記事・レポート

世界が見た日本「東日本大震災は日本をどう変えるか」

ジェラルド・カーティス教授が語る、日本の現在・過去・未来

ライブラリートーク政治・経済・国際
更新日 : 2011年06月16日 (木)

第1章 アメリカは日本社会の絆に感心し、貧困な政治に落胆した

今回の震災で、秩序の良さや絆の強さが世界から高く評価された日本。しかし同時に「こんなに素晴らしい国民が、なぜこんなにダメな政治を生むのか」と不思議がられていたそうです。世界の目に日本はどう映ったのか、日本はこれからどうすべきなのか…。知日派であり日本政治に詳しいジェラルド・カーティス教授が語ります。
スピーカー:ジェラルド・カーティス(コロンビア大学教授)

ジェラルド・カーティス氏

ジェラルド・カーティス: 私は地震が起きたときニューヨークにいて、テレビで映像を見たのですが、とても信じられない気持ちでした。日本から出て行く外国人が多かったのですが、私はとにかく早く日本に戻りたいという気持ちが強く、10日ほど前(4月中旬)に戻ってきました。ニューヨークでNHKが見られるので、毎日ほぼ24時間つけっ放しで見ていたのですが、ニューヨークで日本を見るのと、日本に戻ってきて直接いろいろな人の話を聞いたり見たりするのとでは、やはりだいぶ印象が違います。

きょうはアメリカ人がこれをどう受け止めているのか、日本がどう見られているのかという話と、私の専門である政治の話、菅政権とこれに対する野党の自民党が私にはどう見えているのか、そして日本とアメリカの関係について話をしたいと思います。

地震、津波、原発という、これまでの歴史にないこの事件に対する日本人の対応をアメリカがどう見たのかというと、主に2つの異なった印象がありました。一番印象が深かったのは日本社会の絆というか、日本人の素晴らしい価値観です。去年(2010年)大きな地震があったチリの新聞記者からは、「チリでは地震の後、暴動が起きて大変だった。なぜ日本はそうならないのか教えてほしい」と聞かれました。お互いに助け合う、辛抱強い、忍耐力がある、そういうことに外国人はとても感心していると思います。

日本ではこれまで「若者はダメだ」と言われてきましたが、もう言えませんよね。東北で頑張っている若い人たちは素晴らしいじゃないですか。ボランティアもたくさん行っているし、あの地域の子どもたちは言われなくても大人の手伝いをしたりしています。やはりそういうことが日本人のDNAにはあるということが、これでよくわかったと思います。

私自身がとても感心したのは、コミュニティに対する意識、共同体意識の強さです。私はゴールデンウィークに東北に行って、後日テレビ局で報告する予定ですが、その打ち合わせで「できれば一晩、被災者の皆さんと一緒に泊って取材したい」と言ったら、「いや、それはできない。嫌がられる」と言われました。どうして嫌がられるのかというと、避難所はプライバシーが全くないから同じ村の人たちはともかくとして、たとえ外国人じゃなくても外の人間に入ってこられると恥ずかしいと言うのです。やはり恥の文化なんですね。「なるほど、日本の田舎のコミュニティ意識はそれほど強いんだな」と思いました。

もう1つ印象深かったのは「なぜこんなに素晴らしい国が、こんなにリーダーシップのない、危機管理体制のなっていない、情報を速やかに出さない、貧困な政治を生むのだろう。不思議でしょうがない(笑)」ということです。原発問題がなければ日本のすごさに感心して、外国人も東北の復興のために貢献したいという気持ちになったと思うのですが、原発問題に対する政府の対応への不満、批判、不思議さが非常に強いのです。たぶん日本人の中にも「もうちょっとましな政治はできないのか」という気持ちの方が多いと思います。

ただ、海外の受け止め方で間違っていたこともあったと思います。海外のメディアには「東電と政府は同じだ」と見る向きがありましたが、私が一番許しがたいと思ったのは東京電力です。事件が起きたとき、会長は中国に、社長は名古屋にいました。この有事の際に誰が責任者か何も決まっておらず、会社に戻ろうとしたのですが、清水社長は渋滞にあって何時間も戻れなかったのです。原発を持っている会社がいざというときの対応策を持っていないというのは信じがたいことです。

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