記事・レポート

安藤忠雄「希望は、自分の心のなかに」

東日本大震災 復興チャリティセミナー

更新日 : 2011年10月13日 (木)

第3章 私たちは遺児育英資金を集める。しかし——

安藤忠雄氏

「私たちは遺児育英資金を集める。
しかし、子どもは愛情がなければ育たない。
地域が里親になって見守る制度が
欲しいのです」

今年(2011年)5月、「桃・柿育英会 東日本大震災遺児育英資金」を立ち上げた。1口年間1万円で、10年間寄付してくれる人を1万人集め、震災遺児を支援するというものだ。世界的指揮者の小澤征爾やノーベル賞学者の小柴昌俊、野依良治、ベネッセホールディングスの福武總一郎、ユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正らも賛同し、安藤の事務所が事務局となっている。

申し込み者は9月20日(2011年)現在14,000人に達し、今も1日100人くらいから申し込みがある。少し前も高齢の女性から「83歳やから最後までいけるかどうかわからんけど、どうしたらいいですか?」という問い合わせの電話があった。「いけるところまでいいですよ」と答えると「そんなら入ります」。

「こういう人たちを見ると、日本人もなかなか捨てたものではないと思う。ただ、捨てたものではないのは60歳以上の女性たち。男性はだめ。子育てに関わってないからイマジネーションがわかない」。

安藤の呼びかけに応え、企業も知恵を絞りながら募金に協力している。 
ユニクロはシャツを1枚につき100円を寄付する仕組みをつくり、2億円以上集めた。無印良品や大阪のがんこ寿司も店舗に募金箱を置いて募金活動に協力している。東京都の石原慎太郎知事は、東京マラソンのひとり10万円のチャリティ枠の分を「育英資金に回す」と言っている。

安藤は発想したら自ら行動を起こす。そうそうたるメンバーや企業が「安藤さんが事務局をやるなら協力する」と言うのは、人や金を集める斬新なアイディアがあり、実行力があり、言ったことは必ず成し遂げてきたからだ。

阪神・淡路大震災の被災地に白い花木を植える活動しかり、東京湾のゴミの山を「海の森」に変える活動しかり、大阪・中之島から海まで続く桜の通り抜けをつくる活動しかり。発想し、行動し、形にし、その後も支え続けてきた。ちなみに「海の森」プロジェクトで、安藤は5年間で170回の国内外の講演をこなし、50万人から5億1000万円を集めた。そのエネルギーは半端ではない。

この育英資金も最後まで見届けるつもりである。集めた金をしっかり配ってくれ、上手に使ってほしいと各県の知事にお願いしている。地域の人たちが子どもたちの里親になるという新しい制度も提案している。「東北は、戦後の日本が失ってしまった自然と家族と地域がかろうじて残っている地域だ。東北の復興はそこに賭けなければいけない」と思うからだ。

「育英資金では子どもは育たない、子どもは人間の愛情で育つのです。子どもを育てるにはすごいエネルギーが要る。でも、地域で子どもたちをしっかり育てようという人たちがいたらその人たちの心にも希望が生まれるし、子どもたちの心にも希望が生まれる」と言い、コミュニティによる復興に期待している。

被災した子どもたちには「希望は誰かが与えてくれるものではない。自分の心の中でつくるものだ。自分の心のなかに希望をつくり、諦めずに生きてほしいと伝えたい」と語る。これは被災地の子どもたちだけではない。「すべての人が、人生の最後まで心のなかに自分で希望をつくり、育て上げていくトレーニングが必要なのだと思います」。

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該当講座

アカデミーヒルズ東日本大震災復興チャリティセミナー
安藤忠雄:日本復興を考える 
安藤忠雄 (建築家)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

3月11日の震災以降、「東日本大震災復興構想会議」の議長代理就任をはじめ、震災遺児を支える「桃・柿育英会 東日本大震災遺児育英資金」を立ち上げるなど、被災者支援に尽力されている建築家・安藤忠雄氏。本セミナーでは、安藤氏が思う“日本再生”のために必要なリーダーシップ、組織について、また各復興プロジェクトの現状について、お話いただきます。


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