記事・レポート

ブックオフの危機を救った社会貢献プロジェクト

Room to Readとの協業「BOOKS TO THE PEOPLE」

ライブラリーイベント
更新日 : 2011年05月17日 (火)

第6章 会社の自分探しの旅を終えて~これからもキャンペーンを続けたい~

ライブラリーネットワーキングイベント BOOK PARTY 会場の様子

佐藤弘志: 寄付金でRoom to Readさんがスリランカで建設した図書館3館と図書室18室を、2010年の3月に私とスタッフで現地に訪ねました。すごく歓迎されて、お母さん方が総出で料理をつくってくれました。これには、現地のガイドが驚いていました。彼にはそのもてなしが、いかに大変かわかるのだそうです。

しかし、私の挨拶を聴く保護者のまなざしは、真剣そのものでした。日本人がお金を出してくれて村に図書館ができた、ありがとうという感謝以上に、私たちの思いを問われているような気がしました。

感動したのは、現地のお父さん、お母さんが、無償で建材や労働力を提供していたことです。それぞれが得意なこと、自分の提供できるものを出して図書館をつくったのです。ある小学校では、国からお金が出ないので、先生方がお金を出して1台のパソコンを買ったということでした。きっと先生方も裕福というわけではないと思うんです。でも、子どもたちにきちんとした教育を受けさせるために、大人が身を削っているのです。だから真剣なんですね。「すごいことがここでは起きているんだな」と感じました。

それから、子どもたちが貸出しノートや読書ノートに一生懸命書いている姿にも感動しました。本で勉強したり、さらには自分でお話をつくったりと、工作を一所懸命凝らしていたのです。

「我々のミッションって何だろう?」「これからどうなっていけばいいのだろう?」と自問自答してきた3年間は、まさに会社の自分探しでした。もしもこれが「社長がオペラ好きだから楽団に寄付した」だったら、たぶん社内は「ふーん」で終わったと思うのですが、この取り組みによって会社を挙げて社会貢献できました。本当にありがたい機会になったと、今実感しています。

会場からの質問: 日本にも教育や子育ての問題はあると思うのですが、なぜRoom to Readを選んだのでしょうか。

佐藤弘志: これはまさに出会いとしか申し上げられないのです。我々は「この目的を達成するためには、どの団体の活動が最もいいか」という視点で網羅的に検討したわけではなかったからです。

ジョン・ウッドさんの本に出会ったとき、私は初め、ちょっと斜に構えていました。でも読んでみると、そこで語られていたジョン・ウッドさん自身の生き方もですが、いわゆる寄付金によるある不透明感が全くなく、「これはすごいぞ」と思ったんです。それがビジネスで四苦八苦して、どうやって合理的な意思決定をしていくかということに日々悩んでいる我々にフィットしたんです。だから「いや、国内にもあるはずだ」と考えることは全くなく、「これはもう、Room to Readさんとぜひやらせてもらおう」ということになったのです。

会場からの質問: キャンペーンは「毎年1カ月間限定」というお考えでしょうか。それとも通常も似たような活動はされていらっしゃるのでしょうか。

佐藤弘志: 8月のキャンペーンは、ブックオフのすべてのお店で、寄付を意識していないお客さまの買い取りであっても、すべてRoom to Readにつながっています。通年では「ボランティア宅本便」という仕組みがあります。これは、本を宅配便の着払いで送っていただくときに寄付先を指定していただくと、買い取り金額がその団体に寄付されるという仕組みです。ですので「寄付をしたい」という思いを持たれている方には、常に門戸は開かれています。すべての方に対するキャンペーンが8月ということで、メリハリをつけているのです。

実は、ブックオフの売上が一番上がるのは1月で、次が8月なんです。学校や会社がお休みの期間に本を読む方が多いんですね。この、お客さまの多い月に合わせてキャンペーンを行ない、店内のポスターや有線放送などを通じて「今、こういう取り組みをしています」とお伝えしています。

ぜひ皆さん、それぞれいろいろな形でRoom to Readさんの活動を支援していただければと思います。また我々も、「続けることに意味がある」と思っていますので、今後も継続して活動していきます。きょうはどうもありがとうございました。(終)

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