記事・レポート

福原義春氏が語る「未来をつくるイノベーションのための文化資本」

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

BIZセミナー文化教養
更新日 : 2011年02月24日 (木)

第9章 再び、誇りと自信のある国になるために

福原義春氏

福原義春: 日本文化は、いまや世界的価値になっていることは間違いないのです。私たちが気づいていない、たくさんの文化資産が眠っています。その一部は、気がつかないうちに私たちの生活習慣や伝統になっているのです。それを国際市場に転換しても、元のアイデンティティを損なうことなく、全体的に日本的なものが感じられる価値にすることができるかどうかが問題なのです。

私たちは日本独自であると同時に、世界に通用する絶対的価値や文化的価値となる、文化的なアイデンティティを見出さなければならないと思います。それには地域の価値を結合し、編集して、新しい価値を続けて生み出すことができるような方法を考えなければいけないのです。

きょうはいろいろなお話をいたしましたが、政治と経済、あるいは文化、世界と企業など、こういうテーマはそれぞれどのように結びついているのか、なかなか見えないところがあります。しかし、全部密接に絡んでいるのです。

文化というのは、国民一般に誇りと自信を与えるものです。ですから「この国に住んでいてよかった、この国をもっと高めていこう」となるのです。そうなれば、今、内向きにシュリンクしている社会が、外に出て行っても戦えるという自信を持つようになると思います。それが国力になっていくのです。

もはや政治や経済の動きに文化と人間が引っ張られ、そして沈没する時代ではありません。これからの日本を担われる皆さんには、「文化の上に政治・経済が成り立つ」「人間の上に政治・経済が成り立つ」ということを、もう一度意識していただきたいと思います。そして日本と同じように世界を考えながら、新しいステージの世界を創造するイノベーションに取り組んでいただきたいのです。私も皆さんとご一緒に考えて頑張っていかなければと思っております。(終)

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該当講座

第4回 未来をつくるイノベーションのための文化資本
福原義春 (株式会社資生堂 名誉会長)

福原義春(㈱資生堂 名誉会長)

未来の日本創造になくてはならないこと、イノベーションのために私達が一度立ち止まって考え抜かなくてはならない、私達の文化資本の本質についてお話いただきます。


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