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iPad登場後の出版社のデジタル戦略とは?

電子雑誌にいち早く対応した、コンデナスト社の真意と今後の展望

BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2010年11月19日 (金)

第4章 雑誌コンテンツのバラ売りは、吉と出るか凶と出るか

田端信太郎氏

神原弥奈子: 従来の雑誌は「ページあたりいくら」という形で広告営業されていますが、インターネットではCPA(顧客獲得単価)など効果測定の指標が明確になっています。広告営業の方法が大きく変わってくると思うのですが、その辺はどうお考えですか。

田端信太郎: そもそもiPad版での広告をどのように価値訴求して商品設計するかを、まさしく今、走らせながら考えている状況です。今はまだ、iPad版の広告スペースを、広告代理店の雑誌局が扱うのか、それともインタラクティブ系の部署が扱うのかも明確になっていないんです。どういう掲載レポートをどういう項目・形式で出すのかも決まっていません。それぐらい何も決まっていません。

要は、これまでの業界慣習と、サービスの最先端の現状とがすり合っていなくて、そこにいろいろな矛盾が見えてきた状況です。例えば、広告タレントとのCM契約が切れたからといって、デジタル雑誌に入っていたタレントが出ている広告を、アドサーバーからの配信をさりげなく止めていつの間にか見られないようにしたら、お金を払って広告もコンテンツだ! という意識で買ったユーザーからはクレームになるかもしれませんよね。そういった細かい実務的な問題点がいくつもあり、まだ解決策が見つかっていない状態です。

神原弥奈子: グーグルのブック・サーチなどに対して、書籍なら対応可能だけれど、雑誌の場合は難しいというのはそういう部分ですか。

田端信太郎: それもあると思います。その問題を別の角度から見るとこうなります。例えば、iTunesでは音楽の場合、アルバム単位だけでなく、1曲ずつバラ売りしていますよね。同じような意味で、雑誌も「3年前の雑誌のある特集だけを読みたいから、記事単位で売ってほしい」と思うのがユーザーさんとして自然だと思うんです。

ところが「雑誌社としてコンテンツをつまみ食いされてもいいのか」という考えが根強くて、今のところ「記事のバラ売りはすべきでない」というのが、一旦の方針ではあります。ただ、コンデナスト社はニュース系とは違い、ライフスタイルやファッション系が多く、特集記事の中身が陳腐化しにくいんです。記事ごとに検索エンジンに引っかかることはユーザーさんとの接触チャンスも広がり、ビジネスチャンス面では、実はチャンスが大きいのでは? と私は思っています。
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該当講座

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~

iPadにいち早く対応したコンデナストの真意と今後の展望

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~
田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

田端 信太郎(コンデネット・ジェーピー カントリーマネージャー)
iPadやAmazonのキンドルなど、デジタル化の波に出版業界を取り巻く環境が大きく変化しています。米国でのiPad発表と同時に、iPad対応の雑誌「wired」を発表し、一早く電子雑誌の世界に名乗り上げたコンデナスト社。今回は、そのコンデナスト社のデジタル戦略やiPadへの取組み、日米の出版業界のビジネスモデルの違いなど田端氏にお話頂きます。


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