記事・レポート

『暮しの手帖』の暮らしと仕事

編集長・松浦弥太郎が「文章術」を初公開!

更新日 : 2013年05月29日 (水)

第5章 他人に言いたくない「秘密」を書きましょう

松浦弥太郎(『暮しの手帖』編集長/文筆家/書店店主)

 
『暮しの手帖』はヘンだった

松浦弥太郎: 読む側の気持ちになると言われても、なかなか難しいです。何を望んでいるのか、どんな話を聞きたいのか。これは『暮しの手帖』をつくりながら、僕もずっと考えています。

参考までに僕が気づいたことを、ひとつ伝えておこうと思います。30年くらい前、『暮しの手帖』は100万部売れていました。日本の隅々まで、いろいろな人が読んでくれていたのです。そこで僕は考えました。「なぜ、みんな『暮しの手帖』を読んでくれるのだろう?」と。いろいろ考えましたが、間違いないと思えるものが一つありました。100万部売れていたころの『暮しの手帖』は、どう見てもどう読んでも「ヘン」だったのです。

一生懸命になればなるほど、無様になる

松浦弥太郎: 「商品テスト」という企画があります。たとえば、ベビーカーのテストでは「川原で炎天下のなか、10km押して歩きました」ということを真面目にやっていたわけです。トースターのテストなら「2万枚のトーストを焼きました」と、本物のトーストを2万枚並べた写真が載っていました。「日本にはいいストーブがひとつもない」といい、ストーブを蹴飛ばしている写真がありました。「どういうふうに燃えるか」を検証するために家を燃やしたりもしています。どれもこれも大真面目にやっていたのです。

一生懸命に仕事をすればするほど、真面目にやればやるほど、無様で「ヘン」なところが出てきます。それは非常に人間らしく、とてもユニークです。そういったユニークさに、みんな惹きつけられてしまう。だから、あれだけ変なことをしていても、その人間らしさに人々は信用して、雑誌を買ってくれたのだと思います。人を好きになるとき、他人に普段は明かさない「秘密」を見るとハッとしますね。また「この人を愛したい」と思うのは、美しくないかもしれないけれど、人間らしい部分に触れることができたときですよね。みんなが探しているのは、つまりそういう「本当」の部分です。おしゃべりでも「ぶっちゃけ話」は一番面白いですよね。

自分だけの「秘密」を書こう

松浦弥太郎: このように手紙などを本当に読んでもらいたいときは、ひとつでいいので自分の「秘密」を書くことが大切です。きょう発見した「ちょっとうれしいこと」や、自分だけが知っている実体験ですとか。どこかで読んだり、インターネットで見たりではありません。他人の秘密を、自分の秘密にしてはいけません。自分だけの経験が、本当の情報なのです。秘密を紙芝居にして、文章にすると、皆、喜んで読んでくれるはずですよ。

もしかしたら、自分にとって嫌なこと、とても恥ずかしいことかもしれません。隠さずに、ぜひみんなと分かち合ってみてください。


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