記事・レポート

世界が見た日本「東日本大震災は日本をどう変えるか」

ジェラルド・カーティス教授が語る、日本の現在・過去・未来

ライブラリートーク政治・経済・国際
更新日 : 2011年06月21日 (火)

第4章 これで日本が変わらなければ、世界は日本を見放すかもしれない

ジェラルド・カーティス氏

ジェラルド・カーティス: アメリカと日本、それから世界と日本の関係についても少し話をします。最近、中国やチリ、インドネシア、ハイチなど、いろいろな所で震災があり、そのたびにアメリカは寄附などをしてきましたが、一般のアメリカ人は「遠い国の、自分たちとは関係ない人たちが困っている」という感じだったと思います。けれど今回、私はアメリカ人に感心しました。日本の震災に対して「友達がやられている」という気持ちを持った人がすごく多かったのです。日本は遠い国ではなくて、アメリカにとって非常に親近感のある国であり人たちだという気持ちが不思議なほどあったのです。

60年前、アメリカと日本は戦争をしました。この2つの国が60年間、草の根からエリートの交流までいろいろな形で関係を深めてきて、非常に親近感のある関係になったということが、今回よくわかったと思います。いい名前をつけたと思うのですが「トモダチ作戦」は、まさにそういう気持ちで米軍が自衛隊と一緒に東北で活動したのです。軍だけではなくボランティアもたくさん東北に行っていますし、アメリカの田舎のスーパーにも東北のための募金箱があったりします。今回、日本とアメリカはより近くなったと私は思います。

世界にとって、特にほかの先進国にとっては、日本の重要性が改めて認識されたと思います。最近はジャパン・パッシングといわれて中国に注目が集まっていましたが、やはり日本は大きな経済パワーを持っているんです。去年(2010年)円高になったとき、日本の財務省が介入して円高を止めようとしましたが、アメリカやヨーロッパは反対こそしなかったけれど、「やるならどうぞ」という感じで一緒に介入しなかったのであまり大きな影響はありませんでした。けれど今回の震災で円高になったときは、G7が共同介入を行いました。円が70円台まで上がって日本の経済がパンクしたら全世界が困るからです。今回の震災で、日本に対する意識がだいぶ変わったように思います。

日本では「日本に対する外国人の関心がだんだん薄れてきている」と思われていますが、それはちょっと違います。日本に対する関心は結構高いんです。私の大学でも、私の日本政治の講座や、経済学、文学などを受講する学生は今までで一番多いのです。ですので、日本に関心がないわけではありません。結構関心があったところにこの地震があって、より親近感を持ったと思います。しかし、きょうお話ししたような日本の政治の問題で、日本がこのチャンスを逃して従来通りで何も変わらないとなれば、「日本に関心を持っても仕方がない」ということになるだろうと思います。

例えば東北の復興のために投資したら、日本の民間企業でも外国企業でも投資減税をするなどのインセンティブを与えれば、喜んで投資する会社があると思います。そういうことをしないで「どの建築業者に、どのぐらいお金をやるか」という昔の族議員のようなことをやりたがっている政治家が今いっぱいいます。そうなると日本の衰退を止めることはできなくなるのではないでしょうか。

ただ、まだ結論を出すには早過ぎます。私が東北に行ってみたいのは、地方にはなかなか素晴らしい政治家がいるからです。今度会う宮城県の村井知事は変わった経歴の持ち主で、防衛大学の卒業生で自衛隊に12年ぐらいいて、県会議員を経て知事になったのですが、なかなかなものだという印象を受けます。ああいう人に権限を与えてやったほうが、いろいろ新しいことができて、新しいモデルがつくれると思います。

Clip to Evernote