもそうしていただきたいと思いますし、日本には「褒められたら、褒め返す」という素敵な文化もある。ぜひ実践してほしいと思います。それだけで、お互いのコミュニケーションが深まっていくのではないでしょうか。

最近は、ファストファッションが溢れていますが、用を満たす服を、心を満たす服の代替にはしてほしくないと思うのです。確かに、ファッションとして創られた服は、値段が高いことが多いかもしれません。値段が高いなりの価値を感じていただけないのであれば、それはデザイナー側に責任があります。そうしたことが起こらないよう、僕たちファッションに携わる者は、常に頑張っていかなければと思っています。

ファッションだけでなく、アートや音楽は、人の心や人生を豊かにするものです。人生をエンジョイしていくための1つのツールとして、僕の服も存在していたい。そう思いながら、いまも試行錯誤し、切磋琢磨しております。